生産者リレーエッセイ

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vol.46

佐藤 尚志さん提携先(株)秋川牧園

提携品目 鶏肉、とりがらスープ、他

伝えることの大切さ「よい人生に よい食べ物」を

佐藤 尚志さん


 
 

ひとの口に入るものに間違いがあってはならない    

鶏肉モモ500g私たち(株)秋川牧園は、本州の最西端、山口県に本社を構えています。現在、農場は山口県をはじめ、島根県、福岡県、熊本県におよび、12軒の農場と提携を結び、「国産鶏種はりま」の飼育に励んでいます。
一般的にいわれるブロイラーとは「肉用鶏」のことで、「焼く」という意味の英語「broil」が語源であるといわれています。第二次大戦中、肉を主食とするアメリカ兵への食料供給のために飼育日数が短く大量に生産できる養鶏の技術が開発されたのが始まりです。どうしたら収量が上がるのか、どうしたらコストを下げられるのか、などといった観点から開発は進められました。狭い鶏舎に多くの鶏を詰め込み、窓を閉めきって光を遮断することで運動を抑制し、高タンパクなエサを与え、病気は薬で解決する――現在ではこのような飼育方法に至っています。本来、大事にすべき「ひとの口に入るものに間違いがあってはならない」という大前提が置き去りにされたものです。このブロイラー養鶏は昭和30年代に日本にも入ってきて、今も日本の多くの生産現場で行なわれています。
私たちはそのような“業界の常識”に挑戦し続けてきました。なかでももっとも顕著な取組みが無投薬飼育の確立でした。一般的なブロイラー養鶏では狭く劣悪な環境のなかで飼育されるため病気が発生しやすく、それを抑えるために抗生物質や抗菌剤を使わざるをえません。1坪あたり60羽もの鶏を詰め込むのが一般的というのですから無理からぬこと。当時、無投薬飼育は不可能とまでいわれていました。秋川牧園では1坪あたり35羽(冬は40羽)までに抑え、風通しのよい開放的な飼育環境を整えるなどの試行錯誤を繰り返し、失敗を重ねながらも、なんとか無投薬飼育を実現しました。
また、飼料についても、非遺伝子組み換え飼料やポストハーベストフリーコーン*の確保、飼料米の取り組みなど、生活クラブとともに飼料の自給率向上も目指しています。
*ポストハーベストフリーコーン…品質保持のための収穫後農薬を使わないコーン

「国産鶏種はりま」で種の自給をめざす

近年では「国産鶏種はりま」の取り組みを開始し、種を国内で維持管理するという新たな、そして大きな課題に向けての活動を進めています。
皆さんは日本で育てられている鶏肉の98%の原種が海外から輸入されたものだということをご存じでしょうか。それらの原種が産まれ育った環境も、どんなエサを食べているのかもわからないのです。何らかの事情で輸入がストップしたらどうなるのか。
「はりま」は兵庫県の旧播磨地方で育種された、日本生まれの日本育ち。3代前までトレーサビリティが確立している鶏です。2001年より生活クラブとともに国産鶏種の開発を始め、2004年より供給をスタートさせています。日本の鶏肉生産者の大半が育てている外国鶏種と比べ、育種改良という点では15年程度遅れているといわれています。同じような条件で育てても、外国鶏種よりエサをたくさん食べても大きくならず、途中で死んでしまうケースがまだ多いのも現状です。しかし、輸入に依存しきるのではなく、種まで国内で自給するという大きな意義のために、私たちは日々、努力を続けています。

明るく開放的な農場でのびのび育てられている「はりま」。大きな赤い受け皿は給餌器、小さいものは給水器。

知って選ぶことから大きな力が生まれる

フライパンチキン生活クラブには安心・安全な消費材が揃っています。今では消費者の間に安心・安全な食への関心が高まり、以前に比べて手に入りやすい時代になってきました。しかし、養鶏業界全体を見ても、生活クラブと私たちとで行なっている、種の自給まで含めた高次元の取り組みは他に類を見ません。私たちはその取り組みの意義を学習会や交流会を通して伝え続けていますし、伝える努力をやめてはいけないと思います。それと同時に、組合員の皆さんも生活クラブに任せきりにするのではなく、自分の目で見て、耳で聞いて、味わって、ちゃんと自分自身で確かめて選んでほしいと思います。
私たちはこれからも「はりま」の生産を通して、皆さんの継続的で健やかな暮らしに貢献します。皆さんにはぜひ「はりま」を味わっていただきたいと思います。なぜならそれは、おいしい鶏肉を食べるということだけではなく、皆さんの日々の食卓から、皆さんが知って選ぶということから、実は大きな力が生まれているからです。種や飼料の国内自給力を高めること、非遺伝子組み換え飼料やポストハーベストフリーコーンの安定的な確保、生産者の精力的な生産活動にまで、いろいろなことに繋がっているのです。そのことを感じ取りながら、選んでほしい、利用してほしいのです。そうすれば皆さんの生活がまた一段と豊かなものになるはずだと、私は信じています。
 これからも伝えることを大切にしていきたいと思います。
「よい人生に よい食べ物」を――。


【次回生産者】

小麦粉の生産者、日東富士製粉(株)の宮代信昭さんの予定です。お楽しみに。

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