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エネルギーを選択できる社会に-生活クラブエナジーの1年 生活クラブエナジー ■提携先  ■提携品目 

文/高橋真樹  撮影/片岡和志  生活と自治2017年7月号掲載

エネルギーを選択できる社会をめざして2014年に設立された生活クラブエナジー。
電力自由化から1年、「電気の生産者」と生活クラブ組合員との懸け橋となるべく新しい取り組みが進んでいる。

期待と不安の船出

「食べ物と違って、目に見えない電気のことを理解してもらうのは、すっごく大変なんですよ」。生活クラブ大阪で、電気の共同購入を広めるために奔走してきた理事長の浅井由起子さんが言う。
2016年4月から始まる電力自由化を見据えて、各地の生活クラブと生活クラブ連合会がともに出資し、電力小売り会社の生活クラブエナジーを設立(11年10月)。組合員向けに自然エネルギー(再生可能エネルギー)を中心とした自前の電力を販売する準備を始めた。大阪でも15年末から本格的な推進活動を開始したが、浅井さんは期待と不安が入り交じる心境だったという。

「どんな電気を使いたいかは、自由化になって突然出た話ではありません。生活クラブのエネルギー政策は『へらす・つくる・つかう』の三つ。『つくる』と『へらす』についてはこれまで実践を重ねてきていて、今度はどう『つかう』か。
今までの成果が試されると感じました。活動がどこまで理解されているか不安もありましたけど」(浅井さん)。16年に入り働きかけを始めると、彼女の不安は的中する。


※左上写真:生活クラブ大阪の浅井由起子さん

生活クラブの電気は高い?

浅井さんが対面や電話で話した人の多くは、脱原発のために再生可能エネルギー由来の電気を増やす必要があることは、それなりに理解してくれた。それでも、なかなか契約に結びつかない。「再生可能エネルギー由来の電気は不安定なのでは?」といった根本的な誤解もあったが、いつも最後に指摘されるのは価格の問題だ。ガス会社やガソリン会社など、大企業が運営する小売り会社は、「たくさん使えばお得」といったサービスが充実している。生活クラブエナジーの価格設定は、東京電力や関西電力など、従来の大手電力会社と同じ値段にしているので、金銭的なメリットを感じない人が多い。それでも浅井さんは、年間で計算すると、大企業のサービスとの差はそれほどないと言う。
「金額は年に千円とか2千円程度しか差が出ません。大手という安心感と、『お得』というイメージが先行しているんでしょうね」

むしろ生活クラブエナジーの方が安くなるケースもある。従来の電力会社は「三段階料金制度」といって電気を多く使えば基本料金が上がる仕組み(国の規制価格)を採用している。生活クラブエナジーも同制度を採用しているが、新規の小売り会社の中には、これをやめて電気を多く消費すれば安くなるシステムをとり、アピールしているところが多い。しかし実は省エネを心がけていれば生活クラブエナジーを選んでもそれほど価格は変わらないし、むしろ基本料金が抑えられるため安くなるケースも出てくる。
 

電源構成比率の現状

「FIT」と記載のある電気は、これを買い取る費用が、電気を利用するすべての人から集めた賦課金により賄われているもの。C0排出量については、全国平均の排出量を持つものとして扱われる。

2016年度
日本の年間発電量の電源構成比率(速報)

▲資源エネルギー庁「電力調査統計」などよりNPO法人「環境エネルギー政策研究所」が作成したグラフから構成(自家発電含む)

2016年度
生活クラブエナジーの電源構成比率

▲生活クラブエナジーが、生活クラブ事業所および関連施設と組合員宅に供給した実績に基づき算出
 

顔の見える電気を届ける

生活クラブエナジーの一番の特徴は、電気の調達先である電源に表れている。代表取締役の半澤彰浩さんは「『電気なんて、価格以外はどこで買っても一緒』と思っている人にこそ、電気の生産者のことを知ってほしい」と訴える。

生活クラブエナジーは、単に「再生可能エネルギーならなんでも良い」という方針で発電所と契約しているわけではない。地域の人々が地域の未来のために出資してつくった発電所、いわゆる「ご当地エネルギー」と呼ばれる事業に取り組む団体と提携しているケースが多い。原発事故の被害を受けて、福島県と首都圈とのいびつな関係を問い直そうと立ち上がった「会津電力」もそのひとつだ。また原発事故の影響により、全村避難を経験した飯舘村の村民が立ち上げた「飯舘電力」の電気の購入も予定している。首都圈では、市民が出資金を出し合って集合住宅の屋根などにパネルを設置した神奈川県川崎市や大磯町、東京都小平市のグループなどとも提携した。

生活クラブでは、地域の人々がまちづくりの一環としてエネルギー事業に取り組むこうした事業主を、食の生産者と同じように「電気の生産者」と位置づけ、エネルギーを通じて新しい関係を築こうとしている。「生活クラブエナジーと契約した組合員が、電気の生産者と交流や意見交換をするような機会も設定していきたいと思っています。エネルギーの選択を通じて、顔の見える電気になっていけばいいですね」(半澤さん)


※右上写真:生活クラブエナジーの代表取締役 半澤彰浩さん

▲顔の見える電気の提携の代表的事例が秋田県にかほ市との交流。生活クラブ東京、神奈川、干葉、埼玉がにかほ市に建設した風車「夢風」をきっかけに、同市の食材などを「夢風ブランド」として開発、共同購入している

▲秋田県にかほ市で生活クラブと提携して「夢風ブランド」を開発した生産者たち。左から三浦米太郎商店の三浦悦朗さん(はたはたのオイル漬け)、佐藤勘六商店の佐藤玲さん(イチジクの加工品)、伊藤製麺所の伊藤実さん(タラーメン)


 

新たな共同購入の1ページに

食べ物を扱う生協が、なぜエネルギーを扱うのか? 何度も聞かれてきた質問に、半澤さんはこう笞える。「エネルギーは、食と同様に生きるために欠かせないものです。生活クラブではエネルギーも自分たちで選んでクリーンなものを共同購入できないかと、ずっと議論してきました。電力の小売りはそのひとつの答えなんです」
日本の電力供給は、長年大手電力会社が独占してきた。自然エネルギーの発電所をつくるだけでは、そこでつくられる電気を組合員が使うことはできなかったが、電力自由化がその可能性を開くきっかけとなった。原発事故により脱原発への思いが一層高まっていたこともあり、独自の小売り会社を立ち上げ、懸案だった電気の供給を始めた。

現在、生活クラブエナジーが扱う電力のうち再生可能エネルギーの割合は約60%。ほかの電力会社に比べて高い比率で、電源の内訳も毎月明らかにしている。価格は大手電力会社と同じでも、無農薬栽培の野菜やフェアトレードの洋服など、手をかけたものはそれだけ価格が高いと考えれば、再生可能エネルギー比率が高い生活クラブエナジーの電気は、実質的に安いと考えることもできる。
設立からまもなく1年、電力システムの影響による限界や、事業基盤の確立などクリアすべき課題は多い。しかし、生活クラブエナジーの発足によって、「エネルギーを選択できる社会」に一歩近づいたことは間違いない。

大阪で、すでに150回を超える説明会を実施してきた浅井さんは言う。
「生活クラブの意義は、単に原発に反対するだけではなく、具体的な解決策を実践しながら現実を変えていけることです。電気という素材は扱い始めたばかりなので、食べ物に比べまだ関心を持つ人は少ないのでしょう。でもこれから、全国の組合員と生産者とで手を取り合って新しい歴史をつくっていきたいと思っています」
生活クラブエナジーの契約者数は、小売り事業の開始から半年となる17年3月末時点でおよそ1万人弱。当初の目標よりはやや少ないが、再生可能エネルギーを主体とする電力小売り会社としては多くの利用者を獲得しており、これまでトラブルもない。こうした実績を一歩ずつ積み上げることが組合員の信頼につながり、生活クラブの歴史に電力という新たなぺージを加えていくことになるだろう。


※左上写真:生活クラブ神奈川・副理事長の桜井薫さん。秋田県の郷土食であるハタハタを加工した「はたはたのオイル酒け」の開発を担当。「ハタハタで地域を元気にしたい」という地元の生産者の思いに共感。風車を通してこういう関係性が持てるのはすてきだし、そこの電気を使えるのも感慨深いですね」
※右写真:はたはたのオイル漬け


◆説原発を国民的な動きへ「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」設立

写真提供/城南信用金庫 文/高橋真樹

4月14日、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」の設立を発表する記者会見が都内で行われた。同連盟は、各地で活動する脱原発や自然エネルギー(再生可能エネルギー)を推進する団体を政治的な立場を超えて結集し、全国的な動きにしていくとしている。
顧問として参加する小泉純一郎元首相は会見で、「国民全体で原発を止めていこうという強いうねりが起きているのを実感している」と語った。

会長に就任した城南信用金庫相談役の吉原毅さんからの呼びかけを受け、生活クラブ連合会も協賛団体に名を連ねている。吉原さんが説明した設立の目的は次の通り。まずはこれまで脱原発や再生可能エネルギーについて全国でバラバラに活動していた市民や団体を結集していくこと。その活動の全国組織として、再生可能エネルギー事業や原発反対訴訟で闘っている人たちを応援する拠点にしていくことだという。

「団体名に原発ゼロと入っている通り、それをはっきりと打ち出したというのが特徴です。原発が経済的にも採算が合わないことは、現在の東芝の状態を見ても明らかです。逆に世界での再生可能エネルギーの広がりは、経済的にも王道になってきています。国民のお金を、原発を維持するために使い続け、経済的だなどという間違った情報が流されるなどということは、経済人として許せません。むしろ経済的に見れば、再生可能エネルギーの方が現実的なのだということを、政治家、経営者、ビジネスマンの方々に強く訴えていきたい。そのために、主義主張を超えて幅広く国民運動を展開していきます」(吉原さん)

吉原さんはまた、生活クラブをはじめとする協同組合組織がこの連盟で果たす役割についても非常に大きなものがあると言う。
「お金だけを追い求めてきた株式会社は、欠陥の大きいシステムです。これを是正するために誕生したのが協同組合ですから、いまこそ生協や信金、労働者協同組合といった協同組合陣営で、みんなが幸せになる新しい経済を主導していくときだと考えています」
同連盟は今後、多くの国民に脱原発の知識や意識を広めるため、シンポジウムや映画会などを開催、政府への提言などを行っていく。


※左上写真:「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」では、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備等の発電設備を設置し、農業と発電事業を同時に行う「ソーラーシェアリング」を提案している。4月3日に千葉県匝瑳市で行われたソーラーシェアリングの開所式
※右上写真:「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」発足の記者会見
※左下写真:城南信用金庫相談役の吉原毅さん


連盟には約150団体が参加予定。
その他の主な役員は次の通り。
顧問=細川護煕(元首相)▽副会長=中川秀直(元自民党幹事長)島田晴雄(前千葉商科大学長)佐藤彌右衛門(全国ご当地エネルギー協会代表理事)▽事務局長=河合弘之(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)▽事務局次長=木村結(東電株主代表訴訟事務局長)▽幹事=鎌田慧(ジャーナリスト)佐々木寛(新潟国際情報大教授)香山り力(立教大教授)三上元(元静岡県湖西市長)永戸祐三(日本労働者協同組会連合会理事長)(敬称略)

 

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