生産者リレーエッセイ

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vol.24

山田 充さん 提携先和高スパイス(株)

提携品目 本わさび、粒入マスタードほか

“業界常識”をことごとく生活クラブに打ち砕かれ、スパイスを「消費材」に仕上げながら、私も変わりました。

山田 充さん


 
 

粒入マスタード

忘れがたい思い出があります。
1986年4月、旧ソ連邦ウクライナで原子炉が爆発しました。チェノブイリ原発事故ですね。事故から7日目の5月3日、日本でも雨中から放射性物質が確認されました。この事態に対処して国は食品中の放射線濃度の制限値を370Bq/㎏と決定し、生活クラブはその1/10、37Bq/㎏を限度としたことはご存知の通りです。
あれよあれよという間の出来事でしたが、スパイスにも火の粉が降りかかってきたのです。ようやく生活クラブと取り組みが決まって供給を開始、しばらくしてのこの事故で、ローレルとパプリカにセシウムが検出されました。国の制限値は余裕でクリアーしていたのですが、生活クラブの制限値を超えたため、即座に取り組み中止。37ベクレルという限度が恨めしく、ショックでした。思えば、これが生活クラブの"洗礼"を受けた最初の出来事です。


本わさび

その後も、それまで脳天気に受け継いできた"業界の常識"を、次から次へと打破されることになります。例えばナツメグに陳皮(ミカンの皮を乾燥して細かにしたもの)が混じって当然、わさび粉にカラシが入って当たり前で特に表示など必要ない、といった"業界の常識"は、生活クラブの食の安全に対する厳正な姿勢の前でことごとく打ち砕かれました。しかし、それらの対応に追いまわされながら少しずつ生活クラブを学び、スパイスを"消費材"に仕上げながら当初の「自主管理・監査基準」の基準作りにも参画し、私も変りました。そしてこの間に「対等互恵」を学んだと感じています。
その後の消費材管理について考えれば、O-157にBSE、さらにGMOと社会の大波を次々乗り切りながら、消費材規格は著しく精緻に、その手法も体制も目覚しく進化しました。おそらくは世界水準を遥かに凌駕してなお、前進を続けているようです。そして生活クラブの運動も事業も広がり、仲間も増えました。
消費材の規格書はすべて手書き、それを紙で管理していた頃を思い起こしながら、先ごろ亡くなった小野田さん(S食用ごま油の提携生産者)と「ムカシは大らかだった」などと話し合ったことでした。


わさび圃場

さて...、"賞味期限"を過ぎたような繰言(くりごと)はさて置き、ちょうどいい機会ですから、スパイスが当面している今日的な課題といったところを少し知っていただきたいと思います。"放射線照射食品"の問題です。
通常スパイスは多くの細菌を含んでいます。生活クラブのスパイスは過熱水蒸気だけを使った安全な気流式殺菌処理を他に先駆けて採用、実施してきました。今ではこの方法が広く行なわれていますが、1980年代以降、放射線照射による殺菌が普及してきました。すでに30ヵ国以上で実用化されていますが、いずれの国もスパイスを照射食品に加えています。生活クラブのスパイス屋としてずっと気がかりでしたが、案の定2000年、全日本スパイス協会が当時の厚生省に対して94種類のスパイスについて照射許可を求めました。
これを受けて総理府原子力委員会は「食品照射部会」を設けるなど具体的な動きを始めました。もともと原子力委員会は、原子力の平和的多目的利用を掲げて食品照射推進の中核にあり、わが国唯一の例外として1974年から行なわれている「照射ジャガイモ」の発議者でもあります。(ジャガイモは発芽防止の目的で年間8000tほど照射・出荷されており、また、照射に使用される"コバルト60"は原発核燃料の燃えカスだということです)
照射食品の健康への危険性は夙(つと)に知られており、動物実験でも奇形や染色体異常、胎児異常などが報告されています。照射によって生成されるシクロブタノンという物質が、発がん性物質と結合した場合、「できる腫瘍の数や大きさが顕著に増加する」という実験結果も発表されています。またオーストラリアでは照射キャットフードを食べた多数の猫が脳神経障害を起こし、先般、照射食品反対連絡会の招聘で飼い主の女性が来日、その被害の実態を報告しました。
こうした状況のなか厚労省は5月に薬事・食品衛生審議会を開催、ここで「照射によりできるアルキルシクロブタノン類の毒性データ等が不足しており、また、消費者の理解が進んでない」として、すぐに照射食品を認めないとしました。しかしまだ油断は出来ません。スパイスの照射推進の背後にはさらに込み入った事情がありますので今後も解禁に向けた動きが続くと思われます。生活クラブ全体で注意深く監視していただきたいと思います。
私はこれからも安全な気流式殺菌を続けたいと考えています。


【次回生産者】

のり佃煮、茎わかめ佃煮などの生産者、(有)マルヨーのり製造所の池田幸子さんの予定です。お楽しみに。

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