生産者リレーエッセイ

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vol.10

小林 衛さん提携先ヱスケー石鹸(株)

提携品目 Sマーク固型せっけん、Sマーク粒状せっけん

かつての「ハミガキが固まる」事故で、驚くことに返品が、ほんの数本だけ。組合員のやさしさをしみじみと感じさせられました。

小林 衛さん


 
 

粒状せっけん

生活クラブとの出会いは1973年、ヱスケー石鹸のブランド品の取扱いに始まり、翌74年には信州青木味噌に次ぐ二番目の生活クラブオリジナル消費材の「粒状せっけん」が誕生しました。石けんといえば生活クラブ運動の代表的な消費材のひとつですが、実際に運動消費材として取り上げられたのは幾多の紆余曲折を経てのことでした。
提携開始当時のヱスケー石鹸の石けん類は、石けんをベースにした合成洗剤や化学合成添加物などを配合したものでした。それは人体への安全性や環境に配慮した現在の成分内容とはだいぶ違ったものでした。一方、生活クラブでは石けん以外に、日本生協連ブランドの「コープKソフト」「コープセフター」の合成洗剤を取り組んでいました。生活クラブでは“石けん派”と“よりよい洗剤派”の論争の中で、合成洗剤そのものに反対し、昔ながらの石けんを使おうとする運動も起こり始めた頃です。当時、「組合員の一世帯利用量が月平均1kgを達成したら、日本生協連系統の合成洗剤をやめて石けんに切り替えよう」という方針がありましたが、75年10月頃の東京の組合員の石けん利用量は一世帯の月平均が800gにまで増えていました。
76年秋から77年2月の間に合成洗剤の「セフター」を使用している組合員をターゲットに、「今あなたが使っている合成洗剤が危険なことを知っていますか」と書いたチラシを箱に貼り付けて配達しました。また、組合員が専従職員の配達トラックに便乗して班まで出かけ、合成洗剤を使用している人たちに危険性を呼びかけるなど、組合員の涙ぐましい努力の結果、「セフター」の利用者が減って、粉石けん利用者が80%になり、生活クラブは合成洗剤の一切の取り組みを中止したのです。
その後の77年、「生き方を変えよう」をテーマにした選挙運動とあわせて、東京・練馬区で初めて“石けんキャラバン”が展開されました。当時の代理人運動は石けん運動そのものだったといいます。こうした活動は、神奈川や千葉の合成洗剤追放直接請求運動へと繋がっていきました。

ヱスケー石鹸(株)


ハミガキ

一方、当時「疑わしきは使用せず」の生活クラブ原則により加工食品などから化学合成添加物の排除が活発に行われていました。その添加物問題は石けん類も例外なく、生活クラブ原則に沿って矢継ぎ早に石けん類から添加物の除去を実施しました。また、生産ロットや価格などを相互に議論しあいながら社会の持つ問題解決を共に行ってきました。
 特にハミガキの再開発が私の中では強く思い出に残っています。生活クラブは81年にハミガキを開発しました。ところが取り組んだハミガキの抜き打ち検査により、防腐剤が検出された事故が2度も繰り返されたということで、生活クラブは83年にその生産者と取引きを中止しました。私が生活クラブを初めて担当した年でもありました。そして、ハミガキの製造に関してはまったく“ど素人”のヱスケー石鹸にハミガキの製造依頼がありました。結果的に製造することを決心し83年に供給を開始しました。一方、当時の生活クラブの組合員数が10万人でしたが、「1人1本運動」を展開し、その呼びかけが実り、ほぼ10万本の注文がありました。
ところが、出荷後間もなく「ハミガキが固まる」との電話がヱスケー石鹸に殺到したのです。粘結剤と研磨材が結合して固まる事故で、ヱスケー石鹸にとっては危機的状況でした。センター在庫は全て回収(出荷全体数の5%)しましたが、残りの95%は全て組合員に配達されていました。誰しもが「返品の山が来るだろう、クレームの電話も殺到するだろう」と思うところですが、驚くことに、返品は数本と普通の商取引ではまったく考えられないことが起きたのです。後に分かったことですが、その理由は、「はさみで切ってお皿に入れて使用した」「ハンドバックの垢落としに使った」「自転車のサビ落しにつかった」「銀磨き」、中には「ボロボロのハミガキを無理やりはブラシにのせて使用した」という組合員の声でした。更に驚いたのは、ハミガキのことを「ヱスケーのハミガキではなく、私たちのハミガキ」と、当時の組合員は声を揃えていたとのことです。石けん運動で見た生活クラブの組合員の情熱とパワー、その力強さの根っこにある「やさしさ」をしみじみと感じました。そして、生産者と生活クラブの信頼関係の重要さ、生産者としての責任を重く感じさせられた出来事でした。


固型せっけん

合成洗剤は合成化学物質のほんの一部にすぎません。世の中では10万種類という合成化学物質が使われ、殆んどが安全性データーのないものです。50~60年前から懸念されていた合成化学物質の問題が表面化してきている今、地球環境の破壊、汚染は深刻度を増し、関心も高まりを見せています。とくに全ての命の源である水を守ることは、地球環境を守る中でも重要な課題の一つです。何の疑問を考えず簡単便利に使用されている合成洗剤に較べて環境負荷が低い石けんを広めることは、以前にもまして重要で、今日的な課題になっているといえます。ぜひ多くの組合員の皆さんに石けんの良さを理解してもらい、さらに石けんの利用を増やすための活動を、皆さんと共に進めていきたいと考えています。


【次回生産者】

Sマーク豚肉の生産者、(株)平田牧場、Sマークポークウインナーの生産者、(株)平牧工房の新田嘉七さんの予定です。お楽しみに。

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