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エコシュリンプ インドネシアの加工工場の労働者が来日

交流会に参加した組合員と記念写真。前列の右から2人目がラハユ・ニングシさん、3人目がワワン・ハリー・ヌグロさん、4人目がヌル・リスマロさん

生活クラブがインドネシアの粗放型養殖のブラックタイガーの取組みを始めたのは1992年。養殖池を造成するためにマングローブ林を大規模伐採する環境問題や、大量生産するための集約型養殖における薬剤の使用と残留など、食品としての安全性への問題が顕在化しているときでした。これに替る養殖方法として着目したのが、インドネシアで伝統的に行われてきた粗放型養殖でした。今年2月、エコシュリンプの加工工場で働く3人が来日、生活クラブ栃木で組合員と交流しました。(2011年3月30日掲載)

環境・安全などをキーワードに

 世界でエビの消費量がトップクラスの日本。甘エビなどを除き、フライや寿司ネタに利用される大型のエビのほとんどはタイやベトナム、インドンネシアなど東南アジア諸国から輸入されています。
 ところが、日常的に食べているエビがこれまで、輸出国にどのような問題を起こし、また、誰がどのように育てて加工、流通しているかを知る人は多くありません。
 高度経済成長期、輸出国である東南アジア地域ではトロール漁での天然エビの乱穫による資源枯渇の問題が発生。80年代には、効率を最優先させた集約型養殖が台湾をはじめ東南アジア各国に広がり、その影響による大規模なマングローブ林の伐採といった環境問題や、過密養殖による病気の発生→薬剤投与という安全性の問題が明らかになりました。
 こうした背景もあり、フィリピン・ネグロス島のバランゴンバナナの民衆交易に取組んでいた(株)オルター・トレード・ジャパン(ATJ)は、生活クラブをはじめとする各生協などとともに、92年から環境、安全などをキーワードにしたインドネシア(当時はジャワ島東部)における粗放型養殖によるエビの取組みをスタートさせました。
 生活クラブがエコシュリンプの取組みを始めて18年。この間、(1)環境保全型のエビ事業であること、(2)生産者、加工業社、消費者各々との間で協同関係をつくること、(3)食品として安全性を追求すること―など5原則に基づき、「誰がどこでどうつくったかがわかる」価値を大切にしたブラックタイガー(2005年から名称をエコシュリンプに統一)に取組んできました。
 現在、産地はジャワ島東部のシドアルジョ、グレシックと、スラウェシ島南部の3地区です。地域によって取組みの経緯や生産環境は若干異なりますが、「稚エビを池に放流後、無給餌並びに化学合成薬品無投与の条件を満たしている粗放養殖エビであり、買い入れ前に上記条件が確認されているエビ」であることが共通の定義になっています。

優れた衛生・品質管理体制の加工工場

 昨年7月には生活クラブの連合消費委員2人を含むメンバーが現地を訪ね、生産から集荷、加工場までを視察・点検、オルター・トレード・インドネシア(ATINA)の加工場では、生産ラインや従業員の服装などが清潔に保たれ衛生的に生産されていることを確認しました。視察・点検メンバーの一人は、「ATINAの本社工場に入って驚かされたことは、日本の食品工場と比べ勝るとも劣らない衛生管理・品質管理体制です。QCと呼ばれる独立した品質管理部署が設けられ、温度や時間、品質などの製造記録や原料の管理とともに、従業員の手指消毒やローラー掛けによる毛髪混入対策まで徹底した指導が行われていました」と報告しています。同工場における加工の特徴は、保水剤を使わない製造方法です。市販のエビでは、不自然なプリプリ感を出して歩留まりを高めるために使われることの多い保水剤ですが、これを使わず、水揚げから加工凍結までを短時間で処理することで、鮮度と素材の良さを引き出しています。
 取引5原則に基づいたエビを私たちが口にするには、エビ生産者だけではなく、冷凍加工を担う人たちの力が不可欠です。その労働実態や日常生活などをまとめた『エビ加工労働者と言う生き方-エコシュリンプの加工現場から―』(特定非営利法人APLA編)の発行に合わせ、その調査報告会や交流を目的にATINAの工場で働く3人が来日。その一環として、2月24日に生活クラブ栃木で「生産者交流会」が開かれました。
 冒頭、理事長の丸山美佐さんは「インドネシアの生産者が消費地を訪れて意見交換できる機会は2度とないかもしれない。私たちの思いを述べて信頼関係をさらに深く築きたい」と挨拶。ラハユ・ニングシさん、ワワン・ハリー・ヌグロホさん、ヌル・リスマロさんは、自身が携わる仕事内容や「仕事で大変なことは」などの質問に答えました。エコシュリンプは他のエビ加工場と違い、加工場に搬入された日に加工をすまさなければならず、「このため時間に左右され、夜遅くまで仕事がある」(ワワンさん)といいます。もっとも、ラハユさんは、「すべての仕事は大変だが、問題はない」と断言しました。

お雛様も飾られ、着物の試着も

この日は、3人に日本の文化に触れて欲しいとの趣旨から、お雛様が飾られ、女性は着物を試着

 ちなみに、ATINAでは来日メンバーを選ぶに当たり希望者を募り、その条件として「ATINAとわたし」と題するエッセイを提出してもらい面接を行っています。応募者30人から選ばれたのがラハユさんら3人。そのエッセイに、選別セクションにいるラハユさんは〈皆さんもご承知のように、ATINAは新鮮なエビだけ加工している会社です。ほかのエビ工場のように、定時に加工作業を終了して加工しきれなかったエビを翌日に回すということはしません。仕入れた原料は同日中に処理しなければなりません。これはATINAの品質に対する責任であり、従業員である私たちもそのことをよく理解しています〉と綴っています。
 また、殻むき・背ワタとりセクション班長のヌルさんは、入社したての頃の感想をこう記しています。〈工員としての義務がいっぱいで大変だと思いました。当初、工場の清潔さと加工場所に入るまえにする手洗いの方法がとても印象的でした。前にいたエビ加工工場に比べて、床に落ちたエビの取扱い一つにしても、ATINAは清潔な加工プロセスを実施しています〉
 さらに、製造スパーバイザーのワワンさんは、〈工員さんたちは、要求される高い生産性に応えながら、品質にも気をつかいます。これがATINAのすごいところでしょう。妻がかつて品質管理担当として働いていた別の水産加工工場と比べてみれば、ATINAがいかに優れているかを実感します〉とし、こう締めくくっています。〈ATINAのことを自分の家族のように思っています。いや、ぼくにとっては、それ以上の存在なのかもしれません〉

参加者は約40人。エコシュリンプを利用した昼食会まで交流は続いた

 質疑応答で、参加者から「作業技術の取得にはどれくらいの時間がかかったか」や「インドネシアの人はエコシュリンプを食べているのか」やその調理法など、具体的な質問が相次ぎました。その一方で3人からは、「エコシュリンプの加工の様子が理解していただけたと思うが、こうして欲しいなどの意見があれば」と逆質問が飛び出しました。これについて参加者からは「S・M・L込みの規格があっても」や「規格外のものを利用しやすい価格で」などの声があがりました。
 この日は3人に日本の文化にも触れてほしいという趣旨で会場にはお雛様が飾られ、女性2人には着物の試着も。エコシュリンプを利用した昼食会を含め、和やかな雰囲気のなかで交流を深めました。