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2012年07月20日:JAグループ家の光協会「地上7月号」

生産者と積み上げてきた努力や成果が覆される

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会会長<br>加藤好一「TPP断固反対の道理」
日本のTPP(環太平洋連携協定)参加に反対する農業以外の分野との連携を深めるためのシリーズ6回め。

 生活クラブは生活協同組合の一つです。1965年、数百人の主婦が集まり「まとめ買いして安く分け合おう」と、牛乳の共同購入をきっかけに誕生しています。
 生活クラブ事業連合生活協同組合連合会は、全国の21都道府県で活動する33生協の事業連合組織です。
 食料品をはじめとする商品の開発、仕入れ、管理、流通、広報などを行っています。組合員数は約35万人でそのほとんどは女性です。

食の安全基準の緩和を許すな

 われわれは40年以上にもわたり、生産者との連携に努め、産地での交流を深めながら「国産」や「自給」にこだわった共同購入を続けています。
 安全性の観点から、食品の製造年月日表示の徹底、遺伝子組み換え食品への反対運動などに取り組んできました。
 輸入品や遺伝子組み換え食品と比べて割高な国産品の消費に、そうとうな努力を積み重ねてきたのです。
 しかし、原則としてすべての関税を撤廃し、例外を認めないTPPの仕組みは、われわれのこうした蓄積を一瞬で覆すものです。
 かつて日本では、食品の製造年月日表示が義務づけられていました。しかしそれは、ときには、輸入品は「古いもの」という印象を与えかねず、諸外国から見直しを求める意見が寄せられました。
 その結果、“国際規格”と合わせるという理由から、賞味期限や消費期限の期限表示に転換しています。
 転換した理由はそれだけではありませんが、TPPへの参加によってこうしたことが起こるのは目に見えています。
 アメリカはすでに、日本の消費者保護政策を、非関税障壁として批判しているといわれています。遺伝子組み換え食品をはじめとする食品の表示制度や、食品添加物、BSE(牛海綿状脳症)検査などの食品安全基準の緩和、あるいは廃止を強いられる可能性が懸念されます。
 これは、安全・安心でおいしい農畜産物を提供してくれる志の高い生産者だけでなく、国産品を積極的に求める消費者の努力をも打ち砕くものです。いま、われわれの役割、存在理由そのものが問われているのだと受け止めています。

食料自給率を低下させるな

 われわれは、70年代にいわゆる減反政策が始まった頃から、山形県の遊佐町にあるJAと提携し、米の共同購入を行ってきました。現在、同町で生産される約17万俵の米のうち、約10万俵を消費しています。
 2004年からは、同町の生産者、牧場、大学などと共同で休耕田や転作田を活用した「飼料用米プロジェクト」に取り組み、穀物飼料の自給率向上に貢献してきました。
 同町で生産した飼料米を豚に給与し、その豚肉を共同購入する。豚の糞尿は堆肥として活用しながら、循環型農業を実践してきたのです。
 この取り組みは、あくまで主食用米の生産とセットのもの。TPPへの参加で関税が撤廃されれば、安価な外国産米が市場に増え、国産の主食用米の出荷は厳しくなり生産量は減るでしょう。
 それと連動して、主食用米より価格が低い飼料米の生産量も減り、われわれの数十年にわたる産地との連携が壊されてしまいます。これは地域経済の後退にもつながります。
 日本が穀物飼料として依存しているアメリカ産トウモロコシは、今後、世界規模の食料需要やバイオ燃料の需要の高まりから、取り合いになることが予測されます。
 日本の食料自給率は、先行き不透明どころか、すでに危機的な状況だと言わざるをえません。

安売り競争に歯止めをかけろ

 TPPへの参加は、企業による低価格競争に拍車がかかる危険性もあります。たとえば、08年に“中国製冷凍ギョウザ中毒事件”が起こりました。
 生活クラブで扱う冷凍ギョウザの原料はすべて国産。一つ当たりの価格は約20円です。事件を起こしたギョウザは40個入り398円で販売され、一つ当たりの価格は約10円でした。しかもそれは、複雑な経路で流通し、中間マージンをかなり含んだうえでの価格だったようです。
 容疑者の男性は、冷凍ギョウザを製造していた食品会社に勤める、当時36歳の臨時社員。毎日午前8時から午後10時まで働き、月給は日本円で1万3600円。この低賃金が安価なギョウザの秘密です。彼は、正社員になれない不満から事件を起こしたと言われています。
 TPPは、経済のグローバル化をいっそう進めるものと言えます。それは企業の過酷な低価格競争につながり、安価な輸入品が国内市場を席巻する悪循環を生み出します。
 若者の雇用状況のさらなる悪化や劣悪な労働環境も招くことになるでしょう。

協同組合の本質を守れ

 TPPへの参加で、協同組合にたいする一般企業化の要求が強まることも、われわれにとっては重大な問題です。
 昨今、アメリカの保険会社が、日本での事業拡大をめざしているという話が聞こえてきます。実際、アメリカは10年、貿易障壁の報告書でJA共済などを批判しています。そこには、共済と一般の保険を同一視し、日本の協同組合から共済事業を分離しようとする思惑が見え隠れします。
 法改正により、生協の共済事業は単協とすでに分離されています。JAの共済事業も、TPPへの参加をきっかけに分離を強いられる可能性があります。
 協同組合がたいせつにしてきた理念や役割は、ぜったいに死守しなければなりません。協同組合陣営が一体となって、関係性をさらに強める必要があります。
 こうした理由から、われわれはTPPに断固反対し、各地で勉強会を開いたり、署名を集めたりしながら意思表示を行っています。

 

*『地上』平成24年7月号(社)家の光協会発行「TPP断固反対の道理」から転載