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2008年03月30日:農業協同組合新聞

国産なたね油を「守る」--「生活クラブ国産なたね協議会」

全農グループも参加して消費者と生産者の提携を強める

滝川のなたね畑

◆国産なたね油の増産を
 「作付基礎面積が200haを超えたので、2億3000万円をかけてなたねの乾燥調製施設を建設する。せっかく施設をつくっても生産されなければ施設がムダになる。だから私はなたねを守っていく」。JAたきかわ(北海道)の工藤正光組合長は、2月22日に開催された「生活クラブ国産なたね協議会」の席上でなたね生産への思いをこう語った。
  なたね油は基礎的な食品として多くの家庭で使われているが、その原料であるなたねのほとんど100%近くが輸入(220万トン前後)で、国産の生産量は作付面積800ha、収穫量は900トン(平成18年度「農林水産省調べ」)しかない。
  輸入なたねが食用油に使われてきた背景には、国産なたねが心臓疾患などに影響を与え健康に悪いとされる脂肪酸の一種・エルシン酸を多く含むという問題があった。しかし平成2年に東北農業試験場(現・東北農業研究センター)が、エルシン酸を含まない国産キザキノナタネを開発。4年から青森県横浜町などで栽培が開始された。
  この平成4年に生協の生活クラブ事業連合が国産なたね油への取組みを開始する。ただ、国産100%のなたね油では価格が高くなってしまうことから、輸入の非遺伝子組み換えなたね(西豪州産)に国産なたねを10%をブレンドした「国産ブレンドなたね油」を共同購入で供給してきている。

◆今年で終わる助成金の交付

 生活クラブがはじめて国産なたねの産地提携をしたのは、JA横浜町。そして12年には北海道のJAたきかわと提携し食用なたね油の搾油用なたねの契約栽培を行っている。なたねは大豆、小麦(JAたきかわ)、馬鈴薯(JA横浜町)との輪作体系作物として地域の農業と環境を支える貴重な作物となり、JAたきかわ管内にはいまでは日本一のなたね畑が広がっている。
  なたねについては12年に「大豆なたね交付金暫定措置法」が改正され、国産なたねに対する交付金が廃止され、翌13年からは予算措置による「なたね契約栽培推進対策事業」が17年まで継続実施されてきた。
  しかし、18年以降については推進対策がされない方向だったため、生活クラブ事業連合会は17年7月に「国内農業地域を支える多様な工芸作物の一つとして、また、基礎的な食品に位置づけられている食用油としてのなたね油の原料である国産なたねの生産が継続できる支援継続」を求める要望書を農水大臣に提出するなどの運動を展開した。その結果、18年度から3年間「高品質なたね産地確立対策事業」が実施されることになった。しかし、今年でこの対策事業は終わる。

国産なたねの生産動向

◆国内自給めざし協議会を設立

こうした経過のなか、生活クラブでは、僅かずつでも国内自給を増やしていくことが食の安全を守り、国内自給力を回復していくことになると考え、国産なたねを生産する生産者との提携をさらに強めるために、18年5月に「生活クラブ国産なたね協議会」を設立する。設立集会はJA横浜町で開催されたが、その会員は、生活クラブと産地であるJA横浜町、JAたきかわ。
  そして安全な油を生産するために油を抽出するためのノルマルヘキサン(石油製品)を使わず圧搾法で搾り、一切の工程で化学合成添加物などを使わない「湯洗い洗浄」を世界で初めて開発した米澤製油(株)。さらに生産されたなたねを集荷する全農園芸農産部とそれを販売する全農食品(株)や全農大消費地販売推進部などの全農グループが参加。また、西豪州から非遺伝子組み換えなたねの輸入業務を担当している組合貿易(株)もオブザーバーとして参加している。
  2月22日に開かれた協議会では、19年度の活動報告や20年度以降の活動計画などが協議され確認されたが、いま一番の課題は、助成金対象になるのが20年産までで21年産以降の見通しが立たず「不透明な状況」となっていることだ。
  18~19年度の「高品質なたね産地確立事業」の実績は表の通りだが、20年産については主力産地であるJAたきかわ管内が19年度の117haから200haを超える作付けとなるなど作付面積が増え、「需給が緩和される見込だという」。

◆暗中模索しながら生産技術を確立

 JAたきかわの工藤組合長は12年以降の取り組みについて、最初の5年間は初めてなたねを栽培する人ばかりだったから、「どうやって作ることができるのか。どうやって出荷するのか。暗中模索だった」という。1年1作の作物だから、最初の5年間で5回しか経験していないが、生産者が刈取り機械の工夫をして収穫ロスをなくして他産地よりも1ha当たり収穫量を倍以上確保することができたりする様子をみて、「自分達にもできそうだ」と仲間が増え、「ムリして増やしたわけでもないのに、20年度は240haと作付面積が倍になった」。
  そしていままでは畑を中心とした輪作体系だったが、今年は水田での比率が5割近くなったという。

◆産地JAも本格支援へ

現在は個人乾燥で出荷しているが、それでは品質にどうしてもバラツキがでてしまうので、「基礎面積が200haになったら農協は乾燥調製施設をつくり集中管理する」ことにしていた。農業そのものが厳しい状況にあるときだから「農協としてシッカリ応援したい」ということだ。そして20年度は水田転作を含めて240ha作付けされることになったので施設をつくることにした。
  輸入されているなたねは215万トン(19年)。その内訳はカナダが198万トン、アメリカが2万トンだがこれはほとんどが遺伝子組み換えなたねだ。またオーストラリアが15万トンで、そのうち西豪州産が非遺伝子組み換えなたねだという。
  生活クラブ生協では、現在、1650g入り角缶と800g入り丸缶で国産10%ブレンドなたね油と国産100%なたね油を販売しているが、豪州産が値上がりして価格が縮小してきていることもあり、20年度は取扱回数を増やしたいと考えている。

◆深まる産地と消費者の絆

現時点では、21年度から助成がなくなる可能性が高いが、JAたきかわは「国産需要が高まっているので作り続ける」覚悟だ。
  また、JA横浜町と生活クラブ生協は、なたねだけではなく横浜町で生産される農産物についても提携し契約栽培するなど複合で提携するという成果も生まれてきた。そのことで、少しでも生産者の所得向上に貢献したいというのが生協側の考えだ。
  食用油脂からみれば国産なたね油の量は取るに足りないものかもしれない。だが、国産にこだわることで、産地が活性化するだけではなく、産地と消費者、そしてその間にあるJAや全農そして製油会社との連携が深まり、新たな産直事業にも発展している。そこには「生産者と消費者は対等だ」という思想がある。
  それによって「なたねを守る」ことができるのだと思う。この取組みがさらに発展することを期待すると同時に、本気で自給率をあげようと考えているならば、小さくとも国産を守る取組みを国は積極的に支援するべきではないか。