生活クラブ活動情報

 活動情報一覧へ

牛で飼料用米の給餌実験がスタート!生活クラブのお店「デポー」で供給

牛で飼料用米の給餌実験がスタート!生活クラブのお店「デポー」で供給

 生活クラブは、共同購入で北海道チクレンの牛肉に取組む他、デポーでは栃木県開拓農業協同組合(以下・栃木県開拓農協)で肥育している「栃木開拓牛」と「ほうきね牛」に取組んでいます。栃木県は本州一の酪農地帯。牛乳だけでなく、乳牛から生まれた子牛を地域内で肥育し、それを食肉としてデポーに供給する仕組みは「地域内乳肉複合生産体系」と呼ばれています。この「栃木開拓牛」と「ほうきね牛」で今年に入り、出荷直前の3ヶ月間、飼料用米を与える実験が始まりました。(2009年5月15日掲載) 

栃木県産の飼料用米を給餌

粉砕飼料用米

 「こめ育ち豚」ならぬ「こめ育ち牛」。実験の目的は、飼料自給率の向上の模索と、肉質、食味、特に脂肪の旨みの目安となる脂肪酸組成への影響、さらに生産費の比較と餌として牛が受け入れるかという嗜好性を検証することです。  
  実験給餌は3回に分けられ、第1回は2月から4月、第2回は4月から6月、第3回は6月から8月にかけて行われます。それぞれ「栃木開拓牛」が20頭、「ほうきね牛」が10頭、3回で合計90頭に与えられます。第1回の実験牛は4月から5月にかけて出荷され、6月から7月にかけてが第2回、8月から9月にかけてが第3回の出荷予定になっています。  
  牛の餌は従来、トウモロコシを主成分とする配合飼料が1日10㎏与えられていましたが、実験期間中は0.5㎏減らし、その分量の粉砕飼料用米を農家が手作業で混ぜて給餌します。  
  この実験は、2007年11月に発足した「まるごと栃木生活クラブ提携産地協議会」が08年度の事業として、県内で飼料用米の作付けを実施したことを受けたものです。ちなみに08年産の飼料用米は5.5haの面積で30tの収穫がありました。今回の実験ではこのうち10.4t使うことになりますが、残りは「こめ育ち豚」の餌に利用されます。  
  食味の検証結果はまだ出ていませんが、肥育農家の磯進さんは、「牛はこめを喜んで食べていますよ。どのような検証結果が出るか…」と期待を膨らませています。

乳は牛乳で、子牛は将来、肉として食べる

開拓牛(ホルスタイン種)

 ところで、「栃木開拓牛」「ほうきね牛」と問われて即座に答えられる組合員は少ないのではないでしょうか。そこで、デポーで取組むこの2種について、これまでの経緯を追ってみます。  
  人と同じように、牛も子どもを産まなければ乳が出ません。生まれる子牛は雄と雌がほぼ半々ですが、雌牛は乳牛になるべく育てられます。一方、雄牛はそのほとんどが肉用牛として肥育されます。スーパーなどで「国産牛」とだけ表示して販売されている牛肉の多くは、乳用牛種・ホルスタインの雄牛だと考えていいでしょう。  
  最近は、国産牛でも「国産」にプラスして「交雑種」という表示を見かけます。これは、ホルスタインの雌に 主に和牛を掛け合わせて産まれた子牛を肉用牛として育てたもので、業界内で「F1」と呼ばれる1代限りの雑種を指しています。交雑種が産まれる背景を、生活クラブ連合会畜産担当の鮱名定昭さんはこう説明します。  
  「ホルスタインを飼育している酪農家は、初産を軽くしたいと考えています。こういう時に掛け合わせるのは、ホルスタインより一回り小さい和牛というのが一般的。そうすると産まれる子牛は小型なので、お産が楽になるというわけです。ただ、子牛はF1なので雌牛でも乳牛にできません。したがって雄も雌も肉牛用として育てられるのです」

ほうきね牛(和牛との交雑種)

 流通している国産牛のうち、「和牛」と表示されている以外ほとんどを、この2種が占めています。生活クラブがデポーで取組む「栃木開拓牛」は前者のホルスタインの雄、「ほうきね牛」は後者の交雑種です。
  一般的に、これらの子牛を酪農家が育てるケースは稀で、地域外の肥育農家に売られていきます。一方、生活クラブは、栃木県開拓農協に加盟する農家で肥育することで、「ホルスタインの乳を牛乳として飲み、生まれた子牛は将来、肉として食べる」という、地域内における乳肉一貫生産の体系づくりを進めてきました。

飼料のNON-GMO化も実現

 生活クラブのデポー事業が始まったのは1982年。牛肉は当初、北海道チクレンのブロック肉を取組んでいました。93年には、国内の牛肉生産を支える仕組みとして、交雑種の取組みを始めました。
  翌94年からは栃木開拓連(現・栃木県開拓農協)の牛肉取組みがスタートします。牛肉の産地を北海道から栃木に替えたのは、新生酪農(栃木)の牛乳と牛肉の生産をセットで位置づけ、関係をさらに明確化し、「乳肉一貫生産のさらなる推進」をはかること。また、牛肉、豚肉、野菜の取組みを通して栃木県開拓農協を食料基地として位置づけ、明確化をはかる―などを目指したからです。
  スタート当初、「栃木開拓牛」の肥育は生後8ヶ月までは北海道で、その後、出荷される22ヶ月までは栃木開拓連でという変則的なものでした。また02年から始まった「ほうきね牛」の取組みも当初は、地域外の子牛を導入せざるを得ないこともありました。
  こうした事態を改善するために生活クラブと栃木県開拓農協、さらに、新生酪農に原乳を出荷する栃木県の箒根酪農協同組合(以下、箒根酪農)との間で話し合いが行われました。その結果、「栃木開拓牛」「ほうきね牛」ともに地域内一貫生産の観点から箒根酪農からの子牛導入を進めることを確認。併せて、子牛からの一貫肥育を実現することで飼料の完全NОN―GMО化(非遺伝子組み換え作物)を目指していくことも確認されました。
  そして04年10月、栃木県開拓農協で「栃木開拓牛」における子牛からの一貫肥育が本格的にスタートし、06年10月からは一貫肥育だけによる「栃木開拓牛」の出荷が可能になりました。生活クラブがNОN―GMО宣言をしてからおよそ10年。ここに「栃木開拓牛」と「ほうきね牛」揃っての地域内乳肉一貫生産と、飼料のNОN―GMО化が実現したのです。  
  この間、「栃木開拓牛」を肥育する牧場の事業からの撤退などがありましたが、「ほうきね牛」を肥育する3者がこれを引き継いだことで、新たな生産体制がスタートしています。また、乳肉兼用種として新たに「ブラウンスイス」種の実験肥育、実験取組みが提起され、栃木県開拓農協で試験肥育が行われてきました。07年度には、その食肉としての生産体系と食味評価がなされ、デポーの実験取組みでは、「栃木開拓牛」レベルの肥育成績にあることと、食味は同等以上であるとの評価が得られています。 地域を特定して生産された乳を牛乳として飲み、子牛は肉として消費することで国内の牛肉生産を支えることを目指した「乳肉一貫生産」のモデルづくり。デポーでの部位別バランス対策など克服すべき課題はありますが、前出の鮱名さんは今後の展望をこう語ります。 「ブラウンスイス種の酪農実験に併せ、産まれる雄子牛の肥育生産と消費の実験を立案します。また、栃木での地域内乳肉複合生産体系のモデルづくりを継続させるとともに、飼料用米給餌実験の検証結果を踏まえて、飼料自給率向上の模索を続けます」