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「生き物環境調査」に大ぜいの組合員、子どもたちが参加(生活クラブ東京)

「生活クラブ東京・生き物環境調査」(長野県飯島町)に大ぜいの組合員、子どもたちが参加

  中央アルプスと南アルプスの山脈に挟まれた伊那谷の町、飯島。ここでつくられた米や野菜は共同購入を通じて私たちの食卓にのぼっています。生活クラブ東京では、生き物が多様に生息できる生産環境を維持していくために都市の消費者も生産者といっしょに観測し考えていこうと、2002年から飯島町といっしょに「生き物環境調査」を行ってきました。毎夏、多くの組合員が子ども連れで参加しています。今年も7月29~30日、東京からの参加者が飯島体験を大いに楽しんできました。

子どもたちと地元生産者が大活躍

さあ、何が入っているかな?

 田んぼの脇を流れる小さな川に、靴をはいたままザブザブと入っていく地元農家の人たち。手にした網を水に入れてさっとすくうと、網の中にはカジカ、クチボソ、ドジョウ、そしてヤツメウナギ。固唾を呑んで見守っていた子どもたちから、わあっと歓声が上がります。畦道の上では虫網がひらりと空を切り、トンボが捕まりました。
  町ぐるみで減農薬・減化学肥料農法に取り組んでいる飯島町。ここで行われる「生き物環境調査」には、2002年の第1回目から毎夏、生活クラブ東京の組合員が親子バスツアーを組んで参加しています。リピーターの多いこのツアー、今年は7月29~30日に実施されました。生活クラブから大人22名と子ども12名、地元からは農作業の合間をぬって23名の生産者が参加。JAや町の職員も加わり、調査以外にも収穫体験、そば打ち体験、バーベキューなど、東京からの参加者を歓待してくれました。

今日の結果を報告しま~す

飯島町に到着するとさっそく組合員たちは8つのグループに分かれ、地元の参加者と一緒に観測地点に向かいました。見つけた生物は、捕まえたり写真を撮ったりしながら記録。調査が終わると、宿泊先であり調査拠点である「アグリネーチャーいいじま」に戻って報告会を行います。報告会では、毎年のようにツアーに参加しているという虫好きのK君(9歳)が専門家顔負けの詳しい報告をし、一同をびっくりさせる場面もありました。
  生き物環境調査では、その土地にどんな生物が生息しているか定点観測をし、データを蓄積していきます。生き物の生息状況は環境に影響されるため、その土地の自然の豊かさを把握するめやすになるのです。また、生産者と消費者が一緒に調査を行うことで、相互理解が深まるというメリットも生まれます。飯島町では田んぼや畑、その周辺の樹林地や水辺など、町内15か所の地点で、住民、生活クラブ組合員、専門家が調査を行っています。この調査結果をもとに農法の検討をしたり、町民の行動指針を決めるなど、先進的な取り組みがされています。
  「減農薬・減化学肥料農法の効果が出てきているのか、飯島にはレッドデータブックに載っているような生物も戻ってきています。田んぼに生えるウリカワやサワトウガラシ、それにトンボの仲間やミヤマシジミなどですね。私たち研究員は、調査を始めてまだ3年。本格的な活動はこれからです」と語るのは「フィールドミュージアムいいじま」の中村千賀室長です。飯島町の研究機関である「フィールドミュージアムいいじま」では、専門研究員たちが動植物の調査、保全、復元を行い、飯島町の「自然共生農場づくり」を支える研究をしています。    

安全な食べ物をつくることが、環境を守ることにつながる

  飯島では、町をあげて「1,000ha自然共生農場づくり」プロジェクトを推進しており、環境保全と農産物の生産を一体的に考え、町の全農地1,086ヘクタールにおいて“自然と共存する農業”の実現を目指しています。このため、農薬や化学肥料を減らし、ボカシ(堆肥を発酵させた有機肥料)を使うことで土の力を取り戻す「自然共生栽培」に多くの農家が取り組んでいます。
  「自然共生栽培は、根の張り方が違いますね。ナスなんか、簡単に抜けないくらい根がしっかり張る。病気や虫にも強いです。土をしっかりつくるから作物も丈夫になるんだね。土が健康でないと作物も弱くて、消毒したり化学肥料をやったりしないと育たない。私も自然共生栽培を始めて3年ですが、本当にいいと実感しています」(飯島町の生産者・小林さん)
  こういった環境保全型農業を行っている農家は現在、町の約58%にのぼり、なお増え続けています。専業農家率も高いのですが、高齢化や後継者不足はやはり深刻。その対策として、飯島では全農家参加の営農センターという組織をつくり、農地の利用調整を行ったり、大型機械の共有によるコストダウンを図ったりもしています。
  自然共生栽培で農業と環境保全の両立を目指し、生き物環境調査で消費者との交流を行いながら農村の活性化と生き残りを図るのが飯島方式。「アグリネーチャーいいじま」の設立メンバーで、「フィールドミュージアムいいじま」館長でもある日本獣医生命科学大学教授の松木洋一さんは、「今後はアグリネーチャーいいじまを拠点に、エコ・ツーリズム、グリーンツーリズムにも力を入れていきます」と話しています。
  生活クラブ東京の奥田雅子副理事長によると、「このツアーは小さいお子さんの参加も多く、皆さん、毎年とても楽しんでいます。東京でも2004年から町田や世田谷、国分寺で生き物環境調査を始めていて、今年は指標種となる生き物50種を選定し、ガイドブックをつくったんですよ」。飯島町の大規模な調査とは手法が少し異なるものの、東京でも組合員によって生き物環境調査が行われ、データが蓄積されつつあります。なにより、参加した大人や子どもたちの間には、「農地・農業は、農作物の生産以外にも、多くのことを守り・育み・作り出している」という発見が広がり、都会に住む自分たちの環境を見つめなおす貴重な体験になっているようです。

山から見た飯島町