生活クラブ活動情報

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自立支援のしくみを充実させ、誰もが排除されない地域社会を 「第3回生活困窮者自立支援全国研究交流大会」が開催されました

10月22~23日、「一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク」の第3回全国研究交流大会が開催されました。「全国ネットワーク」には、生活クラブ共済連も賛助会員として参加しています。初日の全体会には、会場の川崎市教育文化会館に各方面からの約1,300人が集まりました。

制度の見直しの充実に向けて

近年増え続ける生活困窮者の課題は、経済的な問題に加えて社会的な孤立など既存の福祉制度では支えきれないものが多く、生活全般にわたる包括的な支援を提供する「生活困窮者自立支援制度」が2014年4月からスタートしました。
1日目の全体会では、各地での実践報告やそこから見えてきた課題を踏まえ、2018年の制度改定に向けての討論などが行なわれました。

基調鼎談は、大森彌さん(東京大学名誉教授)の「生活困窮者自立支援制度は共生社会の爽やかな風。横につながることで困難を抱えている人を見逃さない社会にしていきたい」と期待の言葉で始まりました。厚生労働省生活困窮者自立支援室室長の本後健さんは、施行1年半が経過したこの法律の意義と成果を「生活困窮者という存在を社会が認識できるようになり、相談者にとっての最後のセーフティネットを担う存在になっている。さらに23条という少ない条文だからこそ、取組みが自由に創造され、柔軟な支援の形が作り出されている実態に発見や感動があり、困難さもみえる」と話しました。

中央大学教授の宮本太郎さんは、「生活困窮者は二重の意味で既存の制度の狭間に落ち込んでいる。安定した雇用が崩れ、家族の形態が多様になった現在、高齢者、障害者、生活保護など対象を限定した縦割りの制度では、複合的な困難を抱えた個人や世帯を包括的に対応できず、1つ目の狭間に落ちている。さらに、福祉制度が働けない人を対象としていて、サポートがあれば働ける人の支援がないために2つ目の狭間に落ちている。生活困窮者自立支制度が機能し、既存の縦割りの制度に横串をさして横断的に対応し、福祉と就労を合わせて支えて働き続けられれば、人も地域も元気になる」と述べました。

自立相談事業の認知などがまだまだ進んでいない現状について、本後さんは「今後の展開は、地域共生社会をキーワードに働きかけていく」とし、制度改定に向けて宮本さんは、「行政の様ざまな相談窓口が自立相談に繋がる仕組みづくりと、生活困窮者が複合的な困難を抱えた人だという概念を制度に書き込んでほしい」と課題を提起しました。
 

先進的な取り組みを進めている自治体からの報告には、青森県弘前市市長、鳥取県北営町町長、三重県名張市市長が登壇しました。

特別講演「希望学から考える困窮者支援」では、東京大学教授の玄田有史さんが、様ざまな壁にぶつかりながら進めている生活困窮者自立支援の今後に、「Hope is Wish for something to cometure by Action」と、壁の前で行動を起こそうとすることから、思いが実現していくとエールを送りました。

 

孤立させず、地域でつなぎ支えるには

困窮者支援の現場に携わっている方々の討論では、長野県社会福祉協議会で生活困窮者自立促進支援モデル事業を担当する山﨑博之さんが「社協が就労支援をするは新しいチャレンジであった。今までとは違う層の人が相談に訪れ、福祉と就労が結びついたのがこの制度の特徴だと実感している」と報告しました。



ワーカーズ・コレクティブ協会の岡田百合子さんは「地域に新しい働き場を作ってきたワーカーズ・コレクティブが就労支援事業を展開し、障害者、シングルマザー、高齢者などの就労のニーズに気づかされ、就労準備の実習先となった事業者は地域にいる生活困窮者と出会う機会になった。中小企業が認定就労訓練の場になるサポートをすれば、受け皿が広がる」と提案しました。


仙台市でどんな状態になっても地域で暮らせる仕組みを作ろうと活動している全国池田コミュニティライフサポートセンターの池田昌弘さんは「制度は大切だが、地域を巻き込んで弾力的に運用しないと、制度や専門職が地域の支え合いを壊す側面もある。支援のプロと地域のプロが混じって、誰をも排除しない地域をつくっていきたい」と地域づくりのイメージに言及しました。


年越し派遣村を開設し、生活困窮者自立支援の先がけを作った湯浅誠さん(法政大学教授)は「個別支援から地域を考え、こんな地域がいいねから個別の支援を作る現場が育っている。しかし、制度には終わりがあり、その先を支える地縁、血縁、社縁が弱体化している今、雑多な人が共生する地域づくりに直面している。人に頼りながら横に繋がり、制度も使いながら地域を作っていくのは可能だと思う」と、様ざま取組み例から制度の今後に期待を述べました。

最後に、ホームレス支援などに取組む認定NPO法人抱樸館理事長の奥田知志さんが「自律と依存も、自己責任と社会的責任も、共生と孤独も対立概念ではなく、対概念だと思う。全ての人が生きる意味のある社会にしていきたい」と、多くの生活困窮者ともに歩む自立支援制度の展望をまとめました。
 

2日目は会場を慶応義塾大学日吉キャンパスに移して、生活困窮者の抱える就労や住居の問題から地域での子ども・若者や高齢者の支援など11の分科会が行なわれました。

【2016年11月29日掲載】