生活クラブ活動情報

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生活クラブ、地下水脈調査に賛同のメッセージ

山形県と秋田県の県境にそびえる鳥海山の山麓で1986年頃から続いている岩石採取。近くには湧水として名高い「胴腹滝」があり、また、平地にかけては鳥海山を源とする灌漑用水を利用している水田が広がっています。このため地元では、環境への悪影響を懸念する声が高まっています。(2011年5月16日掲載)

湧水などの環境変化に懸念の声が高まる 

岩石採取場 標高2,236mの鳥海山。山形県側の遊佐町はお米や野菜などの産地として、生活クラブ生協にとって重要な位置を占めています。とくに旧遊佐町農協(現・JA庄内みどり)とは40年以上の提携の歴史があり、遊佐町で1年間に生産される約17万俵のお米のうち約10万俵を生活クラブが共同購入で消費する関係になっています。
 農産物は大地や太陽、そして水など自然からの賜物といえます。とりわけ遊佐町で収穫される農産物は、鳥海山からの清らかな水がおいしさの秘訣になっていると生産者は話します。

胴腹滝 ところが、1986年頃から鳥海山東部の山麓で岩石採取が始まりました。当初は地表に転がっている「転石」の採取だけでしたが、6年前から山を掘り崩して地中の「沈石」を採取するようになりました。
 岩石採取場の近くには、汲み水に県外からも来る人がいるほど有名な胴腹滝という鳥海山からの伏流水が湧き出る場所があります。さらに鳥海山からの湧水を灌漑用水にした水田も、採取場の下方に広がっています。このため、採掘されることで湧水など環境に変化が起こるのではないかとの懸念が町民のなかで高まっています。
 生活クラブが提携する約500人の米農家の集いである遊佐町共同開発米部会もこの問題を憂慮し、昨年2月には遊佐町の時田博機町長宛てに「清らかな水の始まりが、私たちのお米のみなもと」であり、「失われた環境を取り戻すのではなく、すばらしい環境を残すためにわれわれの努力がはじまる」と決意表明し、岩石採取に反対する意見書を提出。生活クラブも持続的な環境を維持することは生産者の願いであると同時に生活クラブ組合員の思いでもあるから、遊佐町町長と山形県知事宛てに岩石採取の中止を求める要望書を提出しました。

遊佐町は地下水脈の調査事業に着手

総合地球環境学研究所の中野孝教教授 このように岩石採取に反対する多くの要望を受けた遊佐町は、「鳥海山系における地下水脈調査事業」などに着手し始めました。開発行為に伴う水源への影響調査や、湧水など鳥海山の優れた自然環境、水環境を次代に残すための条例研究などを進めています。この調査は採石場周辺をはじめとした鳥海山麓や日本海に面した砂丘地帯などから湧水や流水などを採取し、その中にふくまれる微量元素などを分析することで地上からは分からない地下水脈の流れを探るものです。
 2月下旬には遊佐町役場で「地下水脈等調査事業 中間報告会」が開かれ、調査を委託した人間文化研究機構・総合地球環境学研究所の中野孝教教授の分析状況の報告に約30人が参加しました。
 中野教授は、「同じ地区の地下水でも地下7mと70mの水では、溶け込んでいる成分が違うことが分かりました。鳥海山からの湧水には土壌と岩盤の間に流れる中間流出水と、岩盤に深く浸透して湧き出る裂か水の2種類があると思います」と話します。 
 この報告を聞いた参加者からは「石を取るために岩盤を掘られると、湧水に影響が出る恐れがあるではないか」との不安の声があがりました。
 また、ある農家からは「農業は水なくしてはできません。清らかな水の源である鳥海山は、遊佐町にとっていわば“宝の山”です。この豊かな環境をそのまま将来に残す条例などの仕組みをぜひつくってほしいと思います」という発言がありました。
 しかし、現在の法律では開発行為に対する認可権は市町村ではなく、都道府県に委ねられています。地域住民の生活環境を脅かす恐れがあっても、一番身近な自治体である町には県に対して意見を述べることしかできないのが実態です。そこで遊佐町は県に対し、「同意できない」という意見を表明するための明らかな根拠を見出すため、前述の地下水脈調査事業などを町の環境保全基金を取り崩して始めました。この基金は1990年に生活クラブの寄付がきっかけで創設されたという経緯があります。

遊佐町企画課課長の村井仁さん 当時、遊佐町を流れる月光川にアルミ缶工場が建設されるという計画が持ち上がりました。農業用水にも使われる川の水質が汚染される恐れがあり、生産者と消費者である生活クラブが一体となって工場移転の運動を行いました。生活クラブの組合員は移転のためのカンパを行い、集まった約1600万円を遊佐町に寄贈したのです。
 今回、環境保全基金を使って地下水脈の調査を行うことなど岩石採取の規制に向けた一連の取組みの知らせを遊佐町から受けた生活クラブ連合会は、自然環境と農業の未来を守ろうとする町の姿勢に敬意を表すために時田町長宛てにメッセージを送ることにしました。
 遊佐町企画課の村井仁課長は「町民をはじめ多くの人の力を借りながら、県に岩石採取を規制するよう働きかけを強めていきたいと思います」と話しています。

第1回「ひじまがり岩石採取事業監理委員会」開催

 岩石採取を規制する動きが強まる一方、採石の事業主体である秋田県の川越工業と遊佐町は、県の立会いのもと、昨年9月に「岩石採取事業に関する協定書」を締結しました。協定書には川越工業が昨年4月認可申請した約10万立方メートルにおける採取についてのもので、実施に先立ち地元住民、同社、遊佐町及び山形県による監理委員会(ひじまがり岩石採取事業監理委員会)の設置などが盛り込まれています。同委員会は計画の適正な執行、岩石採取に関する苦情や問題などの解決を図り、環境や景観、地下資源の保全を期することを目的にしています。その第1回会合が4月14日、25人の委員が出席して遊佐町役場議事所で開かれました。
 会合では堀田堅志遊佐町副町長(委員長)の挨拶に続き、川越工業の川越恵次社長が「真剣に作業を続けていくので、今後も指導をお願いしたい」と挨拶しました。また、川越康平常務が事業の具体的内容を説明するとともに「トラックによる運搬ルートは県への申請通りですが、運搬中の落石などについてはその予防に万全を期します」と確約しましたが、住民委員からは「運搬ルートについては『はい、そうですか』と言えない」と、同意できない意思表明も出されました。ただ、他の住民委員から意見表明が出なかったため、堀田委員長は「ルートに関しては同意されたと理解し、問題が起きた場合は委員会で話し合うこと」を確認しました。住民委員からはこの他、採掘跡へ産業廃棄物が不法投棄される可能性や、のり面の崩落の危険性などについて危惧が表明されました。これらについて川越工業は「不法投棄に関しては万全の対策を講じることになっています。また、崩落については基準より安全側に立った計画になっています」などと説明しました。

岩石採集場 会合ではこの他、遊佐町が始めた地下水脈等調査事業〈鳥海山山麓(ひじまがり地区)湧水共同研究〉の結果が町から報告されました。ポイントは「採石場周辺」と、採石場に近い「ひじまがり~白井」の地下水脈が関係しているか否かなど。これについて報告は「ひじまがり~白井の湧水は採石場の水と同じではないが、地下水脈としてつながっている可能性は否定できない」としています。
 なお、議事終了の直前、ある委員から「こういうテーブルにつくのは問題ないが、逆に岩石採取を計画通りに進めていくという流れをつくってしまうことに懸念がある」との指摘が上がりました。これに対して川越工業は「問題等があった場合、委員会に提案していただければ真剣に検討していきたい」と表明しました。

                                                2011年2月15日 
  
遊佐町長 時田博機 殿

               鳥海山系における地下水脈調査事業に賛同します


日頃より、山形県庄内地方における持続可能な環境保全型農業の推進に行政の立場からご尽力いただいていることに、深く感謝申し上げます。

私たち生活クラブ連合会は、北海道から兵庫県まで全国32生協、34万人余が集う生協連合会です。JA庄内みどりとは、旧遊佐農協時代から40年余にわ たって、米をはじめとする農産物の提携関係を結んでまいりました。遊佐町共同開発米部会との提携は、遊佐産米約17万俵のうち約10万俵を生活クラブの組 合員が共同購入する規模に至るまでの深く強い絆となっております。また、私たち生活クラブは、山形県庄内総合支庁酒田農業技術普及課の助言・指導もいただ きながら、遊佐町そして(株)平田牧場とともに飼料用米モデル事業に取り組み、先進モデルとして全国から注目を集めているところであります。今般の鳥海山 麓東部地区における岩石採取工事の問題を受けて、私たち生活クラブ連合会は、アルミ再処理工場進出問題の時と同様、鳥海山の育む清らかな水系ならびに農業 に及ぼす悪影響について深く憂慮しております。

この開発行為による地下水脈への影響を監視するために、遊佐町が鳥海山系における地下水脈調査事業を実施するという決定を行なったことについて、深く敬意 を表し心より賛同致します。また、アルミ再処理工場進出を機に、提携米を育む遊佐の環境を守り続けたいとの思いから、遊佐町とともに私たち生活クラブの組 合員ならびに遊佐町農協(当時)が共同して造成した環境保全基金が、この調査事業のために活用されることは、この基金の歴史と趣旨に照らして大いに賛同す るところであります。

引き続き、遊佐町におかれましては、遊佐の豊かな自然環境と農業を未来に向けて守り続けられるよう、恒久的対策として鳥海山湧水保全区域における岩石採取規制条例の検討を進めていただけますよう、よろしくお願い申し上げます。


 生活クラブ事業連合生活クラブ協同組合連合会

 会長理事 加藤好一

 (以下の32会員単協で構成しています。)

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