生活クラブの挑戦ー手づくりの「地域福祉」を目指して

「生活クラブ館まちだ」多世代に食と住まいの安心を

2018年5月号

今年2月1日、東京都町田市にオープンした「生活クラブ館まちだ」は、多世代が集う居場所となる機能を備えた5階建ての複合施設だ。高齢になっても自分らしく健やかに暮らすための地域福祉の拠点となる。

生活クラブ東京(本部世田谷区)が配送センターの跡地を活用して建設した「生活クラブ館まちだ」。2階~5階の4フロアはサービス付き高齢者向け住宅「センテナル町田」(全38戸)、1階には、地域の人や組合員が活動の場として利用できるイベントスペースや「子育てひろば」、生活クラブの食材で料理を提供するカフェなどがある。

「生活クラブ館まちだ」は、地域の人も参加する「町トレ(町田を元気にするトレーニング)」の会場にもなっている

「共生の住まいづくり」は、かねてより生活クラブ東京の大きな方針の一つだった。高齢になる組合員も増える中、高齢者が安心して住める住居に目標をしぼり、検討を進めていた折、配送センタ―再編の話が持ち上がった。地域状況や事業としての持続性も考え、センター跡地はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にという方向がまとまった後、多摩南生活クラブ(本部町田市)の組織「まち町田」の組合員や市内のワーカーズコレクティブなど生活クラブの関連団体で「町田プロジェクト」が結成され、具体的な検討がスタートした。

同プロジェクトでは、最初に説明会を開催し、どういうサ高住を望むのか組合員の声を聞いた。プロジェクトメンバーで、生活クラブ東京の理事長でもある土谷雅美さんは「何よりも『安心できる住まいを一という声が多かった」と話す。高齢期の一人暮らしは特に夜が不安だと訴える声があった。まだ40~50代の頃からそう思う人が多いのに驚いたと土谷さんは言う。「安全な食を通じて生活クラブに信頼を寄せる人は多く、同じように生活クラブの住まいだからこそ『安心』を求める声が多いと実感しました」

サ高住には、安否確認サービスと生活相談サービスの2点が義務付けられているが、基本的に「介護の必要がない、元気な高齢者のための施設」だ。

安否確認サービスも、夜間は警備保障会社と連携するところが多い。だが、土谷さんは一組合員の不安に応えるには、24時間スタッフがいるという安心感が不可欠」と思ったという。人を配置するのは大変なことだが、長年地域の介護を担ってきた実績のある「NPO ACT町田たすけあいワーカーズ」に担い手を依頼した。多くの介護事業所と同じく、同ワーカーズでも介護現場の人手不足には悩んでいたが、人材募集も含め、今後の活動を生活クラブが共に行うということで事業は動き出した。実際に建設が始まると、組合員や地域住民の中から、各事業に参加したいという人がたくさん現れ、介護、食、子育ての三つの事業を担う体制が同時進行で形成されていった。

サ高住の名称、センテナル町田は組合員の公募により名付けられた。1世紀以上生き抜いた人のことを「センテリアン」と呼ぶことから発想したものだという。

食事がおいしい、見守りで安心

部屋で談笑する奥原文一さん(右)と息子の弘史さん(中央)、孫の山崎友理子さん(左)

センテナル町田の入居者第1号は奥原文一ぶんいちさん(92歳)だ。市内在住歴は長く、10年ほど前に妻を亡くした後、 一人暮らしを続けていた。家事もこなし趣味も多彩だが、食事の用意に不都合を感じていたのと、大事には至らなかったが軽い脳梗塞を起こしたこともあり、有料老人ホームヘの入居を検討していた。ちょうどそのころ、この場所から徒歩3分ほどのマンションに住む孫の山崎友理子さんが、センテナル町田の入居者募集のチラシを目にする。さっそく、友理子さんの父で文一さんの息子、相模原市に住む奥原弘史さんにその情報を伝えた。友理子さんも弘史さん夫婦も生活クラブの組合員、話はスムーズに進み、文一さんは弘史さんと一緒に説明会に出向いた。弘史さんは「生活クラブが運営する施設なら食事は大丈夫と思いました。さらにたすけあいワーカーズの方が見守りをしてくれると聞き、 一層安心しました」と話す。内覧会に行き、最上階で窓から友理子さんのマンションが見える角部屋に入居を決めた。

「食事がうまいんだよ。毎日3食いただいているが元気が出る。それから、毎朝スタッフの人が部屋にきて声をかけてくれる。ここに来るまでは毎朝息子の妻の携帯に安否確認のために3コールする約束だったが、その必要もなくなった」と文一さん。安心な暮らしとおいしい食に満足しているという。

部屋にはパソコンや趣味の大工仕事でこしらえた小さな仏壇も置かれて、コンパクトな暮らしが始まっていた。弘史さんは「高齢になって、集合住宅で共同生活するのは不安もありました。試しに暮らしてみたらとすすめましたが、順調のようです」と安堵する。友理子さんは「近くにおじいちゃんが住んでくれてうれしい」と1歳半になる息子を連れて、散歩がてら文一さんの部屋を訪ねてくる。1階の子育てひろばで遊ぶこともある。ひ孫との時間は文一さんにとっても楽しみだ。

支え合う機能も含めた住まいづくり

60歳以上の自立生活者を対象とするサ高住では、バリアフリーであっても車いすなどの生活に対応した設計でないところもある。その場合、介護が必要になれば退去せざるを得なくなることもある。

センテナル町田は、30平方メートルの居室の中に、滑りづらい床で手すりも付いた介護タイプのバスユニット、介助者が寄り添って車いすでも利用できる広いスペースのトイレがある。キッチンは車いすでも使いやすいように低めの設計。緊急時にスタッフに連絡がとれるナースコールは室内に3カ所設置されている。

ゆとりのあるトイレや浴室は介護者からのアドバイスも取り入れた設計になっている

また、サ高住は自由度が高いとされる反面、交流の少なさから住民が孤立する傾向もある。センテナル町田は、各階にリトビングや和室などの共有スペースを設け、食事も一緒にとれるようにしている。今後はその場を利用して、入居者同士が集い、趣味の活動やイベントなどもできるようにしていく予定だ。

「入居当初は介護を必要としない元気な人たちも年月を重ねる間に体にさまざまな変化が生じてくることがあります。そんな時も暮らし続けられることを考慮したデザインにしました。また、市内で長年訪問診療に携わっている医療機関とも連携しています。新たに介護が必要になった場合は、ケアマネジャーの事業所や訪問介護・デイサービスなどが利用できるNPO法人を紹介することもできます。いずれも生活クラブの組合員が中心となって立ち上げた運動グループの仲間です。今後は、最期までセンテナルで過ごしたいと思ってもらえるようにしていきたいと考えています」と土谷さん。支え合う機能も含めた住まいづくりを実現したいと言う。

地域の高齢者を支え、多世代が集う生活クラブ館まちだ。さまざまな機能を活用し、これからの地域福祉の拠点となっていく。

撮影/高木 あつ子  文/中野 寿ゞ子

生活クラブ館まちだ◆「センテナル町田」では現在入居者受付中。申込み・問合せは生活クラブ東京たすけあいネットワーク事業部/電話 03-5426-5207

『生活と自治』2018年5月号の記事を転載しました。

【2018年5月15日掲載】