生活クラブ活動情報

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日本短角牛─粗飼料と放牧中心で、自給率アップに貢献

生活クラブは「日本短角牛」の実験取組みをしています!

 生活クラブ連合会が北海道・えりも町の生産農家と提携して「日本短角牛」の実験取組みをスタートしたのは2007年。2008年度からは「日本短角事業」として共同購入(取組み単協は北海道、埼玉)を進めています。この試みの背景には輸入された外国のトウモロコシや大豆かすに依存せざるをえない日本の畜産の現状を少しでも改善し、わずか数%しかない飼料の自給率を高めようとする狙いがあります。というのも「日本短角牛」は放牧に適し、エサも輸入穀物主体の配合飼料に依存せず、粗飼料(牧草や干草など)で肥育できる牛だからです。(2008年10月24日掲載)  

牧草中心の飼育法

風力発電機

北海道の厳しい寒さに強く、放牧に適し、エサも牧草中心で育つ「日本短角牛」。生産農家の高橋祐之さんは「トウモロコシなどの飼料穀物の価格が一年で3倍以上になり、『メタボリックシンドローム』という言葉が話題になるなか、日本短角牛の評価が高まってきていることは感じていました。そんなとき、生活クラブから共同購入の提案をいただいて。とても嬉しくなりましたね」。
  高橋さんの牧場があるのは森進一のヒット曲で知られた「えりも岬」のすぐ近く。眼前には真っ青な太平洋が広がり、周囲を背の低い木々の森が取り巻いています。ときおり吹く風は強く、衣服を激しく揺さぶります。なるほど、岬に近い丘陵地には巨大なプロペラを回転させる風力発電機が設置されているわけです。
  「こーい、こい、こい、こーい」
  高橋さんが海に向かって叫びます。すると、やや傾斜の強い丘陵地帯を何十頭もの茶色い牛たちが、のんびりと上ってくるではありませんか。
  「もちろん、トウモロコシや大豆かすなどの配合飼料も与えていますよ。この牛たちの持ち味である赤身の肉を市場が高く評価してくれるなら牧草だけで十分なんですが、牛肉といえば霜降り信仰・サシ絶対の世界です。肉質の改良に努めないと商品価値がないと判断され、買い叩かれてしまいますからねぇ」
  高橋さんの言葉通り、日本短角牛の子牛は牧草と干草(粗飼料)を主食に育ちます。これらの草の消化を高めるのが子牛の胃袋のなかにいる微生物たち。その働きが子牛の内臓を丈夫にし、病気に強い体をつくってくれます。だから、日本短角牛は和牛よりも一回り大きな体を持ち、平均7回~8回ものお産にも耐えることができるのです。人間もそうですが、運動して鍛えた丈夫な身体は赤身(タンパク)が多く、白身(脂質)が少なくなりますが、霜降りは“メタボ”。とりにくい脂身なのに牛肉の場合はこれが高い市場価値を持つというわけです。

組合員アンケートでも「96%」がGood!

高橋さんと日本短角牛

「こいつらわねぇ、性格もやさしくて手もかかんない牛なんですよ。毎年5月から12月までは放牧で、子牛も生まれてから7ヵ月は母牛といっしょに放牧で大きくなります。最初の2ヵ月は母乳で、残りは粗飼料で育ってくれる。何といっても母乳と放牧がカギでしょうね。親もストレスフリー、子牛も自然のエサで育ちますから、これが健康に育たないはずがない」(高橋さん)  
とはいえ、日本短角牛も肉質のさらなる改良のため、生後19ヵ月から27ヵ月の期間は牛舎で《中身のたしかな飼料》を与えられて育ちます。高橋さんも生活クラブの自主基準に沿い、遺伝子組み換えではない(NON‐GM)トウモロコシと大豆かすの配合飼料を与えています。  
  「こうして育てた日本短角牛の肉は低カロリーで高タンパクな食材。あの特有のしつこさというか、いささかアクが強い牛脂の味がしないのが特長なんです。その点は生活クラブ(北海道・埼玉)での評価も上々。実際に利用した人を対照にしたアンケートでも『旨みを感じない』と答えた人はわずか4%で、『脂身がおいしい』とした人が55%もいらしたと聞きました。とても元気が出る数字をいただき感謝しています」

「食」と「種」と「飼料」の自給を追求

日本短角牛の親子

えりも町の30ha(東京ドームのグラウンド30面分)の牧場で日本短角牛を肥育する高橋さんは昆布漁師でもあります。53年前、えりもの山の木々は枯れはて、襟裳には「砂漠」と称された光景が広がっていました。海に流入した土砂は日光をさえぎり、昆布の成育にも大きな影響が出ました。山の木々を切ったのは漁師たち、冬場のニシン漁で暖をとるための薪に使わざるを得なかったのです。こうした海の危機を打ち破るため、漁師は仲間と力を合わせ、山に木を植え、羊や牛を飼うための牧草を育てる活動と地道に取り組みました。それが高橋さんの父親たちの世代です。  
  「親父が牧草を植え、日本短角牛を南部から連れてきたんです。それを私が継承し、いまも種の保存に力を入れているということになりますかね。これからも生活クラブの皆さんと力を合わせ、飼料の自給を目指した『種』の保存に努めていきたいと思います」  生活クラブ連合会では、日本短角牛の2009年度からの取組み単協拡大に向けて、現在、検討を進めています。生活クラブの牛肉は、(1)乳牛のオスを肥育したホルスタイン種 (2)粗飼料と放牧で育てられるアンガス種と日本短角牛で構成されています。今後はホルスタイン同様、牛乳を搾るための役割を終えた牛をムダにしないことを目的に「ブラウンスイス種」の導入も検討され、試験肥育がスタートしています。  
  いずれも《わかって食べる》を原則に、飼育法や飼料の中身まで徹底的に検証された牛の肉であり、生産農家が“丸わかり”の牛肉であることはいうまでもありません。これからも生活クラブは生産者の経営状況に可能な限り配慮した「生産原価保障」の共同購入で、これらの牛肉におおぜいの組合員の利用を集め、「食」と「種」と「飼料」の自給を追求していきます。

 「日本短角牛」はイギリスのショートホーン・デイリー・ショートホーンという品種と、日本の在来種の「南部牛」を交配させて開発した肉用種です。南部とはかつて青森、秋田、岩手にまたがる地域を治めた南部氏の領地を意味します。昔からこの地域で農耕のための労働力として愛用されてきた南部牛は自生する草や牧草を食べて育ち、牛舎に入れてやる必要がない牛、つまり《放牧》に適した品種として知られています。その肉は赤身が中心で適度な脂質を有し、「深い味わいとあっさりした脂」の牛肉として人気が高まってきています。