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検査数が多いのは「バリュー(価値)」です

9月より毎週530前後の消費材を測定し公表する生活クラブの放射能検査。
ブログやツイッターなどで放射能検査について提言する三重大学生物資源学部の勝川俊雄准教授に、生活クラブの検査についてアドバイスをいただきました。

消費者側に立った放射能検査には意義が

 私はふだん水産資源管理と資源解析の研究をしています。放射能は専門外ですが、あまりに情報が無いので、見るに見かねてウェブ上などで情報を発信しています。
 私から見るといまの行政の放射能検査は、非常に“まばら”です。検出限界が低いので一見、厳密な検査をしているように思えますが、検査対象に大きな偏りがあります。今年の10月までに行われた検査は2万6000件ですが、そのうち1万件が牛肉、米が2700件、ほうれん草が1000件です。この3品目だけで全体の半分を占めています。逆に、これまで調査が3件以下の品目が半数以上となっています。
 このような検査で「安全」と言われてもにわかに信じにくいものがあります。そして、消費者はこのような行政の姿勢を見抜いています。ですから消費者サイドから消費者目線で、独立した放射能検査が必要だと思います。生活クラブが独自に検査する意味はここにあると思います。
 食品の放射能の問題は、トータルで摂取する放射能を抑えることが課題です。国は暫定規制値を定めたのならば、それ以上のものは絶対に流通さないという体制をつくらないと無責任です。
 しかし、それが現在できているかというと、ぜんぜんできていない。行政の少ない放射能検査数の脇で、汚染している食品がすり抜ける恐れがあると思います。そうなると一番困るのは子どもやこれから生まれる“未来の人”たちです。気がついたらいっぱい食べていたということになりかねません。
 私は現時点では、どちらかといえば検出限界を下げるより、検査数を増やすほうが重要だと思っています。それも特定のものだけ調べるのではなく、できるだけ多種類の食品を調べるべきです。
 行政の放射能検査が少ないなかで、生活クラブが毎週530検体という多くの検査を実施しているのはひとつの「バリュー(価値)」だと思います。

検査と公表の積み重ねが信用をつくる

 検査を継続するなかで「不検出」が続く食品があれば検査の頻度を下げる。逆に継続的にたとえば100ベクレル/kgを超える数値が出る食品があれば検査数を増やすなど、測定しながら方法を見直していくのがよいでしょう。
 また生産が均一なもの、たとえばシーズンパックのものなど生産者が同一で、同じ時期につくられた食品から減らしていくことも考えられます。一方で水産物のように同じ場所でとっても日によって群れが違うもののように、生産が不均一なものは検査を継続する必要があると思います。当然、これまで不検出だからといって検査しなくなるのではなく頻度を減らす。そして、また検出されたら考え直すのです。このような検査を続けていけば放射能が検出される傾向が分かってくると思います。
 行政の検査を信用しない消費者も少なくありません。生産者サイドの独自の放射能検査の需要はあります。そして都合の悪い結果も含めてすべての結果を公開していくことが重要です。生産者や事業者にとって情報を出し続ける積み重ねは、長期的にみれば大きな財産になると思うし、そういう実績があればこそ「安全」と言ったときに消費者ははじめて信用するのだと思います。

 


勝川俊雄さん
三重大学生物資源学部准教授(水産資源管理と資源解析)
1972年東京生まれ。東京大学農学生命科学研究科にて博士号取得。東京大学海洋研究所助教を経て現職。研究の傍ら、政策提言のほか、漁業者や消費者とともに持続可能な水産資源管理や漁業の制度改革に向けて活動を行う。著書に『日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる―』(NHK出版新書)、監訳に『魚のいない海』(フィリップ・キュリー/イヴ・ミズレー著、林昌宏訳、NTT出版)。
また、「長いものには、巻かれません」とする自身の公式サイトやツイッターで、放射能問題に関する情報発信をしている。
「生活と自治」12月号では「日本漁業・被災地からの復興」についてのインタビュー記事が掲載される予定。


勝川俊雄公式サイト http://katukawa.com/
勝川俊雄 (@katukawa) on Twitter
http://twitter.com/#!/katukawa
 

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