生産者リレーエッセイ

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vol.43

岩瀬 寛さん提携先新生酪農(株)

提携品目 パスチャライズド牛乳、プレーンヨーグルト ほか

生活クラブと一緒につくってきた自慢の牛乳です。新生酪農(株)

岩瀬 寛さん


 
 

入社してはじめて成分無調整牛乳のおいしさを知った         

2000年~ 現在のびん入りパスチャライズド牛乳私は学校給食でミルク(脱脂粉乳を還元したもの)をお椀で飲んでいた世代です。その後、脱脂粉乳と牛乳の混合乳、そして牛乳になりましたが、新生酪農(株)に入社するまで牛乳にはまったく興味がなく、学校給食で私が飲んでいた牛乳の“中身”がこのように移り変わっていた事実も入社してから教えてもらいました。
学校給食ではじめて飲んだミルクは独特のにおいがあり、冷めてくると表面に膜が張ります。この膜が口に残るところが好きになれず、いやいや飲まされていました。その後、びんに変わり膜の問題は解決しましたが、生ぬるくにおいが気になってあまり好きになることができませんでした。クラスメイトと早飲み競争をしたりふざけたりして、気を紛らわしながら飲んだ記憶があります。このイメージが強く残り、卒業後は牛乳を飲むことはありませんでした。こんな私が今や牛乳についてお話をする機会をいただいているわけですから、自分自身驚きです。

~1988年 120℃2秒間殺菌の成分無調整牛乳。「液面下充填(じゅうてん)方式」の四角い紙パック入り。新生酪農に入社して、牛乳に対する概念が一変したことを今でも鮮明に覚えています。1986年に入社して間もなく、殺菌後の牛乳を液面下充填(じゅうてん)方式で四角い紙パックに詰める充填業務の補助を担当することになりました。製品検査項目に風味検査がありました。どちらかというと牛乳嫌いだった私にとって、「いよいよきたな」と覚悟を決めた瞬間でもありました。ところが、飲んでみると「うまい!」のです。当時、新生酪農では生乳を検査し、120℃で2秒間の殺菌を行なう超高温瞬間殺菌法(UHT法)といわれる方法で「成分無調整牛乳」をつくっていました。それまで私が飲んでいたものとはまったく違うものだったのです。これを機に充填業務が楽しみとなり、牛乳に興味を持つようになりました。成分無調整牛乳の価値を知るにつれ、これを生活クラブの組合員に届ける仕事に誇りを持つことができました。

より自然に近い牛乳を求めて誕生した「パスチャライズド牛乳」

1988年~ 72℃15秒間殺菌のパスチャライズド牛乳その私が72℃15秒間殺菌の「パスチャライズド牛乳」と出会ったことで、さらに驚愕の事実を知ることとなりました。その頃は、乳成分を調整したものも「牛乳」として出回っていましたから、新生酪農の成分無調整牛乳は本物であるがゆえにコクがあるのだと、私は絶大な自信を持っていました。「パスチャライズド牛乳」はサッパリ感があり、サラサラとした風味でした。それが牛乳本来の味であり、私が「コク」と信じて疑わなかったのは、殺菌処理に伴うたんぱく質の熱変性臭(加熱臭)のひとつだったのです。                                    
~2000年 かわいい牛のデザインは組合員によるもの新生酪農は、牛乳の集団飲用からスタートした生活クラブが生産者と共同出資して1978年に千葉県の睦沢町に設立した会社です(現在は千葉工場)。今では栃木工場、安曇野工場とともに操業し、生活クラブに牛乳を供給しています。
そのなかで、乳質向上に取り組む酪農家と、より自然に近い牛乳を求めた組合員、双方の熱意から誕生したのが「パスチャライズド牛乳」なのです。
牛から搾ったばかりの生乳には病原菌がいる可能性があるため、熱による殺菌が必要です。しかし、熱を加えると乳質が変化してしまい、自然な風味は損なわれてしまいます。「パスチャライズド牛乳」とは、この「病原菌を殺す」と「できるだけ生乳を変化させない」の2つを同時に満たすように熱処理されたものをいい、新生酪農では「72℃15秒間」で殺菌しています。 
生乳の質はできあがる牛乳に影響を与えます。生乳の中にいる菌の数(生菌数)や菌の種類によっては、72℃15秒間の殺菌では生き残るものがいるためです。「パスチャライズド牛乳」はたんぱく質の熱変性が少なくより生乳に近い牛乳といえる反面、温度管理を誤ると生き残った菌が増殖を始め、凝固や風味異常などを引き起こす可能性のある牛乳でもあります。そのため、提携生産者は菌数の少ない生乳をつくるために日々努力しています。製造する私たちはもちろん、流通から保管、飲用に至るまで、生活クラブ側も温度管理に対する概念を変える努力を惜しまず実践したからこそ続けることができたといえるでしょう。
その後、さらにおいしく味わっていただくことと資源の有効活用を考え、現在、みなさんに飲んでいただいています900mlリユースびん入りとなり、今日に至っています。

生産者と組合員と工場の“顔の見える関係”

1987年開催の「生き活きまつり」のピーアール入り千葉工場では2006年から地元睦沢町や工場周辺の茂原市、長柄町の幼稚園、小学校、中学校の給食に200ml入りのびん牛乳を供給しています。当然、「パスチャライズド牛乳」です。工場前の販売店には「牛乳嫌いだった子どもが飲むようになったので買いに来ました」などと足を運んでくれた親子もいます。ストローではなく、びんから直接「パスチャライズド牛乳」を飲んで育ったこの地域の子どもたちが、大人になっても牛乳が好きでいてくれることを願うばかりです。
最後になりますが、1980年代に生活クラブで行なっていた「生き活きまつり」をピーアールする文字の入った牛乳パックが見つかりました。私が入社した当時は組合員と生産者と工場の交流も盛んに行なわれ、“顔の見える関係”をさまざまな行事を通して肌で感じることができました。工場見学や酪農家に泊まりながら交流する酪農体験学習、運動会やソフトボール大会、そして生き活きまつりなど。お互いが足を運ぶ機会をつくり、共同主催する努力を惜しまなかったことで実現していました。
生活クラブのよいところは、「生産者の顔」「組合員の顔」「工場の顔」が消費材を介して見え、お互いを身近に感じることができるところだと思います。毎年夏には、地元や生活クラブ、生活クラブ親生会、酪農組合などの協力をえて「新生酪農ミルクまつり」を開催していますが、これからももっとこのような交流ができればと思っています。


【次回生産者】

かつお炭火焼たたきの生産者、枕崎市漁協の加藤成利さんの予定です。お楽しみに。

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