生活クラブ活動情報

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持続可能な漁業と関係性の強化を目指して

持続可能な漁業と関係性の強化を目指して

 燃油の高騰や魚離れ、さらには高齢化と後継者不足など厳しい環境に置かれている日本の水産業ですが、生活クラブは2008年度に策定した「生活クラブ水産政策」で、「産地との提携強化」の基本政策を確認し、北海道の雄武、岩手県の重茂、そして三重県、千葉県、長崎県を拠点産地として位置づけるとともに、目的を定めた交流を続けています。3月11日から12日にかけて、生活クラブ連合会の福岡良行専務理事、一政伸子連合消費委員長ら8人が、三重県漁業協同組合連合会(三重県漁連)、みえぎょれん販売(株)との今後の提携強化に関する意見交換を柱とする交流と、養殖魚の現状などを把握するために三重県を訪れました。
  三重県は、Sマーク認定消費材の「伊勢のり」(答志島)「かつお節類」、また、「しじみ」(赤須賀漁協)など、主要な品目に取組んでいる提携産地であり、水産政策の推進をめざす上で欠くことのできない拠点産地です。生活クラブ連合会では、2010年4月度からのり海藻類をみえぎょれん販売、魚介加工品を三重県漁連との提携に整理し、より一層、漁業者との関係性を深める方針です。(2010年4月14日掲載) 

「右肩下がり」が続く漁業

意見交換の場には三重県漁連の関係者が約30人参加

 「日本の水産業は後継者不足や魚価の低迷など厳しい状況に立たされていますが、三重県漁連も例外ではありません。こうしたなかで三重県漁連は5年後に1県1漁協になることを目指していますが、三重県の漁業を衰退させないためには皆さんの協力が欠かせません。この交流会を通じて持続的な生産と消費を構築するためにお力添えをお願いしたい」  三重県漁連の永富洋一会長の挨拶で始まった交流会ではまず、三重県漁連から三重県の漁業情勢と三重県漁連の活動に関する報告があり、次いで生活クラブからの活動報告、最後に今後の活動に向けた具体的な協議が行われました。  
  三重県は、伊勢湾、熊野灘という好漁場を有する全国屈指の漁業県で、漁業、養殖漁業合わせて年間約20万t、560億円(2007年)の水揚げがあります。しかし、漁業経営体数や漁業就労者数、漁業生産量ともに右肩下がりを続けています。たとえば、漁業就労者数を年代構成別で見ると、「20年前と比較すると男性の59歳以下が大幅に減少し、高齢化と後継者難の問題が現れてきています」(三重県漁連の吉田茂美鮮冷加工部長)。また、三重県に限ったことではなく、漁業者は原油価格の高騰で漁業資材の値上げが続く一方、水揚げの減少と魚価の低迷というダブルパンチに見舞われています。
  三重県漁連の報告ではこの他、各漁協が取組む資源管理と資源回復の具体的な内容や、陸域からの流木、ごみ等の海域への流入防止と植樹活動、さらには藻場と干潟の保全活動などについて説明がありました。漁場環境保全では、「『海のものは山で獲るんだ、だから山を大事にせなアカン』と若い頃に言われたものです」(永富会長)というように、伊勢湾に流れ込む木曽川の上流にある岐阜県東白川村をはじめ、三重県内でも漁協単位で植樹活動に積極的に取組んでいるといいます。また、漁連を通して石けんの使用を進めて海の環境保全に取組んでいるなどの報告もありました。  
  これらの報告について、生活クラブからは「漁業就労者数などが減少している理由は」などの質問が出されました。これに対して三重漁連から「消費が減退して魚を食べなくなったことや輸入魚の増加で魚価が低迷して漁業所得が下がっている。このため自分の代はともかく、子どもには後を継がせられないと二の足を踏んでしまう」という説明とともに、「規格外として扱われている末利用魚を食用向けにすれば、漁業所得が向上し後継者の育成につながっていく」などの意見が出されました。

生活クラブの水産政策を説明

のりの入札場で、みえぎょれん販売の担当から説明を受けました

 生活クラブからの報告は事業概要説明と具体的な活動内容、さらには自主管理・監査活動についてでした。 これに対して、「これまで生活クラブは『協同組合間提携』という言葉を使っていたが、最近『協同組合間協同』に変わった。これはなにを求めているのか」などの質問が出されました。生活クラブ連合会の福岡専務は、「日本の一次産業は危機的状況でこれを食い止めないと事態は深刻化していく。食は命に関わること。持続的な生産と消費を続けていくためには、お互いの協同組合がつながっていくことがこの危機を突破し、新たな構造をつくる模範になるでしょう。この関係をより強く永遠にという意味で使っています」と解説しました。
  今後の活動に向けた具体的な協議では、生活クラブが2008年度に策定した「生活クラブ水産政策」について具体的に説明しました。
  その基本政策は11項目あります。(1)「生産者との直接提携」を基本に、(2)「消費材の素性(海域や漁法、時期)や加工工程を明らかにし」、(3)「生産者価格は再生産が保障される安定価格をめざします」。また、(4)「自給力の向上をめざし、その際、浜に近い漁協・漁連との提携や沿岸漁獲物を優先」させるとともに、(5)「資源管理や自然との共生を大切にした持続可能な生産が営まれるよう、生産者とともにめざします」。この他、これまでうなぎなど一部の魚介類に限られていた養殖について、天然魚の資源管理とともに、(10)「栽培漁業や健康な魚づくりをめざす養殖漁業に対する認識を深め、取組みの検討を進める」などが盛り込まれています。
  全体を通した質疑応答のなかで、養殖魚の生産者団体である海水養殖協議会の西村宗伯会長からは、「資料として渡された生活クラブの養殖魚に関する自主基準はハードルが高いと感じました。私たちが取組んでいる養殖方法でも消費者の方々に安心して食べていただけると思っています。養殖魚の基準を決める会議がある時は是非、参加させていただきたい」という積極的な意見が飛び出しました。これについて生活クラブ自主管理委員会漁業部会長の丸山美佐さんは、自主基準には「禁止レベル」「許容レベル」「推奨レベル」があることを説明し、「推奨レベルはここまで到達してほしいというもの。いずれにしても自主基準は生産者とともにつくっていくものという考え方に基づいています」と応じました。
  意見交換のまとめで生活クラブ連合会の福岡専務理事は、「南の国の飢餓を始めとした世界の食料問題については国連も懸念し、つい最近、協同組合に解決する政策を作って欲しいとするメッセージを発しています。これは生協や漁協を超えた共通の考え方にしなければならず、この問題を直視した取組みがいま求められています。この観点からも自給を軸にした提携関係があることについて実践を通して社会に発信し、これが広がっていくように今後も意見交換を積み重ねていきたい」と語りました。

養殖魚の悪いイメージを払拭して欲しい

海上に浮かぶ鯛やハマチの生簀

 2日目は、熊野灘に面した錦漁協管内の水産市場と、海面養殖現場を船上から視察しました。案内役は、海水養殖協議会の西村会長ら。三重県は海面養殖が盛んな地域で、のりや牡蠣のほか、給餌養殖魚として真鯛やハマチなどが有名です。視察はこの2魚種の生簀で行われ、「健康な魚を育てるために密飼いをしない」ことや、「餌は生餌を使ったペレットを与えているので水質汚染の心配はない」などの説明がありました。 養殖魚については、密飼いによる病気を治療するための抗生物質の多投や、餌による漁場汚染など、マイナスのイメージが未だつきまとっています。これについて生産者は「養殖魚についての悪いイメージを払拭して欲しい」と口を揃えていました。

鯛は出荷までに2~3年かかります

 今回の交流、視察について、一政伸子連合消費委員長は感想をこう話しています。
  「養殖魚については私も良いイメージは持っていませんでしたが、実際は健康に育てることに取組んでいる。これは生活クラブの畜産生産者と同じように効率だけを追求しないという姿勢と共通していると分かり、見方を変えなければならないと思いました。また、海水養殖協議会の西村会長をはじめ皆さんが生活クラブを必死に理解しようとする姿に接し、私たちもこれまで以上に水産現場の実際を知り、理解しなければと思えた交流会でした」