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2013年10月30日:朝日新聞(山形版)

遊佐町、土地購入の方針

◇鳥海山麓岩石採取 業者所有地

鳥海山のふもとの森林をくりぬいたように褐色の部分が目立つ採石現場(遊佐町)【岡田和彦】鳥海山麓(さん・ろく)での新たな岩石採取について、湧水(ゆう・すい)保護や景観保全などの観点から地元住民らが反対している問題で、遊佐町の時田博機町長は、秋田県にかほ市の業者が所有する土地約50ヘクタールを購入する方針を固め、31日の町議会全員協議会に提案する。時田町長は「町有化は、これ以上採石させないための現実的判断」とするが、住民らは「さんざん掘り荒らした業者の土地を町が購入するのは納得いかない」と反発している。

◆町長 「止める現実的判断」
◆農業団体 「採石させぬ確約を」

 岩石採取事業は9月12日で認可が切れた。業者は7月に県に再申請を出し、審査中だ。事業計画によると、採石するのは臂曲(ひじ・まがり)地区で、面積は3年前の計画と同じ約9ヘクタール。掘削面は標高320メートル以上で、安山岩約33万トンを採取する予定。
 業者は8月の町民説明会で、過去3年の岩石採取量は計画の7・3%程度にとどまったため、事業を継続したいとしたが、町民らは「鳥海山は町の宝。今でも採石された傷痕がくっきり見える」と反発。さらに「これ以上の掘削は湧き水の源になる地下水脈が変化したり、有害物質が混入したりする恐れがあり、簡易水道や農業用水にも影響が出る」と心配する。町民らは、町内で集めた約1万500人の署名と、遊佐町の農産物を共同購入している全国の生活クラブ生協組合員の約4万6千人の署名を、7月に県知事に提出。県が採石事業の再申請を認めないように要請している。
問題になっている鳥海山のふもとの採石場(遊佐町) 一方、遊佐町は、新たな岩石採取について結ぶ業者との協定に付帯して、「土地の公有地化に協力する」などの覚書も締結する方針で、業者側も前向きに検討しているという。
 時田町長は「採石法上、業者が申請すれば、町が反対しても県は認めざるをえない状況だ。国に法改正を何度もお願いしたが、だめだった」という。「採石を止めるには町で購入するしかない。町環境審議会にも説明し、一定の理解を得ている。議会で了解していただければ、買い取り交渉を進めたい」と話す。
 一方、採石に反対する農業団体などは「町が提案する協定では、業者はしばらく岩石を掘り続けられる。採石をしないという確約を取らなければ、町が購入の意思を示してもなにもならない」と危惧する。
 この業者は、鳥海国定公園内の同町女鹿地区の採石現場で、地下2メートルまでしか採石が認められていない自然公園法に違反し、地下8メートルまで掘り進めていたことが8月の県の調査によって判明。現在、処分が検討されている。昨年にも違法行為で行政指導を受けた。

◆岩石採取の認可基準

 採石法第33条の4で、都道府県知事が採石の申請を許可してはならない場合を規定。「岩石の採取が他人に危害を及ぼし、公共の用に供する施設を損傷し、又(また)は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反すると認めるとき」としている。