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乳牛たちも大満足の、美味しい国産の飼料、稲発酵粗飼料の取り組みが始まっています。

乳牛たちも大満足の、美味しい国産の飼料、稲発酵粗飼料の取り組みが始まっています。

粗飼料を乳牛に与える取り組みが始まりました。千葉県旭市の稲作農家が栽培した稲を発酵させた飼料を乳牛に食べさせています。「牛が美味しそうに食べる」と評判の稲発酵粗飼料は、耕畜連携、循環型農業の鍵を握る新しい動きでもあるのです。

牛が大好きな稲藁の粗飼料

伊東さん
粗飼料の山

「稲の粗飼料は、牛の大好物のようですね。穂先を見つけると、我先に食いつきます。まず、残すことはありませんね」。千葉県は茂原市・桂牧場の伊東喜久夫さんは、こう言って目を細めます。ラップされた稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ。以下、WCS)が積み上げられたビニルハウスの中は、漬け物のような独特の匂いが漂います。どこか甘酸っぱく、牛の食欲が増すというのもうなずけます。
  伊東さんは生活クラブの牛乳を30年来生産している千葉県・外房の新生酪農クラブのメンバー。75歳を超えても常に新しいことにチャレンジする意欲的な酪農家です。今年度初めてWCSに取り組み、10月末から約3カ月かけて、全部で111個のWCSを乳牛に食べさせる計画だそうです。WCSの包み1個あたりの重量は250kgをゆうに超えます。伊東さんの牧場にいる約40頭の乳牛はこれを1日半で食べきってしまいます。 

田上さん

  新生酪農クラブ事務局長の田上征一さんは、「牛乳の品質にとって粗飼料は命。国産で、しかも地元の米が原料であるWCSは、品質や中身のことを考えると、乾草や、トウモロコシを発酵させたサイレージ粗飼料に比べてはるかにすぐれたエサなのです」と話します。牛はふだん、粗飼料のほかに乾牧草や配合飼料を組み合わせて食べます。伊東さんの牧場ではWCSと乾牧草を半々の割合で食べさせていますが、牛が喜んで食べることから、今後も積極的に取り組んでいきたいと意欲的です。

転作しにくい田んぼでもつくれて、農薬使用量も少ない

 伊東さんの牧場で使っているWCSは、同じく外房は千葉県旭市の稲作農家がつくったもの。旭市や国の助成が受けられるので、輸入の乾牧草よりも安く仕入れることができるとのことです。

乾草を食べる牛

「WCSは食用米の余剰生産を抑えつつ、飼料の自給率を上げていくうえで、大きな可能性を秘めています」。そう話すのは、旭市農水産課の柴田大輔さん。現在は合併して旭市となった旧干潟町は千葉県最大の穀倉地帯で、かつては「干潟八万石」と呼ばれる強湿田が多く、転作に向かない地域とされてきました。畑地への転作が難しいため、地域の特性を生かそうと2000年に町主導のもと、積極的にWCS事業を進めてきました。

粗飼料の稲穂

飼料米と言っても、品種は食用米と同じ「あきたこまち」「はえぬき」「ヒメノモチ」「ふさおとめ」「千葉28号」などです。これまでの栽培技術を応用でき、設備投資も不要というメリットがあります。収穫や発酵調整、運搬は作業を請け負う組織である農事組合法人八万石に依頼しています。WCSに使う部分は、稲わらが主。籾つきの稲穂も一緒にラッピングし、ラップ材で密閉して発酵させます。以前は乳酸を添加して発酵を促進していましたが、カビや雑菌の繁殖が著しく、これを抑えるために尿素を添加したことで雑菌による品質低下を防ぎ、保存状態や食味もぐっと良くなりました。

若梅さん

旭市のWCSへの取り組みはまだ始まったばかり。2006年には34.1ha分の飼料米が栽培されていますが(新生酪農クラブ分は1.8ha)、市内や近郊の畜産農家の希望量に対して供給率はまだ35.8%にすぎません。供給が追いついていないのが現状です。旭市では食用米の転作が目標に到達せず、飼料米に取り組む農家を増やすことが急務と考えています。
これに対し、生活クラブの米の生産者でもある農事組合法人八万石の代表・若梅繁由さんは、「WCSはまだ補助金頼みの側面が強い。農家が独立して取り組んでいくための課題は山積みです。WCSがこの地域で定着するには、米の生産農家や畜産農家、酪農家、作業請負組織が立場を超えて話し合い、地域ぐるみでまとまることが必要」と話します。

地域循環型農業のモデルケースに

 WCSを積極的に牛に食べさせることは、畜産飼料の自給率を上げることにもつながります。配合飼料のほぼ100%を輸入に頼り、粗飼料の自給率も非常に低いなかで、国産で、しかも地元でつくられるWCSは、輸送コストの面からも畜産農家に歓迎されています。空中防除は行わないなど使用農薬量が少なく、安全性も高いのです。

干潟八万石風景

さらに、循環型農業のモデルケースとしても、この取り組みは全国的に注目を集めています。WCSを食べた牛の排泄物でつくった良質な堆肥を水田に入れることで、減農薬・減化学肥料の米づくりができます。生活クラブの目指している地域循環型農業と、国産飼料の自給率アップにつながるわけです。
  「肉の味が美味しくなった」「乳牛の食いつきがとてもよい」といった声が畜産農家や酪農家から集まり始めています。今も美味しいと評判の生活クラブの牛乳が、WCSでますます安全で、もっと美味しくなる可能性があるのです。今後が楽しみですね。