メディア紹介

 メディア紹介一覧へ

2011年12月10日:農業協同組合新聞

生協の放射能対策─正しい「安全」理解に向けて

 原発事故発生から9ヵ月がたった。事故以降、放射能汚染は目に見えない数値として、特に農作物への影響を及ぼしている。
 先日は福島市と伊達市の一部地域のコメから、暫定規制値を超える放射能セシウムが検出された。こういった報道が重なるたびに、消費者の国産への信頼はゆらぎ、不安は募るばかりだ。しかし事故後、政府はあくまでも緊急時の基準とする「暫定基準値」を示すだけで、今日までその先の指針や対応は示してこなかったが、先月、ようやく現在の前提規制値を見直すと発表した。
 こうしたなかで、「国産」や「産直」に力を入れてきた生協は、独自に放射能問題に対応してきている。主な生協のこれまでと今後の取組みを紹介する。

生活クラブ 全品目で検査を実施

生活クラブ連合会が導入した測定器「Nal(T1)シンチレーションカウンター」 生活クラブ連合会では、委託による自主検査体制を拡充させるため、9月から2つのデリバリーセンターに食品放射能測定装置を1台ずつ導入し、全品目検査を始めた。結果はすべて組合員ニュースやホームページで随時公表している。
 生活クラブの基準値は国の定める暫定規制値に合わせている。暫定規制値以下の独自基準を設定した場合、万が一、国の暫定規制値以下であってもその独自基準を上回った生産者への損害や風評被害の発生などを考慮してのことだ。しかし、「決して国の基準が安全とは思っていない」。基準値だけを低くして組合員に安全性をアピールしても、いつ、どれだけの品目を網羅して検査されているのか、その中身が不明確な 「数値の一人歩き」では意味がない、というのが生活クラブの考えだ。
 11月からは品目ごとの検査頻度や優先品目を見直し、測定時間をこれまでの3倍とすることで、検出限界値50ベクレルを目標とした精密な検査を実施している。基準値は国と同じでも、「検査結果は暫定基準値の5分の1~10分の1以下の水準」となっている。
 今後は全品検査を続けながら検出限界地をさらに低くすることや、生産者段階、工場以前の段階で検査体制を行っていくことも検討している。

国民的議論の指標に

測定器の所定の体積に対して詰め込む検体量を少しでも大きくするため、検体は刻む・潰すなどの一次加工をほどこす。検出限界は「測定時間」と「検体重量」の両方に反比例するため 国民の信頼を得られるものとして機能していないのが現在の「暫定基準値」。「食品に含まれる放射性物質の規制値」はどうあるべきなのか─、11月21日、(株)大地を守る会、(株)カタログハウス、パルシステム、生活クラブ連合会の4団体が「食品と放射能問題検討共同テーブル」を開始した。公的基準の見直しを国任せにするのでなく国民自身の健全な議論に寄与していくことを目標として、共同で検討・提示していくというものだ。
 呼び掛け団体は大地を守る会。これまで被災地支援やフードマイレージ運動などで横の繋がりがあった4者は、原発事故後、それぞれ独自の基準の設定や対応をしてきた。ここではそれぞれの自主基準を統一していくというのではなく、「公的基準に物申していくことで一致」(生活クラブ連合会)している。「(4者の)共通認識は人体への影響の程度がいくつならよいという指標がないという今の現状。これを整理して社会に公表していきたい。もしそれが国の示した規制値と差異がある場合は提言や議論をしていくことも考えている。社会に発表することで国民的な議論を深めていきたい」(パルシステム広報部)としている。
 原発事故による放射能汚染と食の安全との関係については、さまざまな意見がある。国には現在の暫定規制値も含めて、科学的な根拠に基づいた検討をし、多くの生産者と消費者が納得できる指標の早急な提案が求められる。いくつかの数値だけが一人歩きするような事態は社会的な混乱や正常な農業生産への多大なリスクになりかねない。少なくとも国民が数値だけで「安全」を判断するのでなく、正しい理解と知識をもって判断できる体制づくりが重要だろう。