地域発・夢の素描

設立から1年、「生活クラブ太陽すくすく保育園」の今

2018年5月号

物流部門の人材確保のために、生活クラブ連合会(本部東京都新宿区)が昨年2月、設立した飯能デリバリーセンターの事業所内保育所「生活クラブ太陽すくすく保育園」。食育・木育・親支援を基本方針として運営され、設立から1年が経過した。

太陽すくすく保育園の外観。飯能DCでは大型トラックが行き交う

埼玉県飯能市にある西武池袋線飯能駅から車で約10分。のどかな畑道を走ると、大型トラックの出入りする大きな産業施設が現れた。全国の提携生産者と各地域の生活クラブを結ぶ物流拠点、飯能デリバリーセンター(飯能DC)だ。飯能DCの事業所内保育所「生活クラブ太陽すくすく保育園」はその敷地内にある。

事業所内保育所は、文字通り、その事業所で働く職員専用の保育所だ。敷地内にあり、子育てをしながら働けるように企業が設置している。親にとっては、何かあっても子どもが近くにいるという安心感をもって働くことができ、送り迎えも楽、といったメリットがあり、企業にとっては、子育て世代の若い人材の確保が可能になる。

施設の床はもちろん、子どもたちが食事をするテーブルも木製。木のぬくもりを感じ、人と自然が共生する関係であることを学ぶ「木育」も「太陽すくすく保育園」の保育理念のひとつだ

太陽すくすく保育園は昨年2月に設立され、同連合会の関連会社など7企業に勤める人たちが、0~5歳の子どもを預けている。保育は、生活クラブ埼玉(本部さいたま市)の、保育経験を持つ組合員を中心に結成された「ワーカーズコレクティブにこにこ」が担う。事業所内保育所は企業の福利厚生施設なので、1時間当たり400円(利用者負担100円)で預けることができる。時間帯は「午前の部」「午後の部」「1日通し」に分かれていて、1日4時間から親のライフスタィルに合わせた柔軟な預け方が可能だ。

生活クラブ共済連・常務理事の伊藤由理子さんは、設立の目的を次のように話す。
「デリバリーセンターは、全国規模の物流を担うため長時間稼働しており、大勢の働き手が必要です。ところが最近は大手が十分確保できないうえに高齢化も進んできました。体を使う仕事なので若い人たちにももっと働いてほしいと思っていました。 一方で、働きたいのに子どもを預けられず働けない女性もいます。事業所内保育所を設置することで、そういった人たちに働いてほしいと考えたのです」

狙い通り、保育所の開設は、新たな人材確保につながった。高齢化の進んでいた生活クラブの関連会社の一つ、カワタキコーポレーションでは20人以上もの子育て世代の女性が働き始めた。評判はロコミでも広がり、今年3月現在、同保育園は定員19人を上回る人気となっている。

健やかな保育のために

木製の滑り台などで遊ぶ子どもたち

子どもたちの給食は、飯能DC内の食堂を運営する「ワーカーズコレクティブキッチン味蕾みらい」が提供する。こちらも生活クラブ埼玉の組合員を中心に結成された事業体で、食の大切さを伝える循環型の食堂をめざして運営されている。

食をめぐる子どもたちの様子を伊藤さんはこう話す。
「子どもと一緒に近所の畑に野菜を収穫に行くなど、調理する前の食材を見せています。食に興味をもち、『食べることが好き』という子どもに育ってほしいですね。『うちの子は食が細い』『好き嫌いが多くて』という子も多かったのですが、ここでは何でも食べるので、親が驚いています」

同保育園では食育に力を入れるほか、「親支援」を基本方針の一つに掲げている。「子どもへの虐待が社会問題になっています。原因の一つとして、親への支援が少ないことは大きい」と伊藤さんは話す。
1日4時間から預かるという柔軟な対応はそのためだ。子育てを一人で抱え込まず、困ったときには保育士にも相談できる体制づくりを心掛ける。

太陽すくすく保育園の保育士・藤井枝里さんは、「近くに頼れる親族がいなかったり、いても高齢では子どもの面倒は頼めません。子どもを預け、そのパワーを発散させる間に、リフレッシュできる数時間は貴重です。ストレスを子どもにぶつけることも少なくなるのではないでしょうか」とその意義を話す。

地域に開かれた存在に

「ワーカーズコレクテイブにこにこ」保育担当・藤井枝里さん

太陽すくすく保育園には、他の保育園にはない、いくつかの特徴がある。まず、年齢ごとのクラス分けがない。子どもの数も少ないので、家庭的な保育ができる。年上の子どもが年下の子どもの面倒を見ることもある。

また、週1日からの預かりが可能で祝日も子どもを預けられるので、他の保育園や幼稚園に通っている子どもが祝日だけここに来る場合もある。
「こういう預かり方をしているところは他にありません。飯能DCで働く人は祝日も出勤があるので、祝日に預けられる場所がないと困りますから」(藤井さん)

週1日だけ仕事をしたいと思う親にとってもこの対応はありがたい。現状ではフルタイムで働く親が優先的に保育園に入れる仕組みなので、週1日勤務では認可保育園への通園許可はおりない。なかには保育園に入るための前段階として、飯能DCで働き始める親もいるという。

伊藤さんは、同保育園のこれからについてこう話す。
「敷地内でお祭りをしたり映画上映会を開くなど、もっと保育園が地域に開かれた存在になれたらと思います」
伊藤さんは保育園創設前に企業内託児所を見学し、企業内に子どもがいると職場の雰囲気が良くなる、もめごとが減るなど、企業にどって良い影響があると感じたという。
すでに、交流企画として夏には流しそうめん、冬には人形劇なども開催されている。
「地域にはいろいろな人がいます。高齢者・障害者・子どもと分けるのではなく、園を通じて交流の機会をつくっていきたいです」(伊藤さん)

働けることに感謝

園にちらほらと保護者のお迎えが来始めた。午前の部で預かっていた子どもが帰る時間になったのだ。玄関先で、仕事を終えた保護者と保育士が、子どもを交えて談笑する。「どうしたの○○ちゃん、ばんそうこう貼って。泣いたかな」と聞く保護者に、「泣かなかったよねえ、○○ちゃん。お散歩で転んじゃったんです」と保育士。子どもの成長を親と保育士が見守る。

保護者のひとり、飯能DCの食堂で働く内田あやかさんは「保育園ができるって聞いたので、この仕事に応募しました」と言う。内田さんには3人の子どもがいて、長男は8歳。8年間ずっと子育て中心の生活をしてきた。
「週1回、たった4時間ですが、子育てを忘れて仕事に集中できるのはありがたいです。職場から保育園が日と鼻の先なので送り迎えの移動時間が少ないのもいいですね。私をここで働かせてくれてありがとう! と思っています」

撮影/鈴木貫太郎 文/黒澤あゆみ

『生活と自治』2018年5月号の記事を転載しました。

【2018年5月15日掲載】