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2009年05月01日:コープソリューション

奪わない食、共に生きる地域(まち)─生活クラブ・東京 40年に思う

 1968年10月、東京・世田谷で1,026人の組合員により設立された生活クラブ生協。今年はそれから40年目を迎える。自分たちの生活に必要な品物を、自ら開発過程に関わりながら生産者とともに、納得してつくるという、徹底したものづくりの姿勢を貫き、組合員一人ひとりがよりよい暮らしを実現するための「協同」と「たすけあい」のしくみを築き上げてきた。今、東京の組合員は7万人に達している。その時々の暮らしの周りの課題に対し、解決策を示しながら共同購入運動を展開。その社会モデル化を目指している。
 3月、世田谷に完成した「生活クラブ館」からは、『40年を未来につなぐ新たな挑戦』が感じられる。吉田由美子理事長と元副理事長で現在、NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン理事長の近藤惠津子さんに40周年の思いを語ってもらった。

<対談>
─「生活クラブ館」からのメッセージ─
「事業と運動」はイコール─生活クラブ生協・東京 吉田由美子理事長
「『食農共有』の実践を」─NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン 近藤惠津子理事長

生活クラブ生協・東京 吉田由美子理事長

─創立から40年が経過しましたね。 
[吉田] 正直申しまして生活クラブがプライドを持って考えてきたこと、取り組んできたことが間違いじゃなかったと再確認しています。
 昨年から食の問題や経済システムの矛盾、企業の不祥事が次々と顕在化しているのをみると、さらに自分たちの目指す社会的な取り組みに力を入れていかなければならないと感じています。
─確かに市場万能主義の破綻や利己主義の間違いがはっきりしてきましたね。
[吉田] 私たちは生産者に要望を申し上げ、互いに納得できるモノづくりをしてきました。だから消費者である私たち自身も責任を持って食べてきました。
 消費者が要求だけをしてリスクを負わないことがまだまだまかり通っています。リスクを人に押しつける考え方で「安全・安心」は得られません。何を以って安全と考えて安心するのかを自分たちで考え、それを求める以上、伴うコストなども自分たちで負う、そういう責任を消費者も負わなければいけないと考えます。
 そういう意味では私たちが望む社会はまだ実現されていません。自分たちの力不足という面があるのも確かです。

NPO法人コミュニティスクール・まちデザイン 近藤惠津子理事長

─時代の変わり目だからこそ非営利・協同セクターへの期待が高まると思います。
[近藤] 私は現在、生活クラブの外に出てNPOの立場で、多彩なテーマの講座を実施するほか、食と環境のプログラムを作って、授業や講演をしていますが、多くの方々に支持を頂いています。これも生活クラブでの実践があったからこそ実現できたことと考えています。改めて自信を持って情報発信をしていきたいと思います。
 私の話を聞いて下さった方に、消費行動を少しでも変えて頂くだけでも大きな意味があると考えています。それを継続してもらうことや、その裾野を広げていくことができれば成果だと言えます。
[吉田] 多くの人に生活クラブの価値を見直して頂ける時期に来ているとも言えますね。
[近藤] NPOやワーカーズなどが、地域で自立できる働き場となることが課題ですね。まだまだその意味で経済的条件が整っていません。

生活クラブのコンセプトを発信する食とコミュニティの空間「生活クラブ館」

─90年代くらいから無関心、人任せの社会になりがちですね。
[吉田] 社会の問題を解決し、安心な社会にしていかなければ、よりよい暮らしは実現しないということに結びつけていくことが必要です。生活クラブでは事業と運動は一体です。
[近藤] モノを購入する行為を運動と関係付けることが重要ですね。個人的な行為を社会化していかなければなりません。 
 例えば私が取り組んでいます「食農共育(しょくのうともいく)」は、「食」と「農」に関わるすべての人びとが共に学びあい、育みあうことで食の問題を解決していこうというものです(食べることや作ることが楽しくなることが、関心につながる大切な第一歩だと考えています。

クッキングスタジオでの実演

─「生活クラブ館」は斬新さを感じますね。常設のクッキングスタジオ「BELLE」を備えた点が特に注目されます。
[近藤] クッキングスタジオのもともとの始まりは、私が副理事長をしていました時期(2001~04年)に提案しました「料理スクール構想」に遡ります。食を発信する「空間」と「人」を創出しようというものでした。その空間の一つが常設のクッキングスタジオです。それがようやく「生活クラブ館」の中に実現しました。そしてそこで講師を勤めるのは生活クラブが認定した「食のコンシェルジュ」。BELLEは組合員ではない方にも開かれた空間です。まさに「食農共育」を実践する場です。
[吉田] 構想の提案当時は確かにそれまでの生活クラブのイメージとは異なるもので慎重論もありましたね。しかし、「食のコンシェルジュ」養成講座への応募が当初予想を上回るなど、すぐに手応えを感じました。
 「生活クラブ館」は、私たちのいろいろな考え方やメッセージを発信するものにしたいと考え、デザインしました。
 40周年のテーマは「奪わない食・共に生きる地域(まち)」としました。
[近藤] 自信と確信があるからこそ思い切った表現が出来るのだと思います。

「生活クラブ館」─食とコミュニティの空間

 生活クラブ館は、地下1階・地上3階で、本部機能のほか、「デポーせたがや」、生活クラブ・クッキングスタジオ「BELLE」、子育て広場「ぶらんこ」、カフェ&ダイニング「素々(もともと)」などが入る。デポーでは、旬の魚がその朝に入荷する鮮魚売場、国産小麦を使用した天然酵母のパンを取り扱うベーカリー売場が特徴だ。ベーカリー売場はデポー事業では初めてとなる。