生産者リレーエッセイ

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vol.73

田口 芳久さん提携先東しゃこたん漁業協同組合

提携品目 古平のいくら醤油漬、ほっけ開き(古平)、古平パック 他

北海道の海の幸を生かした、より本物志向の消費材の開発を

田口 芳久さん


 
 

地球温暖化の影響で北の海が変わってきた

古平のいくら醤油漬東しゃこたん漁業協同組合は、2004年4月に旧古平(ふるびら)漁協、美国漁協、積丹(しゃこたん)漁協の3漁協が合併して設立されました。北海道西海岸の中央に突き出た積丹半島の東側海岸に位置し、北海道で唯一の海中国定公園である「ニセコ積丹小樽海岸国定公園」に含まれる美しい海に恵まれています。どこを見てもエメラルドグリーンの海は「積丹ブルー」と呼ばれるにふさわしい美しさです。

その美しい海に育まれた北の海の幸が四季を通して漁獲されますが、近年、地球温暖化の影響か、海水温が上昇し、季節により獲れる水産物に変化が見られます。
東しゃこたんは、ほっけ、うに、えび等、動力船を中心に水揚げされる水産物が主力でしたが、ほっけについては、北海道全域で不漁になっているのが現状です。海水温の上昇が原因なのか、定かではありませんが、ここ数年、漁獲量が減少し続けています。

古平パック蝦夷(えぞ)バフンウニは、海水温の変化に非常にデリケートだと聞いていましたが、海水温の上昇に伴って磯焼け(沿岸に生息する海藻が消失すること)が進んだことで、海藻を餌とするウニは卵巣が発育しないため身入りが悪くなったり、海中で死滅しているものが多くなり、これらが原因で漁獲量が大幅に減少しています。

えびについては、数年前から小型のものが漁獲量全体の約半分を占めるようになってきています。えびは成魚になってからオスからメスへ変わり、産卵します。それが、子孫を残すために、成魚になっていないえびもメスへ変わり産卵するようになっています。このままでは資源が枯渇すると心配されていましたが、当組合では4、5年前から漁獲量の減少が続き、2015年度は前年対比60%減となっています(2015年10月末現在)。

一方で、これまで北の海では漁獲されていなかったブリ等が、数年前から北海道全域で大量に水揚げされる現象もあります。海の中が変わってきています。獲れるはずの水産物が獲れなかったり、漁獲時期のずれ込みが見られたり。漁獲量が大幅に減少しているため、原料価格が高騰し、水産加工品の価格も高騰しているのが現状です。

「獲る漁業」から「育てる漁業」へ

これからは「獲る漁業」から「育てる漁業」に転換していかなければ、漁業が成り立たなくなることが危惧されます。
そのため、当組合では数年前から、にしんの種苗放流(人の手で育てた稚魚を海に放流すること)を行なっていますが、その効果が表われてきています。昭和初期頃を最後に水揚げが激減していたにしんが石狩湾沿岸で漁獲されるようになり、順調に水揚げされています。まさしく、「育てる漁業」の効果が表われているのだと思います。

高度衛生管理型の古平地方卸売市場を新設

工場外観水産業にとって安心・安全対策は避けて通れない課題です。水産流通の出発点である産地市場として衛生管理レベルの向上と標準化を図る必要があることから、2014年4月に古平地方卸売市場を新設。温度管理や衛生管理が徹底できる閉鎖型(屋内型)の高度衛生管理型市場に生まれ変わりました。

施設内には自動手洗い・アルコール噴霧による消毒設備を備える等、人の手を経た水産物への病原菌の付着・増殖を未然に防止できるようになっています。また、隣接する食品工場との距離が近くなり、市場で買い付けた水産物は30秒足らずで工場へ搬入できるようになりました。

この優位性を生かして、さらなる安心・安全の向上を図るとともに、少量多品種の水産物が獲れる地の利を生かした消費材開発が重要になると考えています。

本物志向の「古平のいくら醤油漬け」

生活クラブの組合員の皆さんには本物志向の消費材をご利用いただいています。多くのアイテムのなかから、私たちの消費材づくりのこだわりを「古平のいくら醤油漬」を例に紹介します。

市販品の多くのいくら醤油漬は、いくらを長時間、調味液に漬け込み、調味液をふんだんに吸わせて、卵がパンパンになったところでザルにあげ、容器に詰めて冷凍しています。この工程でいくらはかなり増量します。この重量増しにより歩留まりの向上と、利益の確保を図っているのです。解凍すると、いくらが調味液を吐き出し、容器の中がウェット状(容器の中に調味液が浸み出している状態)になっている製品が見られます。

当組合のいくら醤油漬けは、卵粒を分離したら、まず、食塩だけを使用して独自の前処理を行なった後で、短時間、調味液に漬け込んで熟成させます。この調味液は生活クラブの提携生産者の醤油、みりん、清酒だけを使用したものです。解凍しても調味液を吐き出すことがない、完全ドライタイプのいくら醤油漬になります。とにかく手間がかかり、歩留りもよいとはいえませんが、本物のいくら醤油漬を組合員の皆さんに堪能していただきたくて、長年、この方法を変えずに製造を続けています。
この理念を曲げることなく、今後の製品開発につなげ、より本物志向の消費材の開発をしていきたいと思っています。
 

(2015年11月掲載)


【次回生産者】

純米酒 遊佐来などの生産者、合資会社杉勇蕨岡酒造場の茨木高芳さんです。お楽しみに。

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