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「GMOと慣行・有機農業との共存は不可能」との共通認識が

「GMOと慣行・有機農業との共存は不可能」との共通認識が

 2009年4月24日、25日、スイスのルツェルンで「GMOフリーゾーン欧州会議」が開催されました。ヨーロッパの環境保護団体や市民団体が主催して、遺伝子組み換え作物が存在しない地域である「GMOフリーゾーン」に取組む人たちが年1回集まるこの会合は、今年で5回目です。今回のテーマは「食と民主主義」。ヨーロッパのみならず、世界39カ国から250人が参加し、活発な報告と討議が行われました。参加された赤堀ひろ子さんにお聞きしました。(2009年6月23日掲載) 

ヨーロッパ各国でフリーゾーンが増加

鉄と木と水を巧みに配した現代建築のホールに置かれた、ドイツ語で'gentechfrei'(GMOフリー)と書かれた大きな白い袋。スイスのNON-GMO運動の象徴と言われている。

――今回は、「食と民主主義」というテーマで、スイスで開催されましたが。
[赤堀] ヨーロッパ各国でGMOの栽培ができない地域が増えていますが、なかでも、スイスは国民投票で、2010年までのGMOの栽培禁止を決めています。そうした国にふさわしいテーマといえるでしょう。歓迎の挨拶で、開催地ルツェルンの地方議会議長のアドリアン・ボルグラ氏がいったDemocratic co-decision(民主的共同決定)という言葉が忘れられません。GMOの栽培禁止についても、その国で暮らしている市民の確固とした自己決定が存在し、しかも、それを裏付ける情報公開と選択の自由があってこそ、できるものなのです。また、会議の運営にスイス連邦の国会議員が4人参加していることや、各国の大臣クラスの参加があるということから判断して、この会議がきわめて政治的な関心、課題になっていることを感じました。消費者と生産者の思いは、政治をも動かす。いえGM(遺伝子組み換え)食品・作物を拒否する政策は、国家の戦略なのであると思いました。
――会議はどのように進められたのですか。
[赤堀] 「食と民主主義、ヨーロッパは農業における遺伝子技術を拒否する」、「欧州でのGMOフリーゾーン運動はどの位置に立つべきか」をテーマに全体で話し合い、その後、さまざまな分科会やワークショップがあり、最後に全体でこれからの戦略を話し合いました。
  これらを通してGM作物の栽培やGMOフリーゾーンの現状について把握できました。ヨーロッパでは、モンサントのMON810というコーンしか栽培の承認をしていない、デンマークやフランスなどの6カ国が国の政策として栽培を禁止している、首尾一貫した反対や、政治やメディアの関心があり、フードマーケットは、実質GM製品がない?などです。GMOフリー地域の現状は、地域(Region)196、県(Province) 93、市町村(Local Government) 4567、宣言した農家や個人は3万人を超えました。一方、GM作物の栽培は、スペインが約80,000ha、チェコの8,000ha、ルーマニアの7,000haと続き、フランスを除き、約107,000ha(欧州バイオ産業協会資料より)。これは欧州全体の穀物の0.2%ということですが、どの国も2007年度より栽培面積は増えており、特に旧東欧諸国の増加が顕著です。貧しい(この言葉は問題がありますが)地域に、モンサントなどの企業が集中的に作付けの攻勢をかけているように思えます。この構造は、昨年、私が西豪州を訪問した際、GM ナタネの販売先として規制のゆるいアジア地域を考えているということを聞いたのですが、それと同じ差別を感じます。それでも、各国からの取組みの報告にありましたように、それぞれの国で反対運動をしている人がいて、フリーゾーン登録を進めていて、希望と連帯が感じられます。

ナタネの自生調査などを報告

会場は、ルツェルン駅の隣の湖畔に立つ美術館と会議場が併設されたKKLホール。会場の前は湖めぐりの船の発着場があり、対岸には中世の街並みの旧市街、また、雪を抱いた山々が一望できる。写真は赤堀ひろ子さん

――特に興味をもたれた取組みは。
[赤堀] 開催国スイスは全土がGMOフリーで、輸入飼料の99.9%がNON-GMです。スイス政府は、2013年までGM作物の栽培禁止の延長を提案し、今年、議会が決定する予定だそうです。また、有機農業団体ビオ・スイス(Bio Suisse)による認証は厳しく、権威あるものになっています。特に、BIOマークの横にSUISSEがついているものは Swissnessと呼ばれ、90%以上スイス産の有機農産物です。ただ、それらはGM作物とのco-existence(共存)がないことで保証されているということで、国全体がGMOフリーの強みを感じました。
――赤堀さんも報告をされました。
[赤堀] グリーンコープ共同体の川原ひろみさんと私は、ナタネの自生調査と宮崎県綾町で行われたGMOフリーゾーン全国交流集会、来年名古屋で開催されるCOP10(生物多様性条約締約国会議)・MOP5(カタルヘナ議定書締約国会議)に対する市民の取組みのお知らせを中心に組み立て、報告しました。ナタネの調査キットを持参し、報告の中で紹介したのですが、交流の際、質問や問い合わせがありました。
――会議からは、どのような共通認識が。
[赤堀] GMOと慣行農業・有機農業の共存は不可能であるということだと思います。本会議の主催者の一人、べニー・ハエアーリン氏は、EUの国々が農業へのGMOの使用を認める法律や政策を再考する、それぞれの地域がその地域に最善の農業の実践を決める権利を持ち、決定できるようにする、モンサントやシンジェンタなどのアグロケミカル企業が、世界で飢餓が増えているという「スキャンダル」(GMOは飢餓を救うという意味の醜聞)を流すのをやめることを訴えました。こうした意見は大会宣言に盛り込まれ、参加者の総意として、EU-wide moratorium(GMOの承認と商業栽培に関しての禁止)を採択しました。宣言文の最後に、GM作物のモラトリアムを民主的に決定し、ヨーロッパに道を示したスイス国民への感謝を表明しており感動的でした。

「食べたくない」の声を大きくしていく

――今後の活動に向けてお願いします。
[赤堀] 会議に参加して強く感じたのは、GM作物の商業栽培はないが、大量に輸入され、表示の不備でGM食品でないものを選択する自由もない日本と、きちんと表示をし、交雑を防ぐ手立てを図り、GMOフリーの地域を増やしていくことを課題するヨーロッパとの違いです。分科会「有機農業と食の多様性」の司会をされたBio Suisse のマーカス・アルベンツ氏に、西豪州のGMナタネの作付けのことを質問しました。「オーストラリアの大規模農家が、作業の利便性のためにGM作物を植えてみたい…と言った場合、私たちはどうしたら良いですか?」と。彼は「とても難しい問題だけれど、NON-GM食品・作物へのニーズを増やす、GMOフリーゾーン運動の推進、表示の適正化、モラトリアムの継続など」と答えてくれました。そう、できることはいっぱいあります。あきらめることなく、日本の地で、「食べたくない」と言う声を大きくしていくしかない!!と強く思いました。
――ありがとうございました。