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聞けてうれしい「たまご」の話  ■提携先 (株)生活クラブたまご ■提携品目 

文/山田 衛  撮影/田嶋雅巳  生活と自治2016年8月号掲載

「薄黄色の卵を使った卵料理はおいしそうじゃない」とおっしゃるアナタ。鶏卵の黄身の色が鮮やかなオレンジ色や黄色なのは飼料に色素を配合するから。だから、黒にだって、青にだってできちゃいます。それでも濃い色の黄身が食べたいですか? そんな鶏卵にまつわる素朴な話を「生活クラブたまご」専務の吉野訓史さんに聞いてみました。
 

 

大手コンビニチェーン店の売り場に、4個入りと10個入りのパック入り鶏卵が並んでいた。
4個入りには「生食用」とあり、ドコサヘキサエン酸(DHA)とビタミンEが含まれる旨の表示がされていた。一方の10個パックには「要冷蔵」の告知があるのみ。となると、こちらは「生食不可」なのか。
どちらも野菜などの生鮮品と一緒に冷蔵品専用ケースで販売されていた。殼の色はともに白で、「採卵日」と「賞味期限」を明示したシールが貼られている。はて、さて、どうして10個入りは生食できないのかという素朴な疑問が湧いてきた。
この点をパックに記載された販売会社のお客様相談室に問い合わせてみると「当社の鶏卵は品質が高く、実はどちらも生食可能ですが、4個入りのほうはとりわけ飼料設計に力を入れており、そのアピールの一環として生食用と表示させていただいております」と丁重な回答をいただいた。
確かに10個入りのほうは1個当たり20円だが、4個入りは1個あたり30円前後と比較的高価な鶏卵として販売されている。しかし、鶏卵を食べてDHAやビタミンEを補給しようとするのは、いささかお門違いのようにも思えてくるが、お客様相談室の説明はよどみなく続く。
「DHAは青魚に豊富な脂肪分でございまして、人の思考力や記憶力に影響するとされております。ビタミンEはごま油などに豊富に含まれ、人の健康増進や長寿のもととして注目されております」
さらに、魚粉とごま油の搾油かすを鶏のえさに配合しており、だから価格も若干高めになると説明された。
「鶏に与えるえさの違いこそありますが、鳥インフルエンザといった病気にかかるリスクが低い衛生的なウインドレス鶏舎で健康に育てておりまして、人が鶏舎に立ち入ることがないように完全に機械化されたシステムを導入しております。えさも水も全自動で供与され、毎日の採卵も機械で実施しております」

ウインドレスは健康的?

なるほど採卵鶏の飼育は機械化が進み、人の労働をほぼ必要としない工業化が進展しているのかと感心しつつ、「ウインドレス鶏舎なら病気の発生リスクが抑えられ、鶏を健康に育てられる」という言葉に釈然としない思いが残った。
えさの違いが価格に反映するというのも、わかったようでわからない。それにどちらも生食可能というなら、双方に「生食用」の表示をしてもいいではないか。

そんなモヤモヤした気分を、生活クラブが共同購入する鶏卵の生産者である「生活クラブたまご」専務の吉野訓史さんにぶつけてみた。
同社は鶏を風通しのいい開放鶏舎で飼育する。えさや水の供与と採卵は機械化され、ほとんど人の力を必要としない点は同じだが、「鶏の健康を考えたら開放鶏舎のほうが自然に近い状態といえます。
生活クラブの理念に沿った飼育法を続けています」と吉野さん。
ただし、「病気感染リスクについてはウインドレスのほうが低く、鶏の産卵成績という点でも優れている」とする養鶏事業者の意見もある。

では、えさの中身が鶏卵価格を左右する点はどうだろうか。
「間違ってはいませんね。その通りだと思いますが、えさの何を大切にするか、販売する際の付加価値付け、つまり商売の道具としてえさの違いをアピールする姿勢には賛成しかねます」と吉野さんは話す。
「生活クラブの組合員が共同購入する鶏卵はえさの中身が開示され、だれもが安心して口にできる卵である点を重視しています。だから私たちはえさに遺伝子組み換えではないトウモロコシと大豆かすを使用し、一定量のトウモロコシを国内産の飼料米に切り替える努力も重ねています。いまは円相場の関係と米国での作付面積の減少により非遺伝子組み換えのトウモロコシの価格が高止まりしています。これが鶏卵の生産コストを押し上げ、薄氷を踏むような経営を迫られる要因になってもいるのです」

*右写真:「いまや生活クラブ組合員に限定した生産体制です。鶏卵が足りなくても余っても経営に響きますから、毎日が薄氷を踏む思いです」と吉野訓史さん

親鳥も鶏卵も「国産」?

生活クラブの鶏卵を産む鶏は柴犬の毛色に似たあめ色の卵を産む「もみじ」と淡いピンク色の卵を産む「さくら」が主力だが、これらの作出改良の継続が危機的状況に追い込まれて久しい。
というのも現在、世界中で飼育されている採卵鶏の9割以上が欧米の多国語企業が育種改良したもの。これに国産の「もみじ」と「さくら」の種を守る日本の後藤孵卵場(本社・岐阜市)が単独で対抗しているという現実があるからだ。
「『もみじ』や『さくら』をつくりだすにはロードアイランドレッドや白色レグホンといった原産国が海外の鶏を保持し続けていかなければなりません。それが可能な国内の企業は後藤孵卵場だけであり、販売事業ができるのも同孵卵場だけです。ところが、近年では価格も安く入手も容易な多国新企業が販売する鶏を導入する農場が増え、国産採卵鶏のニーズが低迷したままになっています。国内における食料の持続的な生産確保という点からみたら、多国籍企業による鶏種の独占販売ほど怖い話はなく、だからこそ生活クラブは国産採卵鶏を守り続けていると理解していただきたいです」
残念ながら、どんな鶏が産んだものでも鶏卵の栄養価は変わらず、ましてや殼の色で味や価値が変わるはずもない。
吉野さんは「関東では昔から白玉が主流でしたから、赤系の殼が珍重される傾向が強いのかもしれません」とも話す。

洗う方がいいのか…

ところで、生活クラブの鶏卵は生食できるのか。
「むろんサルモネラ菌対策は最大限講じていますし、賞味期限内の鮮度と品質に自信はあります。
しかし、食品を生で食べるか食べないかは自己責任に基づき、個々人の判断に委ねられるものではないかとわたしは考えています」
さらにもう一つ気になったことがある。生活クラブが共同購入する鶏卵は鶏ふんなどの目立つ汚れを洗い落としたほうがいいのか、それとも布巾などで軽く汚れを拭く程度でいいのかを確認してみた。
「洗えば卵殻の表面を覆っているクチクラ層が損なわれ、負の影響があるという生活クラブの考え方は間違っていません。ただし、いまや鶏卵は冷蔵保管が常識になりつつあります。洗うから冷蔵物流と冷蔵保管をしなければならなくなるというのが正しい理解だろうとわたしは考えていますし、そう生活クラブの組合員にも伝えています」
養鶏業界は「メガファーム」の時代に突入している。飼育する鶏の数は「数百万羽規模」で、「生活クラブたまご」をはじめとする生活クラブの提携生産者の飼育羽数は中堅クラスでも「数千から万単位」がせいぜいだ。
これらの農場は昔ながらの庭先養鶏の精神を忘れることなく、「食はいのちの源流であり、いたずらに量産に走り、薄利多売の工業製品にしたくないと願う生産者ばかり。彼らは国内で採卵鶏の品種改良が持続されることを重視し、後藤孵卵場の鶏を飼育し続けています。この点に注目しつつ、各農場の鶏卵を大事に食べていただきたいです」(吉野さん)
そうした中小規模の心ある養鶏農家の経営存続がさまざまな要因で危ぶまれている。そんな時代だからこそ消費者にできることは何かを真剣に問い直してみたい。

*右写真:黄身の盛り上がりかたで鮮度がわかる。かつて生活クラブの組合員は加入希望者の前で実際に殼を割ってみせ、市販品との違いを考えてもらうきっかけにしていた


◆「男」に生まれて良かったか?

文/本紙・山田 衛

一つの鶏舎に2万羽の鶏と聞けば、何やら大農場のようなイメージを抱くが、とんでもない。これでもまだまだ中小規模で、いまや数百万羽の鶏を飼育する「大巨人的農場(メガファーム)」が鶏卵生産の主役となっている。
これらの農場が多国籍資本から外国産採卵鶏を購入するため、国内で品種改良が可能な「国産採卵鶏」の「もみじ」と「さくら」の供給事業が苦境に追い込まれている。養鶏農家の間でも「同じ赤玉を産む鶏ならポリスブラウンでいい」と同業者に外国産鶏種の導入を勧める人も増えているという。
強い日本、美しい日本を追い求めてやまない政府なのに、どうして国産採卵鶏の作出には力を注いでくれないのかと、つまらぬ疑問まで湧いてくる。
ましてや「攻めの農業」を説くのなら、しっかりと守りをこそ固めて、決して国民にひもじい思いをさせないぞと不退転の決意を示してほしいのに。
話をメガファームに戻そう。
数百万羽の鶏を飼育するのは「ウインドレス鶏舎」だ。渡り鳥やハクビシンなど野生動物を侵入させないから、鶏の大量病死を防げるという利点が強調される。しかし、万が一の事態が起これば鶏舎が巨大であればあるほど大量の鶏が病死すると考えるのも道理だろう。
日本の気候風土での育成を最優先せず、販売価格や性能(産卵率)、歩留まり(生存育成率)を重視して作出された外国産鶏種が何らかのウイルスに集団感染すれば、全滅の危機的事態も想定できるのではなかろうか。
「いのちをいただく」という言葉をよく耳にするが、元気に育ち、いい品質の卵をたくさん産んでくれる優秀な雄と雌を系統として残すために、選ばれなかった鶏たちが選別される事実も覚えておきたい。
これが家畜という経済動物の宿命だが、採卵鶏の雄の命運は実に過酷だ。
ふ化したばかりの愛らしいひよこたちがベルトコンベヤーで運ばれ、雌雄鑑定で雄と判断されれば、即座に黄色いトレーに絞り入れられる様子を見せてもらったことがある。これで天国と地獄かと悲しい気持ちにとらわれた。
哀れな雄たちの行く先の一つにチキン・エキス・メーカーがあるという。
「ああ、男に生まれて良かったか」と心の中でつぶやき、鶏卵はやはり貴重品と考えた次第だ。

 

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