生活クラブの挑戦ー手づくりの「地域福祉」を目指して

組合員の活動スペースで地域の介護予防に貢献 生活クラブ生協埼玉・草加支部「花カフェ」

2017年12月号

サービス利用者の年齢が80代から90代なら、この人たちを支援するボランティアスタッフの年齢も60代から70代。そんなユニークな介護予防サービスの場が埼玉県草加市金明町の住宅街の一角にある。

みんなで風船バレーを楽しむ

「これ楽しい~」、「もう一回!」
元気な声が10畳ほどのダイニングキッチンに響く。テーブルを囲んでの風船バレーに夢中になっているのは、還暦を超えたシニア女性たちだ。トスした風船が床に落ちそうになるたびにどよめきが起きた。少し息が上がったところでティータイム。参加者は自己紹介代わりにと、お国(出身地)自慢を披露しあう〝リレートーク″ が始まった。

ここは埼玉県草加市の金明町きんめいちょうにある「くらぶルーム・花グループ館」。生活クラブ生協埼玉(本部・さいたま市)に加入する草加市の組合員からなる草加支部が、住宅地にある2階建てのアパートの3LDKの部屋を借りて運営する。

同支部では、花グループ館を地域の組合員活動に必要不可欠なスペースと位置付け、25人以上の組合員が参加する共同購入グループ「組」に配達される食品や日用品の荷受けや仕分けをはじめ、市民講座や各種イベントの会場として活用してきた。同館は利用規程に同意すれば、だれもが自由に使えるという地域に開かれた空間でもある。

今年4月、草加支部では花グループ館の新たな活用案を検討し、地域住民の介護予防に貢献するコミュニティーの場「花カフェ」開設を決定した。
約2カ月間の準備期間を経て、6月にオープニングイベントを開催。以降、毎週金曜日の午前10時から正午まで、「要介護1」「同2」の介護認定を受けた人を対象にした軽めの体操やレクリエーションなどを提供している。その一つが冒頭で触れた風船バレーで、他にも演歌に合わせて体を動かしたり、口を大きく開けて文字を読み上げたりと、お茶とおしゃべりを交えたプログラムがテンポ良く進められていた。

保苅恒子さん

そんなひとときを楽しむ人たちの姿に目をやりながら、「生活クラブの組合員活動に欠かせない施設の花グループ館を、地域の福祉に役立てられたのが何よりうれしい」と話すのは、花カフェ実行委員会代表の保苅恒子さん。草加市が進わる「介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)の事業者指定に名乗りを上げてみてはどうかとの話が出たとき、「真っ先に賛成した組合員のひとりが、わたしです」と笑顔で話す。

総合事業サービスの担い手として

総合事業は介護保険法の一部改正により、2015年4月に導入された。この結果、「要支援1」や「同2」の介護認定を受けた人を対象とする「介護予防訪問介護(ホームヘルプ)と「介護予防通所介護(デイサービス)」が、各市町村の事業になった。既存の介護保険事業者に加え、市町村の住民や介護保険事業者指定を受けていなかった事業者にも、介護サービスの担い手になってもらい、多様な福祉サービスを提供するのが目的だ。

総合事業には、介護保険事業者と民間事業者、民間非営利団体(NPO)法人やボランティア団体などが担う「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」がある。前者は介護認定「要支援1」「同2」の人を対象に訪問型や通所型のサービスを提供。後者は当該事業の利用者が自分の力で日常生活を送れる生活機能の低下を防ぎ、買い物や散歩といった続けられる身体機能の向上を目指したサービスを提供する。

今年4月に草加市がスタートした「介護予防・生活支援サービス事業」は、訪問型と通所型に分類される。通所型サービスは民間事業者やNPO法人などが運動やレクリエーションを提供するA型、主にボランティアが軽めの体操などを実施するB型、保険・医療の専門家が生活機能を改善するための運動、栄養、口腔、認知機能の介護予防プログラムを行うC型に分類される。

草加支部では13年から組合員集会を重ね、まちづくり構想を策定。15年からは草加市と連携し「草加ふれあい・支え合い会議」に参加してきた。総合事業開始に向けた草加市からの要請を受け、生活クラブの組合員(人材)や施設などを活用し、通所型サービスを提供する方向での検討がはじまった。

同支部には花グループ館に加え、組合員活動のための「草加生活館」がある。そこを使ってNPO法人「コミュニティケアクラブ埼玉」が通所サービスA型を担い、花グループ館では草加支部の組合員を中心とするボランティアグループがB型を担う案がまとまった、これを草加市に提出し、同市の通所型サービスA・Bの事業者指定をそれぞれ得た。

賃貸アパートの1室にある花グループ館。週に一度「花カフェ」が開催される

利用者、スタッフ双方の居場所

利用者、スタッフでティータイム

現在、花カフェ実行委員会は13人で、毎月シフトを組んで運営に当たる。介護現場でボランティアを募るのは難しいといわれるが、花カフェの登録スタッフはスムーズに集まった。スタッフの多くが近隣で暮らす生活クラブの組合員で、当初から花グループ館の運営に関わってきたからだ。
「介護予防のための居場所づくりを提案したときも、これまで培ってきたお互いさまの関係を地域に広げる絶好の機会と受け止めてもらえました」と保苅さん。開所後、ボランティア活動に関心がある地域の人も、自発的にスタッフに加わってくれたという。

利用者の受け入れは地域包括支援センターからの紹介者を優先するが、スタッフが声をかけた近隣の市民が多いのが実情だ。散歩途中の立ち話がきっかけで花カフェに足を運ぶようになった人もいる。利用者の年齢は80代から90代が中心で、スタッフも60代から70代後半の人が多い。そのせいか、好きな歌や食べ物など、利用者とスタッフが共通の話題で盛り上がり、ともに体を使ったレクリェーションも楽しめる。花カフェでは毎回一人100円の茶菓子代を集めるが、これも利用者、スタッフの区別なく全員が負担する。こうした工夫が、サービスの提供者と受益者という「隔たり」を取り除く力となっている。

「利用者もスタッフも同じ目線。それぞれ自分のやりたいことができる。手作り感がある。それが花カフェの魅力ではないかしら」と言う保苅さんの問いかけに、スタッフ全員がうなずいた。もっとおおぜいの人に来てほしい。それが保苅さんをはじめ、スタッフ全員の願いだ。

 

『生活と自治』2017年12月号の記事を転載しました。

【2017年12月15日掲載】