生産者リレーエッセイ

 記事一覧

vol.36

樫葉 幸生さん提携先農事組合法人 紀州大西園グループ

提携品目 温州みかん・はっさく・ネーブル他

社会的に評価され、持続可能なみかん作りの中継ぎとして

樫葉 幸生さん


 
 

私の父(前代表)が7人のみかん生産者とともに、大西園有機農業グル-プを立ち上げたのは1978年のこと。1年後には生活クラブとの取り組みが始まりました。美味しくて安全なみかんを安定生産することを目標に、肥培管理にもこだわって良質の有機肥料を追い求め、農薬削減も生産者同士が情報を共有しながらの試行錯誤の時代でした。当時は農薬や化学肥料が万能の時代でしたから、減農薬や減化学肥料は国や農協の政策に逆らうということを意味し、そういう場面に直面することもしばしばだったと言います。一方、有吉佐和子の『複合汚染』や、『成長の限界』も出版され、有機農業という言葉が出始めたのもこの頃だったと記憶しています。
1980年代後半にオレンジが自由化されると全国的にもみかんの消費量も少しずつ下がりはじめ、それにつれて市場価格の下落が始まりました。当時、私達と生活クラブとのみかんの価格設定は、原価計算はしていたものの、その理想は、末端の消費小売価格より1割~2割安く供給するというものでした。しかし、市場価格の下落が激しく、価格の優位性を徐々に失うことになってしまいました。それでも、生活クラブのみかんの消費量はこの頃ピークをむかえ、多い年には1300トンのみかんを生活クラブに供給することが出来ました。それに応えるべく40人超えたメンバーがみかん作りに励む……、私たち生産者が皆、輝いていた時代だった思います。 
日本の農業は、五穀豊穣を祈り収穫に感謝し自然の恵みを皆で頂くというのが本当の姿だったと思います。しかし、時代の流れとはいえ豊作を喜べない複雑な時代になってしまいました。地球温暖化の影響か、ひどい干ばつや大雨や洪水に見舞われることが多くなり、今までのように安定した生産が困難になってきています。みかん作りも例外ではありません。みかんの生産・消費が減るとともに放任園や廃園を目にすると、和歌山の文化でもあったみかん作りが危機にさらされているという現実を受け止めなければならないのかもしれません。
農業をめぐるこうした時代状況のなかで、ともすれば時代の流れに流されると目標を見失い、農業自体からの撤退を余儀なくされかねません。そこで私たちは2006年9月、将来に何か活路を見出そうと考え、任意組合から農事組合法人紀州大西園グループに移行しました。任意グループで培ってきたことを礎に、生産技術の更なる研鑽と共同の原理をフルに生かしコストの削減を進めることにより、適正な価格で美味しいみかんを生産していきたいと、気持ちを新たにスタートを切ったわけです。
今、食の安全性が大きく問われています。私たちは生活クラブ自主管理監査制度や要改善農薬制度を実行し、生産者の義務として生産情報の公開を基本に進めています。生産に関わるすべての情報開示は「やらされる」のではなく、「生産者の責任」として果たしていきたいと考えています。そして、社会的に価値が評価されるグループとして、また、若い人たちが魅力を感じながら持続可能なみかん作りができる中継ぎとして、和歌山の文化の一つとして継承されてきたみかん作りで、もう一度、紀ノ国屋文左衛門のように紀州みかんの生産と消費の復活を果たすことを夢見ています。
紀ノ国屋文左衛門を持ち出すまでもなく、和歌山と柑橘類の関係の歴史は古く、世界文化遺産に登録された熊野古道の途中の所坂王子跡に橘本神社があり、地元で“みかんの神様”と呼ばれている「田道間守(たじまもりのみこと)」が祀られています。古事記や日本書紀には垂仁天皇が不老不死の霊薬「非時香菓(時じくの香の木の実)」を田道間守の持ち帰らせたと記されているそうです。この「非時香菓」が現在の橘で、柑橘類の原点とも言われており橘本神社境内に植えられています。私たちは、その歴史を受け継いでいることにもなるのです。
毎年、生活クラブの組合員の皆さんから、届いたみかんの感想や思い、時には叱咤激励を交えた沢山の葉書や封書が届きます。年初には、年末に届いたみかんの感想が記された年賀状が数え切れないほどになります。思いのこもった文面は生産者としての最大の喜びでもあり、励みにもなります。特に生産者宛名で届いたものは、消費者と生産者自身がつながっていることを実感させられます。最後に、生活クラブ組合員からのお便り(ファンレター)を紹介して終わりにしたいと思います。


紀州大西園様へ
私は物心ついた時からずっと紀州大西園のみかんを食べています。生活クラブから買っているのですが毎年すごく楽しみにしています。1日3個は食べています。
ずっと手紙を書こうと思っていたのですが、出せずに13年もかかってしまいました。ずっと応援しているのでまた来年も頑張っておいしいみかんを食べさせてください。

千葉県 中2 みさき


【次回生産者】

梅干しなどの生産者、(有)王隠堂農園の王隠堂誠海さんです。お楽しみに。

ページの先頭に戻る