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2009年09月10日:コープニュース

《シリーズ・私と生協》喜代永真理子さん(福祉クラブ生協理事長)

自分のための仕組み作りができる生協

きよながまりこ

 この仕組みがあれば将来は安心
   理事長である以前に、サービスを提供するための働き手である。「今でも週1回は共同購入の配達をしていますし、食事サービスで厨房にも入っていますから、こんなところに火傷の跡もあります」と腕を見せてくれた。 福祉クラブ生協は、共同購入の配達時に、一人暮らしの高齢者の安否確認を行うなど、購買事業と福祉事業が結びついた全国でも珍しいタイプの生協。自分が住み慣れた地域で、お互いに助け合いながら暮らすためのシステムとして、生活クラブ神奈川から生まれ、今年20周年を迎えている。現在、デイサービスや入居施設サービスのほか、家事介護、食事、後見サポート、子育て支援など幅広い福祉事業を行っている。
  そのサービスを提供するのは、組合員の有志によって組織されるワーカーズコレクティブ(※、以下、ワーカーズ)という組織。例えば、家事ができる人同士が家事介護のワーカーズを結成して、掃除や洗濯ができない人のために、家事のサービスを行う。また、食事が必要な人のために、調理ができる人が集まり、調理して自宅まで届けるといったように、組合員ができることを、必要な人に提供しているのだ。その価格も、誰もが受けやすい「コミュニティ価格」(市場価格の3分の2くらい)。
  「現在、ワーカーズとして働いている人も、将来、家事や食事作りができなくなったときは、サービスを受ける側になれます。ですから、組合員には介護を受けている人もいますし、いずれは自分も介護が必要になると思って、今は活動するほうに回っている人もいます」
  そんな生協だからこそ、理事長であっても、喜代永さんは活動する。
  子どもが生まれた20代のころ、たまたま近所に生活クラブ神奈川の班があったので、組合員となり、班や委員会の活動に参加してきた。
  福祉クラブ生協に移ったのは15年前。この生協が自分にフィットしていると感じ、自分が住む地域にはまだ福祉クラブ生協が定着していなかったので、仕組みを作るところから参加することにした。
  「地方から、地縁も血縁もない横浜に出てきて、ずっとここで生活していくわけですから、福祉クラブ生協の仕組みがあれば、将来、安心できる。そして、今ならその仕組みを作る側に回れると思ったわけです」。
  そこでまず、30人の仲間を募集し、共同購入を担うワーカーズの「世話焼きワーカーズ」を結成。エリア内の住宅を一軒一軒訪ねて、「こんな生協があるので、入りませんか」と組合員を募集するとともに、週一回の共同購入のための配達を行なった。
  「配達のとき、安否確認が必要な人もいますし、届けたものを冷蔵庫に入れたり、注文書を代わりに書いてあげなければならない人もいます。そういう日常生活のお手伝いをするのが『世話焼きワーカーズ』です。利用者の相談に乗って、その話の中から、家事介護や食事サービス、外出時のサポート、子育て支援などの要望が増え、そのためのワーカーズをそれぞれ作ることで、組織も組合員も拡大してきました」 

 生協は生活者の生活用具
  現在、福祉クラプ生協には、「世話焼き」「家事介護」「食事サービス」「移動サービス(車による外出介護)」など83のワーカーズ組織がある。サービスエリアは、神奈川県下23の自治体・行政区に広がり、組合員は1万5000世帯を超えた。助け合いという考えは組合員に深く浸透し、デイサービスの施設とし組合員から住まなくなった家を提供されることもある。
  その過程で、喜代永さんも、ワーカーズとしていろいろな役割を担ってきた。家事介護で、父子家庭の子どもの面倒をみたり、母親が病気になった家庭で、子どもが学校に行けるようにサポートしたり。「私自身、子どもの幼稚園の送迎を近所の人に手伝ってもらうなど、地域で支えられてきました。そんな地域のつながりが希薄になっているので、福祉クラブ生協を通し地域のコミュニティ形成ができたら、住みやすくなると思い、続けてきたわけです」。
  ただし、組合員がすベてがワーカーズとして活動してるわけではない。何らかのワーカーズに参加するのは16~17%。今後はそれを20%ぐらいに上げていくのが、理事長としての役割だ。
  そのためにも強調したい点は、誰でも参加できることだ。
  「福祉クラブ生協が今あるのは、優秀なスーパーリーダーが引っ張ってきたわけではなく、普通の人が、自分のできることをやってきたからです。障害があっても、高齢でもワーカーズで活動している人がいます。実際に、75歳で食事サービスのために働いている人もいます。本来、協同組合は地域の生活者の生活用具です。組合員がほしいものを提供して、そのために組合員はできるだけワーカーズとして参加して、助け合いができる仕組みを作る。それが、自分の将来のためになる。そんな、自分のための生協作りができるところが福祉クラブ生協です」
  さらに今後は、子育て支援のためのワーカーズを充実させ、若い人が参加して、子育てを楽しめるようにすることが課題だ。
  個人的な目標は、倒れるまでワーカーズを続けること。
「たとえ足が動かなくなっても、手や□だけでも、やれることは見つけられます」

◎ワーカーズコレクティブ
   消費者運動や市民運動の参加者、生協の組合員などが、共同出資し、自らも労働者となって働く自主管理の事業体。リサイクルショップや、自然食レストラン、無農薬野菜の販売などの職種で、この形態がとられている。