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2009年03月10日:コープニュース

自給率向上、農業活性化に一役

 食料自給率の低下や国際的な飼料価格の高騰を受け、豚や鶏のえさとなる「飼料用米」の栽培が注目を集め、飼料用米を使った豚肉や鶏卵を供給する生協が増えている。「生活クラブ生協連合会」が先駆的に取り組んでいる山形県遊佐町のプロジェクトは畜産大賞の部門最優秀賞を受賞。政府は2月、飼料用米などの利用を促す法案を国会に提出した。

広がる飼料用米の豚肉、鶏卵─遊佐のプロジェクトが最優秀賞
利用促進の法案国会へ

生活クラブ生協の「こめ育ち豚」 イメージ画像

 日本の飼料用穀物は米国のトウモロコシなどの輸入に頼っており、農林水産省によると、06年の飼料自給率は25%にとどまっている。
 その一方で、主食用のコメの消費量は減少傾向が続き、農村の高齢化も重なって耕作放棄地が急速に拡大。燃料のバイオエタノールの需要増などで世界的に穀物価格が高騰して、畜産農家は危機にひんした。
 こうした山積する問題を解決する突破口として期待を集めているのが飼料米だ。飼料自給率、食糧自給率の向上や農地の有効利用につながるほか、国内生産された安全な飼料を安定供給できるメリットがある。また、飼料用米は排水の悪い水田などでも作付けが可能で、特別な農機具の導入も必要ないなど農家も取り組みやすいという。
 飼料用米にいち早く着目したのが、「生活クラブ生協連合会」だ。コメ生産地の遊佐町や豚肉生産者の「平田牧場」(山形県酒田市)などと提携、1996年に飼料用米生産の試みが始まり、04年に「飼料用米プロジエクト」が本格的にスタートした。06年にはコメを10%混ぜた飼料で育てた「こめ育ち豚」として組合員に供給を始めた。
■肉質よく好評に
 飼料用米で育てた豚は脂肪中のリノール酸が減少し、オレイン酸が増加する傾向になることが分かり、「こめ育ち豚」は肉質がいいと好評となった。
 遊佐町の飼料用米の作付けは昨年には168ヘクタールに拡大。「畜産が抱える構造的問題点を地域的な取り組みによって少しでも解決しようとしている好例」と高く評価され、2月に小野寺喜一郎・遊佐町長が代表を務める「飼料用米プロジェクト」が畜産大賞(中央畜産会主催)の地域畜産振興部門最優秀賞を受賞した。
 一方、「パルシステム連合会」は一昨年に、岩手県や山形県の休耕田を利用しての飼料用米の栽培を開始。豚肉の産直産地「ポークランドグループ」(秋田県小坂町)で飼料用米混合の飼料で豚を育て、昨年2月から「日本のこめ豚」として組合員への販売を始めた。
 「コープネット事業連合」も昨年5月、花巻農協(岩手県花巻市)など6団体と「飼料米による産直豚肉の取り組みに関する協定」を締結、年間6000頭分の豚肉の供給に乗り出した。組合員から名称を募集し、2月に商品名を「お米そだちのみのりぶた」に決定、4月に新発売する予定だ。
■黄身の色は薄く
 「東都生協」は昨年、日本初のユニークな試みとして、「牛さんにごはんをあげよう」と組合員にバケツでの飼料用米栽培を呼びかけ、牛乳を供給している畜産農家に届けた。
 さらに飼料用米を与えたた鶏の鶏卵の供給も始まっている。コープネット事業連合の「こめたまご」、パルシステム連合会の「トキワの玄米玉子」、東都生協の「産直えさ米たまご」などで、ほかの生協でも供給を計画している。
 黄身の色が薄いなどの特徴があり、まだ、「数量限定」「実験販売」のケースが多いが、組合員にはおおむね好評のようだ。
 こうした飼料用米の試みに政府も注目し、農林水産省は飼料用米の取り組みマニュアルなどを公表。政府は2月17日、飼料用米などの利用促進を目指した「米殻の新用途への利用の促進に関する法律案(米粉・エサ米法案)」を閣議決定し、国会に提出した。

生活クラブの生産者 食肉用鶏にも飼料米
国産鶏種で給餌試験開始

国産鶏種の「はりま」

 山形県遊佐町などとともに豚のえさとなる「飼料用米」の取り組みを先駆的に行っている「生活クラブ生協連合会」(東京・東新宿)は、鶏肉の生産者である「秋川牧園」(山口市)が2月から食肉用の鶏に飼料用米を与える給餌(きゅうじ)試験を始めたことを明らかにした。
 同連合会によると、秋川牧園は山口県の農業生産法人「船方総合農場」から飼料用米の供給を受け、従来のえさに約20%配合されている飼料穀物「マイロ」の半量の代替として使用。コメは粉砕せずにもみのまま給餌する。
 マイロも輸入に依存しており、トウモロコシの代替でなくても、飼料自給率の向上につながるとしている。 鶏は独立行政法人「家畜改良センター兵庫牧場」(兵庫県たつの市)で開発され、同連合会が供給している国産鶏種「はりま」。秋川牧園では、「はりま」8400羽に飼料用米をまぜたえさを与え、飼料用米が配合されていない「はりま」も同時に飼育し、飼育成績や肉質への影響を比較する。
 飼料用米で育てられた鶏肉は3月に出荷される見通しで、同連合会の「消費委員会」で試食と食味確認を実施、店舗と共同購入で組合員にも供給する予定。試験結果は、同連合会や生産者などでつくる「はりま振興協議会」で検証、肉質分析結果などが5月に「消費委員会」に報告されるという。
 同連合会の飼料用米の試みは遊佐町だけでなく、近隣の山形県酒田市にも拡大。宮城県色麻町の「JA加美よつば」や栃木県那須塩原市の「栃木県開拓農協」が参加、豚16万頭分の飼料用米の供給が実現した。また肉牛への飼料用米配合飼料の給餌が始まっているほか、会田共同養鶏組合(長野県松本市)などでは採卵鶏への給餌試験も始まっているという。
 開発部畜産担当の八巻賢二さんは同連合会のホームページで「肉用鶏の試験は、飼料用米の取り組み拡大を目標にしたものの第1歩。今後については見通せない部分もあるが、コメ育ちの鶏肉が広がる契機になる結果となることを期待している。飼料米をはじめとする自給飼料の取り組みは、国内資源の活用を通じた自給力の強化につながる」とコメントしている。

水田フル活用は農業の希望
加藤好一・生活クラブ生協連合会会長

 生活クラブ生協連合会の加藤好一会長は「飼料用米」について次のようなコメントを弊紙に寄せた。 

  私たちが取り組んだ飼料用米が注目されている。つい先ごろは中央畜産会の地域畜産振興部門最優秀賞も頂いた。こうした中で「米粉・エサ米法案」が国会に提出されるという。政治がともあれ、こういう取り組みを支援する姿勢を示したことは喜ばしい。
 飼料用米を成功に導くにはいくつかの課題がある。(1)(収量の上がる)超多収品種の実現(2)生産・流通コストの削減(3)消費者の理解(4)政策・制度による持続的な生産への支援─などだ。 どれも重要な課題だが、特に「政策・制度」の役割は大きい。飼料用米を取り巻く施策には不備が目立つ。食料自給力の向上に挑戦する生産者を、より勇気づける政策・制度の充実は不可欠である。しかし少しずつ改善と支援強化の動きが出てきてはいる。
 加えて、飼料用米や米粉など、米の多用途化の推進は、稲作経営の安定があってはじめて可能になる。この点の周知と政治の配慮も欠かせない。飼料用米をはじめとする水田フル活用は日本農望の希望である。