生活クラブ活動情報

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世界に学び、これからの協同組合のありかたを考える「協同組合の旅」

協同組合の旅

 生活クラブで「協同組合の旅」という活動が行われていることをご存じですか? 世界各国の生協や協同組合と交流し、世界の協同組合を学びながら生活クラブの活動も発信しようという目的で、2001年から実施されているスタディツアーです。この旅の報告と、これまでの研究成果をまとめた「2006年度版国際協同組合研究年次報告書」ができあがりました。

この「協同組合の旅」を軸とした国際協同組合研究は、生活クラブのシンクタンクである市民セクター政策機構が中心となり、組合員とともに行っている研究活動です。この度完成した報告書は、2006年度の「第4回協同組合の旅」(北欧)の報告を中心に、これまでの3回の「協同組合の旅」のまとめ、そして本邦初となるフィンランドの協同組合法の全訳と関連の研究論文翻訳で構成されています。「協同組合の旅」では、2001年にスペイン・フランス・イタリア、2002年にカナダ、2004年に再びフランス・イタリアを訪れ、各国の生協や協同組合の状況を視察、交流を重ねてきました。今回の北欧の旅で得られたものは何だったのでしょうか? 参加組合員の方々にお話を聞きました。

フィンランドでは3人集まれば協同組合がつくれる

鈴木優子さん(左)と大河原雅子さん(右)06年度「協同組合の旅」にて

「北欧の協同組合は、日本と違ってすごく気軽な形で存在しているんです。何しろ、3人集まれば協同組合をつくることができて、行政の支援もしっかりある。日本では、自治体にもよりますけど、1万人くらい集まらないと協同組合はつくれないでしょう? 手続きもものすごく大変です」と語るのは、生活クラブ神奈川の理事長でもある鈴木優子さん。しかも、「北欧ではダンスパーティをするための協同組合、なんていうのもあるんです。働くことだけでなく、楽しむための協同組合があるの」というから驚きます。日本ではそんな集まりはサークルですが、北欧では「協同組合」になれるのだそうです。
今回訪れたフィンランド、スウェーデンは世界でも協同組合の加入率がとくに高い、いわば協同組合先進国。そのなかで、フィンランド最大の生協であるSOK(Suomen Osuuskauppojen Keskuskunta)の本部や、精神障害者のケアを行っている協同組合、ヘルシンキ大学の協同組合学研究所、スウェーデン・イエムトランド県で保育園を運営している父母協同組合、障害者の日常生活を支援しているロフォタ労働者協同組合などを視察してきました。訪問先のラインナップを見てもわかるように、北欧では福祉の場も協同組合によって運営されていることが多いのです。
フィンランドもスウェーデンも福祉国家とはいえ、高齢化は容赦なく進み、最近ではEU統合の経済影響などで失業率も上がっているといいます。しかし、市民は行政や企業に依存するのではなく、自ら協同組合をつくり、施設や学校まで運営している。それが福祉の質の維持にもつながっているのです。このような例は日本にはないのではないでしょうか?

ワーカーズコレクティブは、協同組合の新しい形

06年度「協同組合の旅」荻原妙子さん(左)と宮野洋子さん(右)06年度「協同組合の旅」にて

 「日本にもありますよ」と答えてくれたのは宮野洋子さん。ワーカーズコレクティブ千葉県連合会会長として北欧のツアーに参加してきました。「ワーカーズコレクティブは、自分たちで組織をつくって、レストランを経営したり、介護サービスを提供したり、いろいろな事業をしています。非営利で、地域のために。その意味ではまさに協同組合なんです」。1982年に初めて生活クラブのデポーができたとき、その運営をするために組合員が結成したのがワーカーズコレクティブ。今でこそ全国で582団体(2005年集計)を数え、生活クラブ内だけにとどまらない発展を見せるようになっていますが、当初は生活クラブで知り合った仲間同士が起業することが多かったのです。
  事業内容は店舗経営や食関係、福祉(家事援助、介護、保育等)、編集企画、マンション管理、石鹸工場など多岐にわたり、とくに福祉関係の事業は全体の約52%を占めています。北欧と同じように、自分たちが必要なものを(働く場所も含めて)自分たちで出資してつくり、運営、参加しますが、「北欧と違って、日本にはワーカーズコレクティブに関する法律がないんです。行政の支援もないし、補助金もない。だから経営はすごく大変」(宮野さん)。「北欧は国の制度が簡便で、市民に対して開かれているのです。日本でも制度が整えばもっと多くの事業が起こされると思いますよ」とは、生活者ネットワークの代表としてツアーに参加した大河原雅子さんの弁です。
  北欧では、村に1軒しかないスーパーがつぶれたとき、その店を地元の人たちが買い取って協同組合形式で運営するというケースや、スウェーデンの父母協同組合のように、保育園のない地域に自分たちで保育園をつくってしまうケースがありました。もちろん、行政が全面的に支援をしてくれるわけですが、日本でもワーカーズコレクティブは同じように、地域に必要なものを自力でつくるという活動をしているのです。
  生協といえば共同購入というイメージが強い日本ですが、消費材を購入する、それを通して食の安全や環境を守るというところにとどまらず、託児や介護など、生活のあらゆるニーズに生協=協同組合が応えていく。「ワーカーズコレクティブはまさに協同組合の新しい形態なんです」と市民セクター政策機構の米倉克良専務。そのような進化した協同組合が、今、世界じゅうで生まれ、発展しているのだそうです。

生活の不安を解決するためのツール

 日本では最近NPOが増えています。非営利目的である点ではNPOも協同組合と同じなのですが、協同組合が「出資」で成り立っているのに対し、NPOは「寄付」で成り立っている。「日本では『働く』イコール儲ける、または奉仕しかないのです。けれども、そうでない、もっとゆたかな働き方があって、地域や社会に貢献することができる。そのことが今回の北欧の旅では確認できたと思います」(市民セクター政策機構・澤口隆志理事長)。
「今、年金や老後のこと、生活に対する不安は誰しもあると思いますが、行政や企業が解決してくれるのをただ待つのではなく、自分たちで解決しようと思うことが大切で、協同組合はそのためのツールになれる。今回の旅で私たちはみんな、『自分たちのやっていることは間違っていなかった』と実感できて、自信がついたんですよ」と生活クラブ神奈川副理事長の荻原妙子さんが締めくくってくれました。

(「2006年度版国際協同組合研究年次報告書」の購入希望は、市民セクター政策機構(tel.03-3325-7861,fax.03-3325-7955)までお問合せ下さい)