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食品安全委員会「放射性物質の食品健康影響評価審議結果(案)」についてパブリックコメントを提出しました

 2011年3月11日に発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所の重大事故による放射能汚染問題を受け、政府は緊急対策として、飲食物の摂取制限に関する放射性物質の暫定規制値を3月17日に定めました。食品健康影響評価を受けずに定めたことから“暫定”とされ、内閣府・食品安全委員会での食品健康影響評価の実施が課題とされました。同委員会は3月29日に「放射性物質に関する緊急とりまとめ」を発表し、暫定規制値について「緊急時の対応として(中略)十分な安全性を見込んだもの」といったん評価しましたが、「詳細な検討は行なえていない」として検討を継続することとしました。この懸案に応えるために、食品安全委員会の「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ」は、2011年7月26日に「評価書(案) 食品中に含まれる放射性物質」をとりまとめました。

 この評価書(案)に対して、(1)飲食物の摂取制限に関する放射性物質の暫定規制値について早急に具体的に評価し直すこと、(2)暫定規制値を評価し直すにあたってはリスクをより低減する観点から検討すること、の二点を求め、生活クラブ連合会は8月26日に以下のとおりパブリックコメントを提出しました。

2011年8月26日

放射性物質の食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見

生活クラブ事業連合生活協同組合連合会

(1)飲食物の摂取制限に関する放射性物質の暫定規制値について、早急に具体的に評価し直すことを求めます。

1.規制値を検討する出発点として累積実効線量の上限を示すことは必要であり、その意味では評価します。
 「評価書(案) 食品中に含まれる放射性物質」(以下、「評価書(案)」)は、「放射線による影響が見いだされているのは、通常の一般生活において受ける放射線量を除いた生涯における累積の実効線量として、おおよそ100 mSv以上と判断した。」(※1)と結論しています。すなわち、今回の事故等により追加して被曝する生涯の累積実効線量(外部被曝+内部被曝)の上限の目安を示しました。
 これまで、トータルな(外部被曝+内部被曝)被曝限度を明らかにしないまま、各省庁がバラバラに基準を示してきたこと(※2)を考えれば、生涯被曝のシーリング(上限)を示すことは、規制値を検討する出発点としては必要であり、その意味においては評価します。(具体的に示された値については(2)で後述します。)

2.食品安全委員会は、求められた役割を果たすために、暫定規制値を早急に具体的に評価し直すべきです。
 しかし、評価書(案)は、「評価結果に基づいて(中略)リスク管理を行う場合には、本評価結果が、通常の一般生活において受ける放射線量を除いた生涯における累積線量で示されていることを考慮し、食品からの放射性物質の検出状況、日本人の食品摂取の実態等を踏まえて、管理を行うべきである。」(※3)と述べています。すなわち、暫定規制値を具体的に評価し直す検討は行なわずに、暫定規制値と累積実効線量の上限との関係整理を厚生労働省に預けたため、問題が先送りされました。
 食品安全委員会に求められた任務は、飲食物の摂取制限に関する放射性物質の暫定規制値を具体的に評価し直すことです。評価書(案)は、内部被曝に関して現在得られている知見が少ないことを理由に、その役割を果たしていません。
 このままでは、各省庁の混乱と検討の遅延は明らかであり、暫定規制値の見直しが進まない恐れがあることを憂慮します。
 生涯の累積実効線量限度を外部被曝限度と内部被曝限度に振り分け、さらに内部被曝限度を食品群別・核種別の単年の規制値に振り分け、乳幼児・胎児や外部被曝リスクの高い汚染地域などハイリスクとされる対象向けも含め、暫定規制値を具体的に評価し直す一連の検討作業を、食品安全委員会は早急に行なうべきです。

(2)暫定規制値を評価し直すにあたっては、リスクをより低減する観点から検討することを求めます。

1.検討にあたり、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の2010年勧告も参照してください。
  評価書(案)は、過去の知見等について200頁余を割いて数多くレビューしたうえで、ICRP(国際放射線防護委員会)やWHO(国連・世界保健機関)等いくつかの国際的評価を参照(※4)しています。しかし、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の2010年勧告「低線量電離放射線被曝の健康影響」(※5)について、本文中で一切言及が見られません。同勧告は、暫定規制値の根拠とされたICRPが示すリスクモデル(※6)について、内部被曝に関する近年の疫学的知見を反映できていないとして、より厳しい指標(※7)を示しています。暫定規制値を評価し直すにあたっては、同勧告も参照したうえで、発ガン等の晩発性障害リスクに関して閾値(しきいち)はないという予防原則の視点にもとづき、リスクをより低減する観点から検討すべきです。

2.リスクをより低減する観点から、現在の暫定規制値の見直しを厚生労働省に勧告してください。
  「累積実効線量おおよそ100 mSv以上」についてコメントします。
国際的評価も異なる状況のなか、100 mSvという値が妥当かどうかについては、現在、私たちは判断し得ません。しかし、よりリスクを低減する観点から、この値にもとづいて現在の暫定規制値について具体的に検討・評価し、その見直しを食品安全委員会から厚生労働省に勧告することは、以下のとおり可能であり、急ぎ必要であると考えます。

3.高い汚染が見られる地域の住民については、乳幼児・胎児と同様にハイリスクな対象として検討してください。
  今後の除染対策の効果にもよりますが、原発事故の被災地周辺は避難区域外でも、外部被曝だけで累積実効線量100 mSvを超過してしまう恐れがあります。また、周辺以外のいわゆるホットスポットと呼ばれる地域でも、外部被曝だけでこの値の大半を占めてしまう恐れがあるといえます。高い汚染が見られる地域の住民については、乳幼児・胎児と同様にハイリスクな対象としてとらえ、内部被曝を極力抑えていく必要性が導かれます。よって、現在の暫定規制値計17 mSv/年(※8)を迅速かつより厳しく見直すべきという評価を示せるはずです。

4.リスク管理機関が有事と平時の基準を切り分ける場合でも、暫定規制値をより厳しく見直す方向で行なうべきという評価を示してください。
 一方、それ以外の地域においては、例えば累積の外部被曝が20 mSv前後の場合(※9)、累積実効線量の上限を100 mSvとすると、累積の内部被曝は80 mSv前後が上限となります。仮に寿命80年としてこれを均等割りした場合、ICRPが示す平時の公衆の限度レベル1 mSv/年と同じとなるので、現在の暫定規制値をより厳しく見直すべきという評価を導けなくはありません。しかし、評価書(案)本文中には言及がありませんが、その付属資料の「概要」にあるイメージグラフ(※10)のとおり、リスク管理機関が規制値を均等割りではなく年毎に傾斜配分(※11)することを、評価書(案)は暗黙の前提としていると思われます。事故後“当面”の間、暫定規制値を継続したり、場合によっては暫定規制値を緩和する根拠を、リスク管理機関に与えかねない恐れがあります。平時とは呼べない汚染の実態から、リスク管理機関が有事と平時の基準を切り分けることはやむをえない面があると考えますが、その場合であっても、暫定規制値をより厳しく見直す方向で行なうべきという評価は示すべきです。
以上

(※1):評価書(案)/「要約」9頁、「ⅩⅢ.食品健康影響評価」222頁
(※2):例:厚生労働省が定めた飲食物の摂取制限に関する放射性物質の暫定規制値、文部科学省が定めた校庭等の使用に関する暫定基準値
(※3):評価書(案)/「XIV.その他の考慮すべき事項」225頁
(※4):評価書(案)/「ⅩⅡ.国際機関の評価等」217~219頁
(※5):2010 Recommendation of the ECRR / The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionising Radiation
(※6):「事故後最初の1年間における摂取制限介入レベル:上限50~下限5mSv/年」、「摂取制限介入レベル:10mSv/年・核種」、「平時:公衆1 mSv/年」
(※7):「公衆0.1 mSv/年以下、原子力産業労働者2 mSv/年」
(※8):放射性ヨウ素2 mSv/年+放射性セシウム(放射性ストロンチウム含む)5 mSv/年+ウラン5 mSv/年+プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種5 mSv/年、(放射性ヨウ素については、甲状腺等価線量50 mSv/年=実効線量2 mSv/年とされている。)
(※9):例えば東京都区内では、空間線量0.05μs/h=0.44ms/年の場合、80年間累積で約13ms。茨城県水戸市では、空間線量0.08μs/h=0.70ms/年の場合、80年間累積で約21ms。ただし、この試算は、事故初期のより高い線量値は含まず、また、終日室外にいること、今後の追加汚染がないものと前提し、除染効果を反映せず、2011年8月現在の平均空間線量値をもとに、複数核種を無視してセシウム137の半減期30年を適用して算出したものであり、正確ではない。
(※10):評価書(案)概要/2頁「生涯の追加の累積線量がおおよそ100 mSvのイメージ」
(※11):事故直後の規制値は高めに設定し、年を追って徐々に規制値を低くしていく配分方法。

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