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「生産する消費者」として、その意味や体験を語り合いました。

「生産する消費者」として、その意味や体験を語り合いました。

 12月5日、長野県飯綱町で、今年15年目を迎えた生活クラブ「加工トマト計画的労働参加」の記念式典が開催されました。組合員、生産農家、トマトジュースの提携生産者など約60人が参加し、その意味や体験などを語り合いました。(2009年12月14日掲載) 

生産農家減少の危機感からスタート

 「お久しぶりです」。「また、会いに来ました」。生活クラブの組合員と加工トマトの生産農家はお互いの顔を認めるなり、満面の笑みを浮かべます。そして、双方とも「おめでとうございます」と挨拶を交わします。
  生活クラブは1981年から長野県の飯綱町と信濃町で採れたトマトを指定して、それをそのまま搾っただけのトマトジュースを取り組んでいます。市販されているトマトジュースの多くは輸入されたトマトペーストを水で還元して製造されるのに対し、国産のみのストレート果汁でつくられるジュースは極めて希少なものとなっています。というのも、1972年にトマトペーストとピューレ、89年にはトマトジュースの輸入が完全自由化され、国内で加工トマトを生産する農家が減少してしまったからです。
  生活クラブは加工トマトの生産が減り始めたことに危機感を抱き、トマトの生産農家に対する「計画的労働参加」を1995年からスタートさせました。これは一般的な援農のように無償労働ではなく、生産者から一定の賃金が支払われて行われるものです。また、トマトジュース1缶当たり約1円が上乗せされ、消費する組合員が「計画的労働参加」に参加する組合員の交通費などを負担する仕組みになっています。したがって農作業をする組合員は、いっそうの責任をもって労働に取り組むことになるのです。
  今年も生産農家の作業が集中する5月のトマトの植え付けに15人、8月の収穫に85人の合計100人の組合員が農作業に励みました。この15年間では、いわば「生産する消費者」として延べ1,200人以上が自分が飲むトマトジュースの生産に携わりました。

労働力という“現物支給”がありがたい

JAながの飯綱加工トマト部会・部会長の杉山昭和さん

  記念式典では、JAながの飯綱加工トマト部会の部会長である杉山昭和さんが、「今年は植え付けの計画的労働参加が行われた5月14日に遅霜、7月には長雨に見舞われ天候には恵まれませんでした。しかし、幸いなことに極端な減収にはなりませんでした」と、今年の作柄について報告。続けて「労働力という“現物支給”がトマト農家にはなによりありがたいものです」と話します。

生活クラブ連合消費委員会・委員長の一政伸子さん

 一方、生活クラブ連合消費委員会・委員長の一政伸子さんは、トマトジュースの「価値」を次のように話します。  「生活クラブは安全・安心な食、トレーサビリティの確保、食料の安全保障などを考え、国内自給力の向上を方針に掲げています。加工トマトが希少になってきているなかで、国産を維持できているトマトジュースは、私たちにとってとても重要な消費材です。私たちにとって国産は、生産者と顔の見える関係が一番大切だと思っています。家族でトマトジュースを飲む時に、生産しているみなさんの話をすることができます。これこそが食卓の豊かさだと幸せを感じています」
  ジュースの製造を担う長野興農(株)・顧問の宮崎明人さんは、15年間の歩みをこう評価します。  「組合員と生産者がともに汗を流してきた実績が、農業の将来の方向を示しているのではないでしょうか。これからの農業は消費者と一体となって守っていく時代だと思います」
  また、トマトジュースの提携生産者である日本ミルクコミュニティ(株)営業統括部・部長の本村直之さんは、「15年と一口に言っても天候は毎年異なり、いろいろなことがあったと思います。社会も15年の間で変化しており、原点をあらためて考えることは非常に重要です。今日はそのよい機会だと思います」と語りました。

15年も続くのは全国的に稀有な例

加工トマトとともにリンゴを栽培する米沢稔秋さんの畑を見学。米沢さんは「和リンゴ」も栽培しています

 この式典には何回も計画的労働参加に携わり、“3人娘”と呼ばれるほど生産農家から親しまれている組合員も駆けつけました。そのひとりで東京から参加した佐々木宏子さんは、「初めて収穫を行った時は翌日は立てないと思うくらい大変な作業だと感じました。でも、参加するたびに笑顔と楽しい思い出をいっぱいいただきました。この土地のおいしいトマトがいつまでも安定的につくられるように、たくさんの組合員に語り続けていきたい」と挨拶。会場から拍手が起こりました。

 

計画的労働参加に何回も携わった佐々木宏子さんは、トマト色のベストを着て駆けつけました

 首都圏などで暮らす組合員が、長野の産地まで出向いて泊まり込みで農作業を行う。こんな活動が15年も続いているのは、全国的にも稀有な例といってよいでしょう。生活クラブでは成功の要因として、以下の5点があると分析しています。

  1. 労働を必要とする時期が短期に集中していること
  2. 産地側に宿泊や入浴施設などのインフラが整っていること
  3. 受け入れる農家が個人ではなく、グループ組織があること
  4. JAや行政など後方に積極的支援を行う団体があること
  5. 生活クラブと生産者側の双方の事務局の連携が密であること

生活クラブ連合会の福岡良行専務理事

 こうした加工トマトの計画的労働参加の実績と昨今の食料情勢をふまえ、生活クラブ連合会の福岡良行専務理事は次のように今後の方針を語ります。
  「国産のみかんジュースやいちごジャムの原料もひっ迫するようになってきました。また、長期的視野で見れば世界的な人口増加に伴い、食料が不足していくことが予想されます。生活クラブ連合会はこれから5ヵ年の中期方針のなかで、さらに生産への参画を強化することを方針化する方向でいます。この方針化の礎には、言うまでもなく飯綱町での15年に及ぶ実績があります。組合員、そして生産者のみなさん、これからも共に頑張りましょう」

生産農家では女性の働きが欠かせません。この日は夫から妻へ感謝状が贈られる贈呈式も行われました