生活クラブ活動情報

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支えあい、たすけあう協同組合の実践を見る

 
 

生活クラブ連合会と生活クラブ共済連は、国連が「国際協同組合年」と定めた2012年、世界の協同組合の地域貢献活動の実践を学ぶ3つの「協同組合の旅」を実施しました。その締めくくりとなる第3弾は、12月5日から16日までの12日間、協同組合の発祥の地であるヨーロッパ3か国(イギリス、イタリア、スペイン)をめぐる旅でした。グリーンコープからも4人の参加者を迎え、総勢19人で訪問しました。(2013年4月19日掲載)

協同組合発祥の地で協同組合の歴史を知る

 イギリスは「ロッチデールの先駆者たち」として知られる労働者たちが1844年に「ロッチデール先駆者協同組合」の店舗を作った協同組合発祥の地です。いまは博物館となっているその建物には、世界中から多くの人々が協同組合の歴史を学びに訪れます。
 「創立の背景には当時の社会の劣悪な労働条件と食料事情があったそうです。たとえば小麦粉にチョークを混ぜて重量をごまかすようなことが、まかりとおっていました。」博物館を見学した篠田真由美さん(生活クラブ群馬理事長)は、学んだ歴史を振り返ります。「その中で先駆者組合は、『組合員の社会的地位向上』『一人一票による民主的な運営』『取引高に応じた剰余金の分配』などを掲げ、協同組合運動の理念を現実化させていきました。いまではロッチデールは、『協同組合の首都』となっています。」                    

貧困から抜け出すための仕事づくりから始まったモンドラゴン

視察団(イギリスの協同組合の連合体コーペラティブグループ前) スペインでは、協同組合の街として世界的に有名なモンドラゴンを訪問しました。ホセ・マリア・アリスメンディアリエタ神父が、貧困に苦しむバスク地方のモンドラゴンで、地域の人々のために仕事を作ろうと1956年に始めたのがモンドラゴン協同組合です。いまでは、金融、小売、工業、教育研究開発などの分野で120の協同組合を擁する事業グループであり、組合員は8万3000人。モンドラゴン協同組合は労働者が出資して運営する「労働者協同組合」です。傘下の協同組合の一つ、エロスキ生協についてホセ・マリー前事務総長からお話をうかがい、ハイパーマーケット(超大型店舗)を見学しました。エロスキ生協はかつて地域にあった小さな生協が合併したもので、いまも拡大を続けています。小売業としての売上高は米国資本のウォルマートに次いで欧州2位です。
 荻原妙子さん(生活クラブ神奈川理事長)は、エロスキ生協で次のように感じたと言います。
「日本の生協との違いは、消費者組合員の存在が薄く、労働者協同組合が中心であること。私たち生活クラブは、消費者である組合員が、自分たちに必要な材を生産者たちと作り出し、生産と消費の構造を変えるために、協同組合を組織しています。一方、エロスキ生協は、まず労働の場を作るために、働く者が協同組合を組織し、グローバル化に対抗して株式会社をも飲み込み、巨大企業とわたり合える力をつけました。巨大になりつつも、協同組合の価値と理念が基本であることを大切にされていました。生活クラブ神奈川でも協同組合の運営のあり方について議論してきたので、エロスキ生協の運営には刺激を受けました」。

「社会的に不利な立場にある人々」のための協同組合

 この旅の大きな目的は、社会的に不利な立場にある人々のための協同組合の活動を学ぶことでした。イギリスとイタリアで、その実践の現場を訪れました。イギリスのロンドンでは、女性の起業を支援する労働者協同組合「アカウント3」と、協同組合の設立を支援する労働者協同組合「グリーンマーク」を訪問。イタリアでは、「社会協同組合」を4カ所訪問しました。イタリアの社会協同組合には、おもに行政から委託を受け福祉サービスの提供を行うA型と、法律で規定された「社会的に不利な立場の人々」(アルコール中毒者、受刑者・元受刑者、身体障がい者、精神・感覚障がい者、年少者、精神病患者、薬物依存者など)が構成員の3割以上を占めるB型の二つのタイプがあり、現在では1万を超える団体が活動しています。
 ミラノにあるB型の「オリンダ社会協同組合」は、精神病院の跡地を利用してレストラン、ケータリング、簡易ホテル事業を行っています。メンバー30人のうち11名は精神障がいがあります。入口には、「近づけば誰も普通じゃない」と書かれていました。有光一郎さん(生活クラブ関連会社の生活クラブ・スピリッツ(株))は、この言葉についてこう話します。
「障がい者とともに働くことについては『障がい者とのコミュニケーションが難しいとすれば、普通の人とも簡単ではない。人間として、友人として付き合う気持ちが重要』とのこと。障がいは特別なものでなく当たり前のこととして受け入れられていて、『近づけば誰も普通じゃない』を実践していると感じました」。
ウロブロの彫金作業 同じくミラノにあるB型社会協同組合の彫金工房ウロブロを訪問した茨木美紀子さん(生活クラブ京都エル・コープ)は、「最初に目を奪われたのは、ショーウインドウ。まだ開店していませんでしたが、街ゆく人々が立ち止まって見入ってしまうとても素敵なディスプレイでした」と言います。ここでも障がいのあるジュエリーデザイナーが働いています。「イタリアB型協同組合は『社会的に不利な立場の人々』が30%以上で構成することが義務付けられており、人々が働ける場を着実に生み出しています。日本は、イタリアのように『社会的に不利な立場の人々』の定義は広くありませんが、学校教育法や制度を改正し雇用率を引き上げるなど、少しずつ軌道に乗り始めたように思います。今回の視察は多くの先進事例を学ぶ機会となりました。」(茨木さん)
   イタリアの旅の最後には、2013年から開業するA型社会協同組合の高齢者賃貸住宅を見学しました。小林恭江さん(生活クラブ北海道)は「部屋はどれも2人部屋で、支え合いながら見守り合って暮らすとの考えに触れて、正直はっとさせられました。提供するサービスについても、協同組合の支え合いやたすけあいの理念にもとづいて柔軟に対応しながら、地域のニーズに応えていると感じました。」とその印象を語ります。そして、感想を次のように締めくくりました。
「A型社会協同組合は、福祉分野のサービス提供事業を自治体から受託するなど公的サービスが民間委託されるなかで多く生まれ、協同組合運営の理念を持って広がっています。いま、私たち生活クラブでも福祉事業とともに地域のたすけあいを広げるワーカーズ事業がたくさん生まれています。地域に必要な市民事業をさらに広げ、たすけあいながら地域福祉をつくる協同組合の役割を考える旅となりました。」