地域発・夢の素描

「新基準」を先取り 生活クラブ連合会 食品表示への対応

2017年10月号

内閣府消費者委員会は全ての加工食品に原料原産地表示を義務付ける食品表示基準の改正案を、今年8月、内閣総理大臣に提出した。新基準は9月1日、公布と同時に施行され、約4年半の経過措置期間を経て、2022年4月に完全施行となる。

「社会が追いついてきた」

前田和記さん

食品表示基準改正前は干物など生鮮品に近い加工食品(4品日と22食品群)の原料に原産地表示が義務付けられていた。改正後は義務表示の対象が全加工食品となり、使用する重量割合が第1位の原料に原産地表示が求められる。

原産国が複数になる場合は、重量順に国名を表示するのが原則だ。
生活クラブ生協連合会で食品表示問題を担当する企画部長の前田和記さんは、今回の改正を「これまでまったく進まなかった課題の解決に向けて進展が見られました」と歓迎し、加工食品の原産地表示に対する生活クラブ連合会の対応をこう説明する。

「当連合会では、取り扱う全加工食品の原料について原産地を表示するための『指針』を2009年に決定し、10年から『消費材開発マニュアル』に載せて提携生産者にルールを周知してきました。全ての加工食品をまだ網羅しきれてはいませんが、これにより重量割合が上位3位までかつ重量割合5%以上の加工食品原料の原産地表示を開始しました。

16年6月には組合員に毎週配布される『週刊生活クラブ 食べるカタログ』やインターネット注文システム『eくらぶ』の品目説明欄にも包材表示と同様の原料原産地表示が記載できるようになりました。この取り組みにようやく社会が追いついてきた感じです」

「潮目」が変わった理由

今回の表示基準改正に先駆け、生活クラブ連合会が全加工食品の原料原産地表示を実現できたのには理由がある。取り扱う加工食品の国産原料使用率の高さだ。

一方、一般市場では原料(素材)を輸入し、国内で加工した食品をはじめ、すでに海外で1次加工された輸入原料を国内で最終加工した食品も数多く流通している。

海外で1次加工した原料には複数の素材が使われており、生産履歴の追跡確認(トレーサビリティー)が煩雑で、コストアップ要因にもなりかねないと食品業界は加工食品の原料原産地表示に難色を示し続けてきた。

今回、表示対象拡大への道が開かれたのは「消費者庁の『加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会』の委員に、表示対象拡大に前向きな事業者が指名されたのが大きかつたですね。あれで潮目が変わりました」と前田さん。

その事業者が全国農業協同組合中央会(JA全中)と全国漁業協同組合連合会(全漁連)だ。
「ともに協同組合の全国組織で、自らの実践から自給力向上のためには加工食品の原料原産地表示の義務化が必要であり、表示は可能と主張し、議論をリードする役割を担ってくれました」

例外表示はあるが ──

残された課題もある。全ての加工食品を義務化の対象とするとしながらも、2つの「例外表示」が認められた。
その一つが「または表示」で、原料原産地を「A国またはB国」と記載できる。「可能性表示」とも呼ばれ、原料の調達時期によって原産国が異なるなどの理由から、A国ないしはB国が生産した原料を使用していることを意味する。先に表示された国名が総使用量(重量比)の多かった原料の原産国だ。

もう一つが「おおくくり表示」と「または表示」の併用で、原産地が3カ国以上になった場合は「A国またはB国またはC国」(または表示)とするか、「輸入」(おおくくり表示)としていいとされた。これらの例外表示については、 一部の消費者団体から「誤認を招きやすい表示であり、消費者が混乱する」との懸念が示された。前田さんは言う。
「単に『輸入』と表示されただけでは、特定の原産国を避けたい消費者には不親切ですし、『国産または輸入』『輸入または国産』といった可能性表示プラスおおくくり表示では意味をなしません。しかし、『国産』の加工食品を選んで購入したいと考えている消費者にとっては、選択のための情報提供が進んだわけです。ここをまずは評価し、施行2年後の制度見直しの際に例外表示の課題点を改善すべきだと思います」

課題は残したものの、全ての加工食品を対象とする原料原産地表示が実現したのは「すでに日本の食品業界が自社製品に関し、 一定水準のトレーサビリティーを確立しているからではないか」と前田さん。このトレーサビリティーが遺伝子組み換え(GM)食品表示の改正を進めていく際にも重要なポイントになるという。

GM表示対象の拡大を

消費者庁は今年4月から来年3月までの日程で「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を設置した。17年8月現在、政府から具体案は提示されていないが、前田さんは重要な論点は2点に絞られるとみる。
1点目は表示の根拠に何を置くか。現在、日本ではGM由来の遺伝子または由来タンパク質が加工後に検出可能との科学的検出が根拠とされ、義務表示の対象も8作物と33食品群に限られている。対して欧州連合(EU)は、トレーサビリティーを根拠に全ての食品を義務表示の対象にしている。

「生活クラブ連合会もEUに倣った対応をしています。科学的検出に固執するかぎり、GM表示の対象は広がらず、消費者がGM由来食品を知らずに口にしているという構造は改善されません。ゲノム編集など新たな遺伝子改変技術由来も含め、トレーサビリティーを根拠に全ての食品を義務対象にすべきです」と前田さんは言う。

2点目が意図せざるGM混入率をどうするか。現行は5%以下であれば「遺伝子組み換え」と表示しなくても済み、任意表示で「遺伝子組み換えでない」とすることができる。

混入率をEU並みの「0.9%以下」か、韓国や台湾並みの「3%以下」に引き下げるべきとの意見もあるが、「実態を踏まえて慎重に検討すべき課題」と前田さん。安易に混入率を引き下げれば現行基準を誠実に守った上で「遺伝子組み換えでない」と表示された食品まで市場から駆逐されてしまう恐れも出てくるという。

「GM表示の最優先課題は義務表示対象となる食品の拡大です。今回、日本の食品業界は全ての加工食品を対象とする原料原産地表示に対応できるトレーサビリティーの確立を求められたわけです。この仕組みを利用すればGM由来かどうかの確認も可能でしょう」と前田さんは訴える。

撮影/越智貴雄   構成/本紙・山田 衛