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青果生産者と組合員が放射能学習会を開催

 
 

青果の生産者と生活クラブ連合会青果部会の代表者らが集い、10月19日に放射能問題の学習会が行われました。(2012年12月10日掲載)

生産者と消費者の感覚の違いの背景

 講師は筑波大学大学院人文社会科学研究科準教授の五十嵐泰正さん。「『風評被害』から信頼の構築へ」をテーマに講演がありました。
 千葉県柏市では農家や消費者をはじめ立場の異なる人々が集まり、放射能問題に向き合うプロジェクト、「『安全・安心の柏産柏消』円卓会議」(以後・円卓会議)が2011年7月から始まりました。この事務局長に就いたのが五十嵐さんです。日頃から柏の活性化を考え、地元の若手農家と野菜市などを開催してきました。
 円卓会議は柏市がいわゆる放射能の“ホットスポット”と言われていた状況のなかで、農業者や飲食店、流通業、市民などさまざまな立場で「柏産柏消」の発展という志を同じくする人たちが一同に会し、「安全・安心の柏産柏消」をあらためて確立していくためにはどうしたらいいのかを探ることなどを目的にしました。
 五十嵐さんは円卓会議の進捗状況を説明する前に、福島第一原発事故による放射能問題では消費者と生産者が相互不信に陥ったと指摘、そのうえで両者の差をもたらす背景についてこう説明しました。
 「グローバル化のなかでどのような人が優位かといえば、どこでも歓迎される国際的アーティストや旅行者のように移動でき、選べる人たちです。野球のイチローやサッカーの香川のようなアスリートもこの範囲に入るでしょう。実は、消費者は放射能問題ではこの選べる人たちでした。他国への避難は無理でもスーパーに行けば北海道や九州、海外からの農産物が並んでいるわけですからね。しかし、第一次産業の大半は土地に縛られているために移動という選択はできません。このように、放射能問題が浮き彫りにしたのは動ける消費者と動きにくい農家との差、感覚の溝でした」
この溝を埋めることを円卓会議は主眼に置きました。

生産者の取組みに消費者から共感が

 そこで円卓会議は、食品経由の内部被曝にもっとも敏感と思われる幼稚園児の保護者を対象としたアンケート調査を実施(有効回答439)。結果から、62%が原発事故後は地元農産物を「購入していない」「購入頻度を減らしている」という厳しい実態が明らかになりました。ただ、事故前の購買行動に関する質問とのクロス集計をすると、買い控えしている層ほど事故前は地元農産物を積極的に購入していた傾向が顕著に見られたと言います。
 調査は「放射能問題に関する情報ソースとして信頼するもの」や、「農産物の安全性の測定・確認においてもっとも安心を感じる主体はどこか」などの質問もありました。
 情報ソースではテレビ・ラジオ(32%)、インターネット(30%)と続き、行政広報は11%と信頼度は限定的だったこと、安心を感じる主体では大学や専門の測定機関(50%)に次いで市民・消費者(23%)という結果で、行政や生産者・小売店の信頼度はいまひとつだったと言います。
 「この結果から、消費者の安心感の確立と地元農産物の風評払拭のためには、従来の行政による測定と発信だけではなく、専門家のバックアップを受けた市民を巻き込んだ測定と、マスメディアやネットへの発信も併せて行っていくことが有効であることが示唆されました。またこの調査結果は、市民自身が測定して情報発信すればいい、何をしても消費者はもどってこないと思っていた生産者が、やれることから始めようと動き出す大きなきっかけなりました」(五十嵐さん)
 結果を受けて円卓会議が立ち上げたのが「My農家をつくろう」プロジェクト。登録農家を募り、その土壌と農産物の放射性物質を測定。その結果をウェブサイトで公表するという試みです。
 測定は農家単位に行います。まず農地に検査器を持ち込み、数箇所の土壌を採取して測定し、もっとも線量の高い場所で栽培された農産物を検査するというもの。測定のプロセスには消費者がボランティアで参加し、生産者と消費者が同じ目線で情報発信していく仕組みを作り上げました。
 基準値は20ベクレル/kg。五十嵐さんは、「消費者にとって許容でき、生産者にとってもこれ以上出さないという目標になる。また、技術的にも確実に測定、検出できる数値です。数値は生産者、消費者、流通業者など立場の違う人たちが数ヵ月かけて話し合いながら納得して決めたもの。このことに意義があります」と、円卓会議の活動を振り返り、こう締めくくりました。
 「数値よりも生産者が放射能問題に取り組む姿勢を知ってもらうために、チラシを配布して消費者の理解を求めました。その姿勢に消費者が共感を示してくれました。プロジェクトはネガティブなきっかけからのスタートでしたが、新しい価値の創造につながったと思います」
熱心に聞き入る生産者と組合員 参加者からは「消費者の意識は変わったか」などの質問がありました。五十嵐さんは「消費者の放射能問題への理解はあがってくると思います」と述べました。
 また、生活クラブのコア産地である安全農産物普及会(千葉県)の小川達也さんは、こう挨拶しました。
 「柏市のプロジェクトは地域限定的な取り組みですが、放射能問題について生産者と消費者が合意して運動を進めていくことが私たちの活動に反映されればいいし、それが新しい関係性の構築にも寄与するのだと思います」