生産者リレーエッセイ

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vol.75

古川 あゆみさん提携先(株)プレス・オールターナティブ

提携品目 メープルアーモンド、レーズン、干しプルーン、黒糖くるみ 他

「問題解決を通して社会を変える!」を使命に30年

古川 あゆみさん


 
 

フェアトレードの草分け

社名のプレス・オールターナティブの「プレス」は発信、「オールターナティブ」は今までのやり方ではないもうひとつの、という意味です。1985年の設立当時は、大量生産・大量消費の時代。でも一方では、世界的にも経済格差や伝統文化・技術の喪失など、さまざまな問題が顕在化してきていました。そんななかで、「市民の手で地域・社会の問題解決をすること」「問題解決を通して社会を変えること」を使命として立ち上がりました。

海外には、貧困とそれによってもたらされる諸問題を抱える国や地域がたくさんあります。それを解決する方法のひとつが「フェアトレード」です。そういった国や地域の人々から適正価格で直接輸入し、国内で販売する。それによって現地の仕事づくりや生活向上を応援しようとする方法です。翌1986年に、輸入食品や雑貨を販売する店舗「第3世界ショップ」を東京目黒に立ち上げ、日本で初めてフェアトレードを事業としました。

2015年、当社は創立30周年を迎えました。その過程で見えてきたのは、これらの国や地域に見られる地域の過疎化、高齢化、後継者難、伝統的文化や技術の喪失といった問題は、日本国内でも共通する問題だということです。
現在では国の内外を問わず、地域の「困った!」の声を、地域の人たちと一緒に事業化することで問題を解決する「コミュニティトレード」へと活動の場を広げ、安心社会をつくるために活動しています。

生活クラブとの出会い

     メープルアーモンド生活クラブとの出会いは1987年。生活クラブの組合員が地域活動として行なっている神奈川ネットワーク運動の選挙応援を、創業者の片岡勝が手伝ったことがきっかけでした。互いの活動に共感し、東ティモール独立運動支援のために輸入しているポルトガルのダンワインを供給したのを皮切りに、以降、烏龍茶、メープルシロップ、ドライフルーツ・ナッツ類などと、提携品目は現在、30品以上に拡大しています。

当初は、海外の食品を輸入して国内で小分けして供給するだけでしたが、最近では、国内の菓子メーカーと提携して、それらを原材料として組み合わせたオリジナル菓子などの開発も行なうようになりました。これにより、現地からの安定的な食材の購入、新しい食文化の提案、伝統技術の継承などに加えて、国内の中小菓子工場の活性化にもつながり、より多くの問題解決に結び付いています。メープルアーモンド、黒糖くるみ、緑茶くるみ、カシューナッツ カレー味、レーズンチョコ、珈琲豆チョコ、紅茶アールグレイなどはこのような取り組みから生まれた消費材です。

シンプルな原材料だけで作る「メープルアーモンド」

メープルシロップもアーモンドもとても人気のある消費材です。このふたつを組み合わせて菓子を作ったら、組合員の皆さんにも喜ばれる、とてもおいしいものができる、それはわかっていました。ところが、これだけを原材料にした菓子は市販品にはありません。
風味を維持したまま製造原価を下げるために、また、食感や品質を安定させるために、砂糖や還元水あめ、メープル風味の人工甘味料、保存料、香料などの食品添加物が必要だからです。でも、それらを使ったら、私たちが作る意味がありません。ここから菓子職人との試行錯誤が始まりました。

原材料はアーモンド、メープルシロップ、隠し味の塩だけ。シンプルな原材料ゆえに製造技術がものをいいます。メープルシロップは3分の1が水分のため、適度に煮詰めて、ここというベストなタイミングでアーモンドを投入しないと、カリッとした食感に仕上りません。職人が言うには、天然のメープルシロップを使うより、砂糖を水で溶かしたほうが各段に品質が安定して作業がしやすいそうです。

このような試行錯誤を経て、「メープルアーモンド」は製品化されましたが、期待に反して利用は低迷。時々、「酸化臭がする」というクレームがくるくらいでした。すでに開発に時間も労力もかけていたため、ここであきらめようかと何度も思いましたが、必ずやおいしいメープルアーモンドができる、私たちが持っている厳選した原材料だけで作ることができる、という想いから、再度チャレンジすることにしました。
 

アメリカ・カリフォルニア州の有機栽培のアーモンド畑と生産者(左写真)。アーモンドの実。完熟するにつれて緑色の果肉が割れ、中から黄金色の種実が出てくる。

原材料、製造工程、パッケージを見直して、再チャレンジ!

原材料のアーモンドは、当時の消費材である、あらかじめオリーブオイルと塩で味付けをしたローストアーモンドを使っていました。このアーモンドを加熱して煮詰めたメープルシロップに投入するのですが、オイルコーティングされたアーモンドを再加熱しすぎると酸化しやすく(酸化臭の原因はこれでした)、逆に、加熱が足りないとカリッと仕上がらないという難しさがありました。

そこで、アーモンドを素煎り(現在の消費材の「アーモンド(食塩不使用)」も素煎りです)に変え、再加熱の温度、投入のタイミングなどを職人と何度も試して、カリッと香ばしいアーモンドの食感と、メープルシロップの上品な甘さが生きた製品に仕上げることに成功しました。

採取した樹液をシロップに加工する小屋。煮詰めるための煙が出ている(カナダ・ケベック州)(左写真)。メープルアーモンドの製造工程。アーモンドを投入するために、煮詰めたメープルシロップの温度を計る菓子職人。

パッケージも酸素などを通しにくいアルミを使った袋にしました。まれに「脱酸素剤と乾燥剤が大きすぎる」というご意見をいただきますが、食品添加物を使用していない分、食感や風味を維持するために必要なのです。

このようにリニューアルしてから、注文はいっきに増えました。メープルアーモンドは、おいしいだけでなく、たんぱく質が豊富で栄養面でも価値があります。アーモンドがアンチエイジングに効果的な抗酸化作用の高い食品であることは知られていますが、アーモンドに含まれるマグネシウムがカルシウムの吸収をサポートするため、ヨーグルトのトッピングなどにもおすすめです。まだ召し上がったことのない方は、ぜひお試しください。

カナダ・ケベック州のメープル林。サトウカエデの幹に傷をつけ、そこからあふれ出す樹液を採取する。チューブを使う方法が一般的だが、一部の生産者はバケツに集める伝統的な方法で採取している。

(2016年1月掲載)


【次回生産者】

牛肉などの生産者、北海道チクレン農業協同組合連合会の竹田伸さんです。お楽しみに。

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