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食品表示制度の抜本改正を求める全国署名運動がスタート

他団体とともに、全国署名運動の取り組みへ

 多くの食品を海外に依存している日本。その結果、違法な農薬残留や毒物混入など、食の安全・安心を脅かす事件が後を絶ちません。一方、国内では産地偽装事件などが起きています。いま消費者は「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何を」、「どう作ったか」を確かめてから食品を選びたいと考えています。ところが、現在の食品表示はそれに十分応える制度にはなっていません。そこで生活クラブ生協は、他生協や消費者団体とともに、食品表示制度の抜本的改正を求める請願署名の取り組みを始めました。7月11日には、そのスタート集会が東京で開かれ、約200人が参加しました。(2009年8月10日掲載) 

抜け道だらけの「食品表示制度」

生活クラブをはじめとした1998年の遺伝子組み換え食品の表示を求める大きな運動が、2001年の表示制度につながったが...

  集会は「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」が主催。冒頭、キャンペーンの小野南海子さんは、表示を免れている食品が多い遺伝子組み換え食品の表示制度の不十分さを指摘し、「消費者が選べるわかりやすい表示制度にするように、署名活動を頑張りたい」と挨拶しました。
  続いて「食政策センター ビジョン21」の安田節子さんが、「現在の表示制度の問題点と目指すべき改正の方向」のテーマで講演しました。安田さんは、60%が輸入食料というなかで日本の消費者には食べ物の実態が見えなくなっていると指摘。その背景として、グローバル化や食品の工業化が進んだことを挙げました。そして、「遺伝子組み換え食品、また近い将来、流通すると言われているクローン牛肉などは、全面表示がなければ消費者には見分けがつかない。消費者が知って選ぶ権利を国が制度で裏打ちしなければなりませんが、現行の表示制度もそうなってはいません」と、問題点を列挙しました。
  安田さんがまず指摘したのは、加工食品の原産地表示。2000年7月から生鮮食品には原産地表示が義務付けられ、遅れて加工食品への義務化も進みました。しかし、塩蔵きのこ類や塩蔵野菜など生鮮に近い限定された20品目のみで、その他の加工食品は対象外のまま。しかも、原材料の重量で50%以上を占めるものだけでよく、49%以下はこれも対象外になっています。また、調理冷凍食品、缶詰・瓶詰め、レトルトパウチ食品、加熱処理したものも対象外。「このほか、対面販売もその対象外というように例外が多く、抜け道をつくっている」(安田さん)のです。
  抜け道は、遺伝子組み換え食品の表示にも設けられています。遺伝子組み換え食品については、表示を求める220万人の署名と、1000を超える地方議会が意見書を採択したことで01年に表示制度がスタートしました。ところが、遺伝子組み換えDNA及びこれにより生成したタンパク質が除去、分解されているとの理由で、遺伝子組み換え大豆を原料にした醤油や大豆油、これも遺伝子組み換え原料に依存せざるを得ないコーン油、ナタネ油など多くの食品が表示の対象外になっているのです。また、遺伝子組み換えトウモロコシなどがほとんどの家畜飼料も対象外なので、畜産物には表示されていません。さらに、表示しなければならない食品についても、重量で上位3位までの5%以上の原料以外は表示を免除されているのです。抜け道だらけの遺伝子組み換え食品の表示制度について、安田さんは参加者にこう訴えかけました。
  「遺伝子組み換えDNAなどと言わなくても、遺伝子組み換え作物か否かは原料をチェックすれば簡単に分かること。なぜ、そういう抜け道を多くつくるのか歯がゆい思いがします」

クローン家畜食品に市場流通の可能性

 安田さんに続いて講演したキャンペーン代表の天笠啓祐さんは、EUとの表示制度と比較し(表参照)、「日本は遺伝子組み換え作物の世界最大の輸入国で、遺伝子組み換え食品を一番食べている。一方、EUでは遺伝子組み換え食品が流通していません。これは表示制度の違いが大きい。すべての加工食品に原料原産地表示が義務化されれば、間接的に遺伝子組み換え原料が使われているかについてトレースすることも可能になります」と、すべての加工食品の原料原産地表示と、すべての遺伝子組み換え食品・飼料の表示義務化の必要性を強調しました。

  日本の現状 EUの制度
表示の対象食品 食用油や醤油など大半の食品が対象外 全食品表示
原材料・上位品目の限定 上位3品目(重量比5%以上)に限定 限定なし
混入率 5%まで認め、「遺伝子組み換えでない」表示が可能 0.9%以上は表示
レストランでの表示 設定されていない 外食産業も対象
飼料の表示 設定されていない 表示の対象
表示のわかりやすさ 「使用」「不分別」「不使用」、表示なし 「GMО」、表示なし(表示なしは不使用)

 天笠さんはまた、クローン家畜由来食品の表示義務化を訴えました。
  1996年、体細胞クローン羊「ドリー」が誕生して以来、日本でもその技術を用いたクローン牛、クローン豚、クローン山羊の研究が進められてきました。このなかでは牛がもっとも多く、08年9末時点で557頭も誕生しています。現段階ではこれらを使った食品は流通していませんが、09年6月、食品安全委員会がクローン家畜食品を安全と評価して厚生労働省に通知したことから、市場流通の可能性が指摘されています。しかし、クローン家畜については、たとえば、一般牛の死産は4.6%、生後直死は1.9%なのに対してクローン牛は16.4%、14.4%とかなり高い数値になっています。が、その原因は科学的にまだ解明されていません。にもかかわらず、安全と評価した食品安全委員会の姿勢を天笠さんは、こう批判しました。
  「評価は200日以上生きたクローン牛を対象にしたもので、それは健全で、一般牛と同等であると評価しています。では200日以前のクローン牛はどうなるかというと、『問題のある牛は早く死ぬ。長く生きている牛は問題ない。200日以前のクローン牛も出荷されるが、健康な牛はみれば分かる』という話になってしまうのです。これで科学的評価と言えるでしょうか」
  クローン牛由来の食品について、米国は表示を義務化せずに流通を認めています。一方、EUは流通すら認めていません。また、日本では体細胞ではない受精卵クローン牛由来食品の流通は認められていますが、表示は任意のため、その存在すら知られていません。このため、体細胞クローン牛由来食品についても表示されないまま流通する危険性が指摘されています。天笠さんは、講演の最後をこう締めくくりました。
  「加工食品のトレーサビリティと原料原産地の表示の義務化、すべての遺伝子組み換え食品・飼料の表示義務化、さらにクローン家畜由来食品の表示の義務化について力を合わせて実現させましょう」

新聞への意見広告の準備も

吉田由美子さん

 2人の講演の後、質疑応答と、「生活クラブ」や「大地を守る会」を始めとする参加団体からの状況報告がありました。このなかで、生活クラブを代表して報告に立った吉田由美子さん(生活クラブ東京理事長)は、生活クラブが展開している政策提案運動について説明し、「そのひとつが、食品表示制度の抜本的改正を求める運動」と紹介しました。
  運動の柱は(1)国や自治体の各政党へのロビング活動(2)食品表示制度の抜本改正を求める請願署名への取組み(3)新聞への意見広告―の3点。(1)についてはすでに、自由民主党、民主党へのロビングを終え、意見広告についても具体的な詰めの作業に入っています。
  (2)の請願署名については、今年の総代会で「非営利・協同セクターの育成・支援策と、食料自給率の向上に向けた食品表示制度の抜本改正を実現するために」との特別決議が採択されています。そこには、こう記されています。
≪また、消費者の購買行動は、社会を変える大きな力になります。国産の食べものの生産を食べることで支えていくには、消費者が食べものの産地や素性をわかって選び購入できる仕組みが必要です。国内自給力を向上させるためにも、食品表示制度の抜本改正を求め、全国署名運動に取組みます≫
  なお、集会は、食料の自給力と食の安全・安心の回復に向けて、食品表示運動の抜本的改正を求める運動を始めることを確認しました。請願項目は以下の3点です。

  1. 加工食品原料のトレーサビリティと原料原産地の表示を義務化すること
  2. 全ての遺伝子組み換え食品・飼料の表示を義務化すること
  3. クローン家畜由来食品の表示を義務化すること