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生産者と組合員で消費材のレベルアップを目指す「おおぜいの自主監査」

生産者と組合員で消費材のレベルアップを目指す「おおぜいの自主監査」

 「『安全・健康・環境』生活クラブ原則」に基づき、1997年から始まった「自主管理監査制度」。消費材のレベルアップを目指す、生産者と組合員による当事者認証の仕組みとして定着してきました。その中心になるのが、組合員が事前学習などを通して生産現場を直接確認する「おおぜいの自主監査」です。10月16日には、北海道・東しゃこたん漁協の「古平パック」で実施され(連合会・自主監査委員会主催)、翌17日には、北海道の他の提携生産者も交えて「古平パックおおぜいの自主監査報告会」がありました。(2008年11月21日掲載)  

「納得のいく、より良い消費材をつくる」

鮮魚で加工されるほっけ

東しゃこたん漁業協同組合(以下・漁協)は4年前、旧古平と美国と積丹の3漁協が合併して誕生しました。「古平パック」は旧古平漁協との提携消費材で、その歴史は30年近くになります。  
  監査は、漁協から鎌田淳史専務理事以下4人、生活クラブ連合会からは自主監査委員会の4人と事務局1人、さらに生活クラブ北海道からも3人が参加して行われました。また、「当該生産者以外の提携生産者にも、自主管理監査制度の理解を深めてもらうために」(連合会事務局)、北海道の提携生産者約20人が監査の実際を視察しました。  
  監査に入る前に意見交換があり、組合員の一人はその目的を端的にこう言い表しました。
  「おおぜいの自主監査は生活クラブに特徴的なもので、生産者が報告した内容がその通りになっているかを確認するものです。この制度のおかげで納得のいく、そしてより良い消費材をつくることができます」  
  一方、初めて監査をむかえる漁協の鎌田専務理事は、こう挨拶しました。  
  「最近、食品の安全、安心を巡って様々な問題が起きていますが、品質管理がこれほど言われていることはありません。その中で、品質管理を生産者と消費者が協同して実施するという話は、私の長年の経験でも聞いたことはなく、すごい仕組みだと思います。漁協の加工施設は近代化され、衛生管理レベルも高いと思っており、監査結果に期待しています」

監査項目は「新規就業者の育成」など17項目

ほっけの加工

加工施設に入室するためには、衛生管理に支障をきたさないように帽子、白衣の着用と長靴で、従事者と同じ服装になります。また、施設内に髪の毛が落ちないようにエアシャワー、白衣のローラー掛け、そして両手の洗浄、消毒などを済ませなければなりません。当然、ここも監査の対象になります。  
  その後に、「古平パック」の製造工程に沿っての確認です。この日はほっけの加工が行われていました。その工程は次のようになります。(1)原料搬入 (2)目視検査(鮮度など) (3)洗浄(流水) (4)ドレス処理・選別(頭、内臓、ウロコ除去など) (5)1次洗浄(流水) (6)2次洗浄(流水) (7)水切り (8)検品・凍結(-45℃)…、さらに三つの工程を経て保管されます。  
  (2) の目視検査から⑦の水切りまでにかかる時間はおよそ1時間。組合員はその一つひとつで、「冷凍の宗八かれいを解凍する際の温度と時間は」、「凍結に要する時間は」など、突っ込んだ質問を担当者にぶつけていました。  
  加工工程の確認後は2時間ほどの質疑応答です。その内容は多岐にわたりました。宗八かれいの解凍については「『古平パック』に入っているすべての魚種が冷凍を基本としていると考えた方がいいのでしょうか」という質問が出ました。漁協の説明は「宗八かれいは水揚げが集中する時期には冷凍します。それを利用することもありますが、他の魚種は鮮魚で搬入、加工処理されます」というものでした。  
  この他、水産資源の保全についての実際や、長靴の洗浄などに使われている「液体石けん」(エスケー石鹸製)の使用方法、包材に無添加フィルムを使っていない理由などについて質疑応答がありました。その中で、少し長めの時間を要したのは後継者問題でした。

担当者に熱心に質問する組合員

「おおぜいの自主監査」は生産現場を確認する前に、事前学習会などを通して監査項目を決めます。その中で漁協は、自主基準の<漁業の担い手育成や、新規就業者対策に取り組んでいる>という項目に「×」を記していたことが分かり、今回の監査17項目の重点項目に「新規就業者(後継者)の育成」が入っていたからです。  
  この点について実際は記載ミスだったことが明らかになりましたが、漁協の担当者は、「漁協の組合員の平均年齢は62歳。現在363人いますが、毎年、10人ずつ減ってきています」と説明。これを受けて鎌田専務理事は「後継者不足は否めません。そのためにも魅力ある漁協にし、後継者が育つための環境づくりが必要なことは言うまでもありません」と締めくくりました。

「気になった後継者問題と資源」

監査項目をチェックする組合員

  現場での監査時にまとめられるのが「現地監査確認書」です。「監査報告書」は後日作成しますが、<工場内は明るく、清潔に保ち作業していること

を確認しました>、<後継者の育成については、一定の努力をしているという説明がありました>などの確認事項と、<容器の消毒には、新たに開発された遺伝子組み換え対策済みのエスケー石鹸のアルコール製剤の使用を検討してもらいたい>など3項目の意見が盛り込まれました。  
  翌日の「古平パックおおぜいの自主監査報告会」では、連合会事務局から「自主管理監査制度」の理念と仕組みについて説明があり、担当者は、「生産者と消費者の間に必要なことは顔の見える関係です。生活クラブはそれを基本に安全と安心を追求してきました。その中心が自主管理監査制度です。ただ、監査は重箱の隅をつつくものではなく、目的は消費材のレベルアップを図ることにあります」と強調しました。  
  監査に参加した組合員からは、こんな感想が聞かれました。  
  「おおぜいの自主監査は、生産者と一緒により良いものをつくっていくことを実感できます。今回の監査で気になったことは後継者問題と資源のこと。漁協も本腰を入れて考えないといけないと感じたと同時に、私たちも利用を高めることを考えなければいけない」?
  「生活クラブの力は微々たるものかもしれませんが、気づいて取り組んだこと、たとえば飼料用米の必要性が世論になってきたということがあります。漁業についても、これだけは守りたいということを発信していくことが、何かを変える元になると思う」  
  これらについて鎌田専務は、「食べる人、作る人が一緒になって食品のレベルアップを図っていくことは今後、ますます重要になってくる」と話すとともに、最後に「水産物には“生産者魚価”というものがありません。大きなハードルかとは思いますが、生活クラブの力でそれが実現できないものでしょうか」と述べました。

「古平パックの自主監査」に参加した自主監査委員と、東しゃこたん漁連の皆さん