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「つくる人と食べる人」との交流の可能性を調査

「つくる人と食べる人」との交流の可能性を調査

 食料の自給はとても重要ですが、国内で生産できない食べ物もあります。そのひとつがコーヒーで、生活クラブ連合会はこのような食品について海外の産地との提携を強め、特に「南」と呼ばれる産地とは“奪わない”提携のあり方を重視しています。今回は消費材「コーヒー粉・パプアニューギニア」の産地を4月25日から5月2日にかけて視察。訪問した生活クラブ連合消費委員会・委員長の若林裕子さんに視察内容を聞きました。(2009年6月17日掲載) 

生活にゆとりをもてるようになったコーヒー農家

現地の生産者から説明を受ける若林さん

――昨年に続き2度目の視察ですが、今回の目的は?
[若林] 生活クラブ連合会は国内で生産される消費材と同様に、海外でつくられる食品に関しても「産地点検」を進めています。昨年は、日常的に利用するコーヒーの生産現場を事務局である開発部が点検してきました。そして、コーヒー豆を摘む農家から組合員に届くまでの流通が明白であること、輸出業者など介在する事業者が市販品に比べて少なく透明性が高いことを確認しました。今年は海を越えて、つくる人と食べる人が交流する可能性を調査するための訪問で、ふだんコーヒーを利用している組合員が行くのは初めてのことでした。
(*昨年の視察報告はこちらをクリック)
――パプアニューギニアのコーヒー生産の視察といってもどこにある国なのかなど、ピンとこない人もいると思います。
[若林] そうですね。私も訪問することになって知識を得ました。パプアニューギニアはオーストラリアの北にある国で、日本から飛行機で6時間半で行ける距離にあり、時差もわずか1時間のところです。コーヒーは赤道をはさんで北緯、南緯25度までの地帯(コーヒーベルト)が生産に適しているとされますが、その中にすっぽり入る国です。  
  世界的な生産量や日本への輸出量はブラジルが第1位ですが、行くのには25時間くらいかかります。そう考えるとパプアニューギニアは日本にとって、コーヒーの栽培方法や生産者の様子などが確かめやすい国といえるでしょう。
――コーヒーを毎日のように飲む人は多いと思います。ところが、栽培方法などはあまり知られていません。
[若林] パプアニューギニアでは訪問した5月がちょうど収穫の最盛期でした。12月がそれに次ぐ時期だそうです。もっともコーヒーは一年中とることができ、小規模な農家はお金が必要になるとコーヒーを摘んでは換金します。ですが、その価格は遠くニューヨーク取引相場と連動していて、生産過剰作物であるコーヒー価格はずっと低く押さえられています。

今収穫を待つコーヒーの実

――生活クラブが提携する生産者はそのような状況に対し、何か対策のようなことを行っているのですか。
[若林] はい。提携先はシンブー州のチュアヴェ地区など、高原地方のコーヒーを集荷・輸出するコンゴ・コーヒー社(KONGO COFFEE Ltd.)で、貧困をくい止めるために「エリンバリ・プロジェクト」という取組みを進めています。農家に対し豆の収穫から洗浄、乾燥などに6つの基準を設けてコーヒーの品質を高める一方、基準に合格した豆は通常より最高で25%高い価格で現金買い取りしています。このことにより農家は、生活にゆとりがもてるようになりました。コンゴ社が製造するコーヒー豆は年間約6000t。そのうち高品質な豆は約180tに過ぎず、生活クラブはこの豆を指定して「コーヒー粉・パプアニューギニア」という名称で共同購入しています。ちなみにエリンバリとは、地域にある美しい山の名前です。

「苦労を知ってもらえてよかった」の声が

パプアニューギニアの子どもたち

――栽培農家はどのような話をしていましたか。
[若林] 「消費者が訪ねてくれるのは不安もあるが名誉なこと」「高品質のコーヒーをつくる苦労を知ってもらえてよかった」という声がありました。32歳の若い農家は「この地域は普通のグレードの豆をつくることと、コンゴ社があることで高品質の豆をつくるという選択をする権利がある」と話していました。私は他の地域では農家に高品質の豆をつくる機会や、売買する仕組みがないのだと理解しました。また、買い取り価格が高くなった分は、子どもの教育費やコーヒーの実から豆を取り出す機械を購入する費用に充てていると語っていました。  
  コンゴ社も小学校に寄付したり、水の供給などを行っています。社長のジェリー・カプカさんは、生活クラブや日本側の提携生産者である 日東珈琲(株)との取り引きを、こう評価していました。
  「以前は世界的に有名なコーヒーチェーンに出荷していましたが、業者を介した取り引きであったため高品質な豆に対する評価などはありませんでした。しかし、生活クラブとの提携は焙煎事業者である日東珈琲との直接取引きで介在する業者がなく、お互いに率直な意見を交換ができる関係にあります。これはたいへん価値があることだと思います。生活クラブとの関係を持つことは、質と量を確保していく意味でも重要であると思っています」
――若林さんはどんな話をされましたか。
[若林] 「いつもありがとうございます。みなさんがつくったおいしいコーヒーを飲んでいます。今回、『エリンバリ・プロジェクト』で高品質の豆をつくっている方々に会いたくてここまできました。今後も飲み続けていきたいので、いいものをつくり続けてください」と話しました。  
  農家や生産者は買い付けに来る業者に会うことはあっても、私たちのように実際にコーヒーを飲んでいる消費者に会うのは初めてだったのではないでしょうか。現地を訪問できたのは数日ですが、消費する者が生産者に直接挨拶できたのは彼らにとっても意味があったと思います。誰が食べているか分かると、生産する側もいっそう責任感が強くなるものですから。
――生産現場を視察し、帰国した後で飲むコーヒーは一味違うのでは。
[若林] そうですね。飲むと農家の笑顔や産地の様子、エリンバリ山の美しい姿などが思い出されます。なによりコーヒーができるまでに実から豆を取り出す作業、発酵や乾燥させるなど、農家は多くの手間をかけていることが分かりました。   
  魚は切り身で売られることが多いため、「切り身が泳いでいる」と思う子どもがいるといわれています。でも、コーヒーの栽培やつくり方に関しては、これと同じような状態にあると言えるかもしれません。コーヒー生産の現場について、たくさんの人に伝えていきたいと思います。そして今後も生活クラブから現地を訪れるとともに、パプアニューギニアからも日本に来ていただき、多くの組合員と交流を進めていければと期待します。

「豊かさ」とは何かを考えさせられた

パプアニューギニアの人々

――具体的にどんな交流が進められればよいと思いますか。
[若林] ある農家が「私たちは日本のことを知らなかった。たぶん、あなたたちもパプアニューギニアのことを知らなかっただろう。だが、『エリンバリ・プロジェクト』を通じて知り合うことができた。今、スタートを切ったのです」と話していました。私もその通りだと思います。   
  パプアニューギニアは貧しいといわれていますが、彼らは自分の食べるものは自分でつくることができ、基本的にたくさんのお金を必要としない生活を送っています。一般の家には電気や水道が引かれていません。が、暮らしている人はそれを不便と感じていません。人々はいつも笑顔でゆとりがあります。私は「自分が望む暮らしが、誰にもおびやかされないで生きられる幸せ」を彼らに感じました。
  一方、日本で暮らす私たちはどうでしょうか。お金を出さなければ食べ物が手に入らないし、自給率は40%という貧しさです。欲望や楽しみを喚起する商品が巷にあふれる一方、毎日何かに追われ、神経をすり減らしているように思います。今回の視察で、私は「豊かさ」とは何かを考えさせられました。
  私たち生活クラブとパプアニューギニアの人々との交流は、支援する人とされる人の関係ではなく、食べる人とつくる人の「共存」だと思いました。双方が行き来することで、お互いの生活や考え方を知ることから進めていければと思います。特に女性同士で子育てや男性との役割分担、それに料理のことなど忌憚なく話し合いたいですね。
――ふだん利用している組合員や生活クラブに加入を検討している方へメッセージをお願いします。
[若林] 生活クラブは国産を重視していますが、国内で生産できない消費材については海外産地との提携を強化しています。特に「南」と呼ばれる産地とは“奪わない”提携のあり方を重視しています。パプアニューギニアのコーヒーは適正な価格で取り引きしているだけでなく、栽培方法や生産者が明らかで品質的にも誇れるものです。168人いる生産者の名前まで分かるなど、一般に販売されている商品ではないことだと思います。生産者たちも「エリンバリ・プロジェクト」に取組むことで、高品質のコーヒーをつくり出す誇りとプラスされる報酬を手に入れたと、何度も口にしていました。
  私たちは消費・利用すること、今回のことでいえばコーヒーを飲み続けることが運動だと考えています。利用し続けるなかで課題があれば生産者とともに話し合って解決し、その過程を通して提携を深めていきます。ですから飲み続ける仲間をぜひ増やしていきたいと思います。
――ありがとうございました。