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チェルノブイリ後のウクライナから福島を考える

 
 

福島第一原発の事故からもうすぐ2年。避難している福島県民をはじめ、事故後を生きる私たちの不安は一向に解消されないままです。昨年9月24日~10月4日、チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)のあったウクライナを視察した生活クラブ連合会品質管理部の槌田博部長に、事故後26年の状況報告と、今後の生活クラブの放射能対策について聞きました。(2013年2月4日掲載)

福島事故後を映すウクライナの状況

強制避難したプリピチャ市のアパート群──視察の目的は。
 ウクライナの現状を見て、福島および周辺の原発事故後の対策を学び、また食の国内自給を目指す生活クラブの放射能対策に活かすことです。
 参加した視察ツアーの主催者であるNPO法人「食品と暮らしの安全基金」では、昨年ウクライナで2回の調査を行い、事故から26年を経過した現在も子どもたちが健康な状況ではないと報告をしています。今回のツアーは必ずしも高線量ではないけれど、低線量とはいえない地域を視察する内容でした。生活クラブふくしまの土山雄司専務理事とともに視察し、私は滞在各地の空間線量の測定をしてきました。

──一番印象に残ったことは何ですか。
 避難するかどうかを住民が自分の意思で決める「避難の権利地域」があることです。
1986年にチェルノブイリ事故が起き、91年に避難の移住計画の基準ができました。その基準による法定汚染区域は年間あたりの空間線量率別に4段階に区分されています。
 まず、5ミリシーベルト以上は「強制避難」「移住義務」の2段階、次の 1~5ミリシーベルトは「移住権利」いわゆる「避難の権利地域」、 1ミリシーベルト以下は「管理強化」の4区分です。この4段階の区域が設けられるまで5年かかりました。
 ではいまの福島の避難状況はどうなっているのか。福島第一原発から半径20km以内にある大熊町、双葉町など空間線量が極めて高く立ち入り禁止となっている地域と、国が避難しなくてよいと判断した年間20ミリシーベルト以下の地域は隣接しており、一本の境界線で線引きされているだけです。
 今後は住民それぞれの放射能に対する考え方や暮らし方の違いが尊重され、ウクライナの基準を参考にして避難するかどうかを自由に決められる「避難の権利地域」を設定する必要があると感じました。

──福島の避難レベルはウクライナ基準とどう違うのでしょうか。
 福島原発の事故は国際原子力事象評価尺度(INES)で、チェルノブイリ事故と同じレベル7「深刻な事故」とされています。
事故から3ヵ月後の一昨年6月、私は東京から郡山市、福島市などを経て立ち入り禁止区域近くの飯舘村まで、車の中から空間線量率を測定して回りました。その時のデータと今回測定したウクライナ各地域の空間線量率を表(*)にしました。この比較表で、福島ではウクライナの「移住権利」区域の5ミリシーベルトどころか、「強制避難」区域にまだ子どもたちを含めて住民が取り残されていることが分かります。
 日本政府は避難指示解除準備区域に指定した範囲までいずれ住民をもどそうという計画を前提に、空間線量を下げようと土壌などの除染作業を進めています。そのため、住民の多くが1年半以上も仮設住宅での暮らしを余儀なくされています。

視察からの知見を生活クラブの活動に活かすために

──生活クラブは徹底した食品の放射能検査をしていますが、参考になったことはありますか。
小学生への聞き取り調査 放射能汚染は何万年も残り、これから先の何世代にもわたって影響を受けていくことは私も頭では分かっていました。しかし今回の視察は、特に子どもたちに与える影響を知る機会となりました。
 そのひとつが低線量の健康管理区域にある3つの小学校で実施した、健康に関するアンケート調査の結果です。「足、のど、頭が1日1回以上痛くなるかどうか」の質問に手をあげて答えてもらう簡単な方法ですが、どこにも痛みがない子どもは、3ヵ所の小学校でそれぞれに全体の16%、25%、36%でした。それ以外の子どもたちは、体のどこかに痛みを抱えていることが分かります。
 食物からの内部被ばくのリスクに対し、ウクライナではほとんどの食品の測定を義務付け、市販品は基準を超えてはいません。しかし、森で採取したきのこを保存して食べる自給的な暮らしが残っているので、その影響が大きいと思われます。実際、森で測定したきのこは200~400ベクレル/kgと、事故から26年たっても高い値を示していることは、日本でも注視していきたいことです。

転地療養する女性に聞き取りをする槌田博部長 また原発から120km離れた低線量地域で暮らす26歳の女性に、非汚染地域で転地療養をしてもらいました。期間は食物から摂取した放射性セシウムが体外へ排出されるといわれる70日(生物学的半減期)です。療養前は心臓が悪く、手足に慢性的な痛みがありましたが、療養後は心臓と手足の痛みがなくなりました。食物による内部被ばくを避けることで体の状況が改善することが分かり、食品中の放射能を測定する重要性を改めて認識しました。
 活発に細胞分裂を繰り返す成長段階にある子どもと妊娠中の女性は、食品からの内部被ばくに注意し、選択して食べていく必要があります。食品中の放射能検査を継続していくことが大事なことだと考えています。

──今後、生活クラブの放射能問題にどう向き合っていきますか。
 生活クラブは農産物はもちろん、加工品もできる限り国産原料を使用して国内自給を進めています。 
現在70億の世界人口は増加し続けており、世界的に食料不足となると予想されます。輸入原料に多くを頼る日本が食料の逼迫を招かないためには、農業が継続できる環境をつくり、国内自給を高めていく必要があるからです。
 徹底した放射能検査によって原発事故の影響で放射性物質が検出された消費材が僅かですがあります。しかし、原発に反対し、持続可能な農業を生産者とともにめざす生活クラブだからこそ、組合員一人ひとりが放射能問題をきちんと理解し、選択して食べていくことができるのではないでしょうか。そのために視察で得られた知見を役立て、生活クラブの活動に寄与したいと思います。
 ツアー参加にあたり、費用を組合員カンパによる東日本復興支援委員会に申請して使わせていただきましたことを深く感謝しています。

◆福島周辺とウクライナ都市の空間線量率の比較

地域 空間線量率(μSv/h)範囲 ウクライナの都市の空間線量率との比較
福島県 飯館村北側から霊山 約 3.2~6.4 直後に強制避難したプリピチャ市(約6)に相当。
飯館村南側 約 1.6~3.2  
弁天山公園東側ホットスポット 約 1.6~3.2
福島市から郡山市 約 0.8~1.6 強制避難で廃村になったコロゴード村(約0.7)に相当。
川俣町周辺 約 0.4~0.8
郡山市から栃木県 矢板市 約 0.4~0.8
いわき市から栃木県 日立市 約 0.2~0.4 ウクライナの首都キエフ(約0.3)に相当。
千葉県 東葛地域 ホットスポット 約 0.2~0.4
栃木県 南部 約 0.1~0.2  

福島周辺のおおよその空間線量率(2011年6月25・26日にウクライナ視察時と同じDoseRAE2で測定。事故の約3ヵ月後)

*「生活と自治」2月号では、生活クラブ連合会・槌田品質管理部長とともにウクライナを視察した生活クラブふくしまの土山雄司常務理事の報告記事が掲載されています。ぜひご一読ください。