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2013年12月04日:毎日新聞

生協の脱原発、着々と

 日本生協連(東京都渋谷区)が「原子力発電に頼らない社会」を目標に掲げ、再生可能エネルギーの導入促進を決めてから、来年1月で2年になる。同生協連は全国138の地域生協が加盟し、総計約2兆5493億円の供給高(企業なら売上高に相当)を誇る巨大な事業体でもあり、その新たな社会づくりへの挑戦は注目される。現状と課題を取材した。

●好調な太陽光発電

 同生協連の中で現在、最大の発電を行っているのが、大阪いずみ市民生協(堺市)だ。大阪府和泉市内2ヵ所に出力計2326キロワットの太陽光発電設備を設け、昨年11月から運用を開始している。
 この1年間の稼働実績は280.4万キロワット時と目標を29.7%も上回った。一般家庭の年間電力使用量を4600キロワット時とすると、約610軒分に相当。大阪いずみ市民生協の年間電力使用量は約2500万キロワット時で、その約11%をまかなえたことになる。浜田善男参与は「今年は猛暑が幸いしたのか、思った以上の成績で、びっくりしています。初年度ではありますが、メンテナンスもほとんど不要でした。何はともあれ、必要な電力の1割以上を自前で作れたことの意味は重くありませんか」と満面の笑みを浮かべた。
 設備の初期投資費用は2カ所で計約5億7000万円だった。今後のメンテナンス費を含め9年間で回収する計画だが、この調子でいけば回収完了時期は早まりそうだ。さらに設備の耐用年数は20年とみており、初期投資回収後は利益が出てくる。浜田参与は 「単純にいえば、うちでは物流センターの屋根に太陽光発電パネルを載せただけ。それが経済的に成り立つことが証明できれば、社会的な普及の弾みになるはず」と語った。

●目標の2割近くに

 日本生協連は2020年までに、全国各地の生協が使用する電力の2割となる10万キロワットの設備容量の整備を目指している。中間目標として15年までに5万キロワットの整備を掲げる。今夏までに各地の生協の40力所以上で太陽光発電設備が稼働し、風力発電も1力所で運転を始めた。情報を収集中だが、今夏時点で計1.5万~2万キロワットの能力を獲得したとみている。
 二村睦子環境事業推進部長は「本格的に事業が動き出しだのが昨年秋なので、1年の実績としてはかなり健闘したと思う。コープこうべの太陽光発電設備6ヵ所(出力計2027キロワット)が今年10月から徐々に始動するなど、進行中の計画が数カ所であり、このままの形で発電量はもう少し伸ばせます」と、まずは順調な船出を喜んだ。

●風力なども拡大ヘ

 一方で、新たな発電形態に進んでいかないと5万キロワットの中間目標に届かないと考えている。現在は物流センターなど大きな施設の広い屋根にパネルを載せての発電が中心だが、「最も載せやすい場所は、かなり整備が済んだ」(二村部長)からだ。都市部の店舗などでの太陽光発電パネルの設置は案外、簡単ではない。太陽光発電に熱心な大阪いずみ市民生協でも、吉峰和彦開発部長は「付近の建物への光の反射など、配慮しなくてはならない問題が多い。今のところ実施予定はありません」と述べた。
 このため日本生協連では風力、バイオマス、地域の用水路などを活用した小水力発電も研究する。先行的なプロジェクトとしては、東京▽神奈川▽埼玉▽千葉の生活クラブ生協が共同で秋田県にかほ市で風車を12年3月に建設し、風力発電に乗り出している。
 バイオマス発電関連では、コープさっぽろが昨年12月、店から出る食品廃棄物と酪農による牛ふんなどを混ぜてメタンガスを製造する施設を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で設立し研究中だ。ガス製造自体の採算性は現状では厳しいが、ごみ処理問題に有効などの優れた点があり、循環型社会の実現を見据えた有効性の向上を図っていくという。
 二村部長は「生協は地域密着型なので、各地の地域特性を生かした新電力を地元とともに考えていける。その利点を生かして次の有効な発電の形を見つけたい」と語った。日本生協連では、発電とは別にエネルギー管理システムの導入による省エネの促進にも力を入れる。営利を目的としない消費者団体ならではの果敢な脱原発依存の試みが続く。

  【戸田栄】