生産者リレーエッセイ

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vol.37

王隠堂 誠海さん提携先農業生産法人(有)王隠堂農園

提携品目 Sマーク梅干し、梅びしお、ゆかり、梅ドリンク他

生産と消費を持続させるために

王隠堂 誠海さん


 
 

私たちの生産地域は、2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の中にあります。吉野・熊野・高野山の3つの霊場が連なる地域で深い山林につつまれています。ところどころにある平地は米作地で千枚田の棚田もありますが、大半は山林と平地の間の中山間地。傾斜地に広がる畑で梅干しの原料となる梅や柿を栽培しています。気候は年間を通して温暖で、梅・柿・みかんは全国1位の生産量を誇る産地になっています。しかし、地域では高齢化が進み、若者たちは流出し、これ以上過疎化が進むと地域社会として機能しない状況下にあります。生産環境の悪化も著しく、畑のまわりを猿・鹿・猪などの害獣柵で保護しなければならない場所も出てきています(最下の写真参照)。
振り返れば、生活クラブ生協グループとの出会いは今から36年前(1976年)になります。もともと私は主に梅と柿を生産する個人の農家でした。生活クラブとの出会いがあってから梅干し加工を始めましたが、当初は自家の畑でできた梅をそれぞれの農家の軒先で加工していました。それを地域協同で行い、生活クラブのブランド・王隠堂農園として出荷するようになりました。参加する農家は徐々に増え、1986年に共同センターを建設して加工を1か所に統合し、以降、専従職員が行っています。
私たちの梅干は「昔ながらの伝統の梅干」、梅・しそ・塩だけで漬ける梅干です。減農薬栽培に徹して育てた「梅」を原料に、塩は生活クラブの「真塩」を使い、加工用の「赤しそ」は、私達の提携生産者が栽培しています。

また、当地は「柿」も自慢のひとつです。急峻な斜面にある柿畑は労働環境としては厳しいものがありますが、余分な水分が蓄積せずおいしい柿を作るには絶好の環境といえます。現在、3品種を生産しています。それぞれの品種特性があるのはいうまでもありませんが、なかには虫に食われたり病気にかかったり、秀品もそうでないものも、大きいものも小さいものもありと、いろいろなものができます。それが自然なのです。そのなかから、食卓に届けられるのは一定レベル以上のものだけですが、畑の柿にはいろいろなものがあるという現実を知っていただきたいのです。それは作る側だけでなく、食べる側にとっても必要なことだと思います。
大半の加工メーカーは自分たちが必要なものだけを仕入れていきます。でも、私たちは畑と向き合い、畑でできたものはすべて大切に活用することで農家協同事業とする必要がありました。そのため、“生産者のものさし”と“消費者のものさし”をすりあわせ、その合意をもとに「畑サイズの加工品」を作ってきたという経緯と自負があります。

たとえば、梅なら早取りから完熟(5月下旬~7月上旬)まで収穫しますので、時期によって加工方法が異なります。このように生産物の違いや地域ごとの生産の考え方や方法が異なるなど農業の実体を、組合員のみなさんにも十分に理解していただきたく思います。
私たちの地域も、農業と林業の再生なくして、地域社会の存続はありえないと考えています。このため今では奈良県だけでなく、紀伊半島(大和・熊野・紀州)の3県(奈良県・三重県・和歌山県)での農家の協同化を推進し、直営協同農場など地域の生産者の人たちとの提携関係をつくるとともに、次世代への継承にも力を入れています。また、農業のもつ多様な機能や、地域の歴史・文化、自然環境を再度見直し、次世代につなぐ自立した農村社会を築くためにも、組合員のみなさんとの関係をより強い絆で結んでいく努力が必要です。
「生産」と「消費」を持続させるためには、「わかって作る」「わかって食べる」ことが基本だと考えます。私たちも組合員のみなさんに「わかって食べ続けて」いただけることを念頭に、「わかって作る」活動をこれからも続けていきますので、この紀伊半島の生産物や加工品のさらなるご利用をお願いします。


【次回生産者】

次回はエコシュリンプやバランゴンバナナなどの生産者、オルター・トレード・ジャパンの幕田恵美子さんの予定です。お楽しみに。

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