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牛乳まるごと 「スーパー・プレミアム」 新生酪農(株) ■提携先  ■提携品目 

文/宮下 睦  撮影/永野佳世  生活と自治2014年7月号掲載

子どもが大好きなアイスクリーム。おいしさはもちろん、何より安心できるものであってほしい。日本の酪農が厳しい経営環境に置かれるなか、新生酪農では新たな試みをすすめる。

 

酪農家指定のアイス

新生酪農品質管理部長の岩瀬尚哉さん 市販のアイスには商品名やパッケージから牧場を連想させるものが多い。しかし「牧場が特定でき、原乳の由来がわかるアイスクリームはほぼありません」と生活クラブの乳製品を生産する新生酪農品質管理部長の岩瀬尚哉(ひさや)さん。生乳販売の仕事に携わった経験をもつ岩瀬さんによれば、かつて酪農家は地域の牛乳工場に原乳を納めていたが、搾乳量と工場の需要が常に釣り合わず負担が大きいため、現在では販売団体が一括して集乳し複数の販売先に売る形(一元集荷多元販売)が定着している。このため今日は茨城、明日は群馬と牛乳工場には複数産地の原乳が時々に応じて納品されることになる。
 さらに、輸送コストを下げるため、酪農家から集められた原乳は集積所で大型車に積み替えられる。その時点でまざってしまい、どこの産地の原乳かはまったくわからなくなることもある。
 一万、新生酪農が扱う原乳は、工場周辺の生産者団体「新生酪農クラブ」のものに限定される。「えさは遺伝子組み換え対策済み(NON-GM)を使い、牛の健康にも気を遣った良質な原乳です」と岩瀬さん。せっかくていねいに牛を育て、搾った原乳だからこそ、原乳を丸ごと食べる工夫を欠かさない。ヨーグルトをつくるために原乳から脂肪分を抜き、そのクリームでアイスをつくるというように、セットで考えることを常とする。

「乳製品」表示の理由

 市販のバニラアイスクリームの原料表示を見比べると「乳製品」と一括されているものが多い。
 「記載スペースが足りずそう表示する場合もありますが、何より工場にとってその表示はすごく便利なんです」と岩瀬さんは言う。クリームがないときはバターを使えばよく、脱脂粉乳を使うこともある。味への影響は否定できないが、香料を多めに入れればわからない。「乳製品と書いておけば原料不足のときに輸入品でも対応できます。だからメーカーでは決して商品を切らすことはないんです」
 バターと脱脂粉乳の緊急輸入が報じられたのは今年5月。1995年に乳製品の輸入が始まって以来、過去最大の規模だという。酪農家の廃業が相次ぎ、牛乳の国内生産量の減少に歯止めがかからないことが最大の要因だ。
 今、日本の原乳の約半分は北海道で生産され、大部分は乳製品の原料になる。
 だが、環太平洋連携協定(TPP)が締結されれば、海外から輸入される安価な乳製品にとって代わられる可能性は高い。
 そうなると、今、乳製品に使われている北海道産原乳が生乳として本州に出回り、最終的には本州の酪農家が壊滅的打撃を受けることが予測される。
 「それでも当社の牛乳やアイスクリームは、酪農クラブの生産者の原乳でしかつくれません。えさや飼育環境にこだわったものがほしいという人が利用し続けてさえくれれば健全な近郊酪農は存続できますよ」と岩瀬さんは訴える。

生活クラブ連合会調べ(*価格は2014年5月末の税込み。編集室で調査のため購入した際の店頭価格)
*アイスクリーム類は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の量によってアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類される。
*乳固形分、乳脂肪分ともに一番多いのがアイスクリーム、次がアイスミルク、一番少ないのがラクトアイス。

健康な牛から生まれる安心

 とはいえ、この間、新生酪農の牛乳・乳製品の利用量は減少傾向にある。酪農クラブでは毎日24トンの原乳を生産するが、新生酪農が必要とする量は年々減り、今では10トンになってしまった。残りは生乳販売団体を通して外部に売却される。せっかくコストをかけて牛を育てても他と同じ扱いでは作り続けることは難しい。やむなくえさを切り替えた酪農家もいる。
 そうしたなか、新生酪農クラブの若手酪農家、伊藤裕介さんは、NON-GMのえさを使い続ける。「遺伝子組み換え(GM)のえさなら確かにコストは下がります。が、それに疑問を持つ生活クラブの組合員がいてくれるから安定して購入してもらえると信じています。この牛乳をほしい人がいる限りできることはしたい」と語る。
 今、国内の酪農家はコストカットを迫られ、乳牛の健康や乳質を気にする余裕がなくなっているところも少なくないと新生酪農の岩瀬さん。
 しかし、伊藤さんは、目先の利益より牛の健康を考えるほうが、長い目で見れば酪農経営はうまくいく、が持論。無理をさせれば牛は病気にもなるし乳量も減るという。「病気の牛の乳なんて誰も飲みたくないでしょう? 牛たちも命を削って乳をだしてくれているんだから、できるだけいい環境で飼ってあげたい」と健康な牛による良質な原乳づくりを目指す。


◆広がる利用層 200mlびんと500ml紙パックに手応えあり

びん牛乳製造ライン 牛乳・乳製品の利用者をさらに広げ、健全な国内の近郊酪農を支えようと、生活クラブでは「第7次牛乳政策」を策定、2012年度から容量と品目のバラエティー化を進めている。
 その一例が、200ミリリットルのびん入りと500ミリリットルの紙パック入り牛乳の導入だ。200ミリリットルびんは、生活クラブ東京と福祉クラブで昨年から配達が始まり、紙パックは、東京、神奈川、干葉にあるデポー(店舗)におかれている。
 当初は、容量の多様化で900ミリリットルびんの利用者が減るのではないかと心配されたが、900ミリリットルびんの利用者数に大きな減少はみられず、今後、干葉や神奈川など首都圏の単協を中心に取り組みを広げていく予定だ。
 「やはり、量が多くて飲みきれなかった人、重くてデポーから持って帰れなかった人たちが利用できるようになったのでしょうね。これまで利用できなかった人に届いているということは実験として成功です」と新生酪農品質管理部長の岩瀬尚哉さん。
 「第7次牛乳政策は、いろいろな形で近郊指定農家の牛乳を食すための試みです」として、今後、さらにバラエティー豊かな新規品の開発を計画している。アイスクリーム類では、塩バ二ラジェラートや温州みかんジェラート、乳製品では紙パックのいちごミルク、ミルクティーなどが現在予定されているラインアップ。さらに今後は、チーズの多様化なども検討していきたいと岩瀬さんは意欲的に話す。
     
新登場の200ミリリットルびん入りと500ミリリットル紙パック入り【アイスクリーム・あれこれ】

*オーバーラン30%のプレミアム

 アイスクリ-ムは、なめらかでソフトな口当たりにするため、空気を含ませる工程が欠かせない。この空気の混入割合がオーバーラン。 1リットルの原材料に1リットルの空気を混ぜると2リットルのアイスクリームができ、その場合、オーバーランは100%となる。通常、市販のアイスクリームのオ一バーランは60~100%で、高級品質といわれるものでも30~40%だが、新生酪農のスーパープレミアムバニラは25~30%。あっさりした口当たりの中にも濃厚なうま味が感じられる。

*鶏卵アレルギーの人でも大丈夫

 生活クラブのバ二ラアイスクリームは、牛乳のおいしさをそのまま味わうことを開発コンセプトとし、鶏卵は一切使用しない。 1日1種類の製造なので異物混入の心配もなく、鶏卵アレルギーの人でも大丈夫。ほんのり感じられる、牛乳本来の甘みを味わってほしい。

*おいしい食べ方

 岩瀬さんのおすすめは、コーヒーアフォガード。コーヒーを濃いめに入れて、盛りつけたバニラアイスの上にかけるだけ。クッキーなどを飾ればおもてなしにも最適。手軽でおいしいデザートが楽しめる。

 

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