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頼りにされる組合員の「労働力」

頼りにされる組合員の「労働力」

 完熟トマトを生のまま搾り、食塩を加えただけの生活クラブのトマトジュース。シンプルなおいしさが根強い人気です。トマトジュースの原料である加工用トマトは、実は組合員が苗を植え、収穫したもの。今年は神奈川、東京、千葉、埼玉、長野から86名の組合員が、生産者であるJA長野北部トマト部会の飯綱高原(長野県)を訪れ、合わせて61.3トンものトマトを収穫しました。

加工用トマト収穫の様子

長梅雨の影響で今年の作柄は厳しく

 「今年は全然ダメだなあ。いつもの年の半分くらいしかとれないんじゃないかな。7月の低温と長雨で、疫病にやられてしまったから」。毎年明るい笑顔でおおぜいの組合員を受け入れてくれるトマト部会長の杉山昭和さんに、今年はいつもの元気がありません。
  畑にはたくさんのトマトが生っているものの、まだまだ青い実が多く、赤く熟したものにも玉割れやヒビが目立ちます。例年ならば神奈川の組合員が収穫の手伝いに来る8月10~12日頃は、それこそ畑一面に真っ赤なトマトがごろごろ転がり、人手がいくらあっても足りないほど。ジュースの加工工場である長野興農の佐藤幹さんは、「ジュースの原料になるトマトが足りなくて、機械が回せないのです。機械がフル稼働すれば1日200トンのトマトを処理できるのに、今朝は10トンしか届いていない」と心配そうな表情です。
  今年7月16日に起こった新潟中越沖地震では、ここ飯綱町でも震度6強を計測し、生産者や畑の被害が心配されました。トマト部会の生産者には幸い、地震による被害はありませんでしたが、ほっと胸をなで下ろしたのもつかの間、長雨と低温、日照不足が重なり、肝心のトマトが大打撃を受けてしまったのです。「ほかのことならば努力次第で何とかできるけれども、お天道さんだけはどうにもできないなあ」と、杉山さんはつぶやきました。

トマトをつくり続けられるのは、組合員の助けがあってこそ

 そんな厳しい状況のなか、8月10~12日には神奈川から35名、16~18日には東京、千葉、埼玉の首都圏3単協から41名、23日には長野の組合員10名が訪れ、炎天下のなか収穫を手伝いました。今年は特に男性が多く、神奈川は11名、首都圏3単協からは12名が参加しました。
  「トマトジュースが大好きで、箱で何度も買っています。職場でかくあぶら汗とは違う、いい汗をかきたくて来た」と話すのは横浜北の木場一武さん・節子さん夫妻。同じく横浜北の荒屋剛志さんは、「一日2本はトマトジュースを飲むほどのファンです。作業を進めるうちに、ヘタをとるのがだんだん上手になってきました」と満面の笑みを浮かべながら20kgのコンテナを軽々と運びます。
  生活クラブのトマトジュースの主産地である飯綱町でも農家の高齢化が進み、深刻な後継者不足の問題を抱えています。加工用トマトは収穫の時季が真夏のもっとも暑い盛りで、しかも地を這うように実る特性から腰をかがめて収穫しなければならず、想像を超える重労働。トマト部会では何度か機械収穫を試みたものの思ったほどの成果が上がらず、結局は手でもぎとるしかありません。「暑いし、腰は痛くなるし、トマトの収穫は農家のワシらですら辛い作業。みなさんの手助けがなければ、トマトをつくる量を減らすか、やめるかしかない」とは、三井袈裟義さん。いかに組合員の労働力が頼りにされているかがわかります。
  生活クラブの組合員が産地に出向いて収穫を手伝う「計画的労働参加」が始まって、今年で13年目。単なる体験農業とは違い、組合員の労働に対して一定の対価が支払われるため、仕事の質には生産者もシビアです。「ただの援農や交流会だったらここまで続かなかったと思います。組合員のみなさんと話し合いを重ねて、お互いに働きやすい環境をつくりあげたからこそ、今がある」と、前トマト部会長の相沢明典さんは振り返ります。
  18歳未満の参加は不可、作業時間中は写真撮影やおしゃべりを自粛するなど、組合員には節度ある参加態度を求める一方、生産者は適切な休憩や水分補給を呼びかけるなど組合員の健康管理に目を配り、事故のないように気をつけています。生活クラブ連合会開発管理課の石井明は「生産者がいちばん必要としているのは、お金ではなく特定の時期に集中する農作業を担ってくれる労働力。決まった時期に一定の人手が確保できることで、産地がトマトをつくり続けられるしくみができているのです」と話します。5月に行われる苗の植え付けと、8月の収穫にかかる費用は、トマトジュースの原価に含まれます。1缶あたり約1円弱。生産者が今後も加工用トマトをつくり続けるために必要な労働対価を、組合員がジュースを飲むことで支えているのです。

「産地で見たこと、感じたことを仲間に伝えてほしい」

  今年は合計86名の組合員が収穫に参加し、合計61.3トンのトマトをもぎ取りました。昨年の65.9トンに比べると91.3%の収穫量で、天候不良や疫病の影響は否めません。「トマトがこんなに天候に左右される作物だなんて、知りませんでした。こんなに生産者の方が苦労してトマトをつくっているのだから、私たちは食べることで応援しなくちゃね」と、川崎から来た橋元斗志子さん。
  相沢さん(前トマト部会長)の「トマトがどんなふうに生っているのか、収穫がどれほどたいへんか、自分の家に帰ったら長野での体験を家族や仲間に伝えてほしい」という願い通り、収穫に参加した組合員たちはそれぞれに熱い思いをもってトマトジュースを仲間に薦めているようです。横浜北の井上房子さんは、「濃縮還元のジュースとは違うフレッシュなおいしさを伝えたい」と、さっそく近所の友人に配る分のジュースを注文したそうです。鎌倉に住む戸早広子さんは、班の仕分けの際、「あなたが収穫したトマトならばジュースを飲んでみようかな」という声が返ってきた、と言います。「トマトが地べたに生っていることを話したら、みんなとても意外そうな表情をしていました。私たちの体験談がトマトジュースを買うきっかけになればいいのですが」とも。
  組合員と生産者がいっしょにつくったトマトジュース。ほかでは味わえない旬のおいしさを、ぜひ一度味わってみませんか。その一箱が、生産者が来年もトマトをつくる原動力になるのです。

加工用トマト収穫の様子