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<災害情報・第17報>重茂の復興は始まった

生活クラブ生協岩手・理事長 熊谷由紀子

熊谷由紀子さん

 大津波が三陸海岸を襲ったとき生活クラブのだれもが心配した生産者の一つである重茂漁業協同組合。宮古湾から太平洋に突き出たような重茂半島は、あの大津波から生き残れたのか?誰もが不安に駆られました。その様子は第9報でもお伝えしましたが、今回は、初期の段階から連日のように提携生産者や被災地を走り回っていらっしゃる熊谷理事長から報告をいただきました。3/28に支援物資を重茂に届けたときの報告です。

 

「重茂の住民は重茂にとどめる」―全組合員雇用で人口流出をふせぐ

飯能デリバリーセンター

 重茂は漁協として凄い決断をしました。何と漁協の組合員全員を臨時雇用し、最低金額であったとしても、その生活費を支える決断です。今回の震災でほとんどの漁協が壊滅的な被害を受け、それは企業も同じです。「従業員解雇」―これは冷たい言葉に感じますが、失業保険を受給できるためのやむない処置で、ほとんどの事業所がこの路線です。高橋徳治商店もこの決断を迫られています。高橋英雄社長としては解雇しないで頑張りたい気持ちは強いのですが、何も生産活動をしないでも、会社として社会保険料などの公的な負担までしなくてはならないからです。そんな工場や社屋が壊滅的な打撃を受けたいま、会社としてその負担にはとても耐えられません。
そんな状況のなかで重茂の決断は凄い。凄すぎる。それは漁民である重茂漁協の組合員が漁にも出られず、ほとんど失業にあるから雇用し、重茂から離れさせない、一人として離脱者を出さない決断です。いま三陸一帯の地域では、港や生産施設が復旧するまでは出稼ぎに出るという話が、当たり前に出てきています。その一方で重茂だけは、「住民総がかりで重茂を守ろう。みんなが助け合わないとこの苦難は乗り切れない。誰も得や損がないよう、平等に持っている資産で食いつなごう!!」 こんな決断です。これは凄い。
鮭の孵化場の近くにあった「協同の力で理想の重茂をつくろう」という看板は津波で跡形もなく流されました。でも、看板は流されても、その心は生き続け更に強くなった事を感じます。生活クラブが果たしてこれほどの決断をできるのか?? 自分に問いかけるだけです。

生産活動の第一歩を踏み出した

重茂の「天然わかめ」

 被災からまだ一カ月未満。何と、生産活動を再開させる計画と準備が始まりました。その手始めが「天然ワカメ」です。天然のワカメはあの巨大なエネルギーにも負けず、たくましく行き続けているそうです。皮肉にも普段よりも高い品質になっているそうです。津波の影響で。 
ただこれには乗り越えなくてはいけない壁が。900艘のサッパ船(小さな漁船)が全て流されました。重茂にはサッパ船がありません。これを全国から集める手配が始まりました。船さえ手に入ればそこは慣れたもの。もしかすると重茂の「天然ワカメ」が共同購入にのるかもしれません。 
そして巨大なクレーン船をいち早く重茂は押さえました。時間が経てばこのクレーン船は取り合いになります。何しろ少ない台数なので。これで定置網の基礎を整備し、天然ワカメに次いで定置網漁を開始したい考えです。できれば秋サバの9月頃、遅くとも秋鮭の11月頃を目指すと言ってます。幸いにも重茂の定置網漁は1月から4月まで休漁しています。つまり何億円もする網は健在との事。基礎を修復すれば定置網はできます。ただ、定置で揚がった魚は宮古市場に出荷していました。ここの再開など多分目処が立たないでしょう。どこか他まで長距離を運ぶ覚悟だと思いました。定置網1基は3億円ぐらいかかると聞いてます。そのうち基礎がどれほどかはわかりませんが、多分、借金してでもこれを早く回復し、長い年月をかけて返す。こんな考えだと感じました。

津波被害を受けた重茂漁港の施設

 次には太平洋のど真ん中に設置する「養殖のワカメ、昆布」施設の復旧です。何十トンもするテトラポットのような基礎を数多く置き、そこにロープを張ってワカメと昆布を定植します。基礎さえできれば再開は難しくはないのでしょうが、その基礎づくりが困難だと思います。昨年のチリ津波で三陸の養殖施設は大きな被害を受けました。これらは波が穏やかな湾の施設です。基礎が脆弱だから流されました。その時重茂のワカメ施設はビクともしませんでした。被害ゼロです。

肉厚わかめと茎わかめ

 その当時、伊藤組合長いわく「重茂の施設は他所と比べると何十倍もの施設費を使っている。あの程度の津波なんて大丈夫だ!!」と。
でも、さすがに強固な施設も今回は負けたようです。基礎を探して一つひとつ置きなおすのか、それとも新しいものを設置するかまではわかりませんが、これを早急に行い、秋の(11月頃)にはワカメと昆布の定植(野菜と同じでロープに植えます)を一部であっても行いたい。こんな構想です。
もし、それができたら来年の1月には一部の単協でもご存知の「早採りワカメ」が実現するのではないでしょうか。生産量などの関係で、生活クラブに回ってくるかは本当に未定ですが、4年続けた岩手の取り組みを中断したくない想いが膨らみました。そして3月には私たちの「肉厚ワカメ」の収穫です。それをボイルし塩蔵し、茎などを抜いてあの荷姿になります。今年のワカメは収穫途中でやられましたが、来年には生産再開第一号が私たちの手元に届くかもしれません。嬉しいかぎりです。

震災前の重茂漁港

 

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