地域発・夢の素描

生活クラブ千葉の「憲法カフェ」 「憲法の話を、いつもの場所でいつものように」

2018年1月号

憲法を学び、自由に意見交換をする。生活クラブ千葉にはそんな「コミュニティ」があり、自分たちの暮らしと憲法がどうかかわっているのかを確かめながら政治に関心を持ち、自分で判断する力を身につける場となっている。

手作りの「憲法カフェ」

生活クラブ千葉は、組合員が所属する地域により六つのブロックに分けられる。そのひとつ、千葉ブロック(千葉市、習志野市、八千代市など)には憲法を学ぶ三つの「コミュニティ」がある。

コミュニティは意志ある組合員が中心となり、地域で活動するグループだ。同ブロックには憲法のほかに料理や子育て、手芸、健康など思い思いの活動をする40(2017年11月末)のコミュニティがある。

千葉ブロック運営委員長の畔上久美さん

憲法を学ぶコミュニティの一つ「ママ憲法の会」は、千葉ブロックの子育て世代の組合員が中心となって立ち上げた。同ブロックでは、テーマ性をもって組合員同士が学び合う場として、公共広場の意味をもつ「フォーラム」を作り、消費、環境、福祉という大きな三つの枠組みのもと、それぞれにテーマを決めて活動を行う。
同ブロック運営委員長の畔上ひささんは16年度、福祉フォーラムの担当だった時、子育てをしているママが集まれる場を作ろうと、虫よけアロマスプレーや布ナプキンを作る講座、子育でママのためのおんぶ講座などを開催した。

なかでも2回開催した「ママたちの手作り憲法カフェ」は好評だった。名前は、若手弁護士が講師として全国に出張する勉強会「憲法カフェ」に由来するがここでは手作り。「自分たちが知りたいことを自分たちで調べながら話し合ったことがよかったのだと思います」と畔上さんは言う。

1回目は、12年に自民党が発表した日本国憲法の改憲草案と現行の憲法の読み比べをした。メンバーの柴田幸子さんが考えた集団的自衛権と個別的自衛権の違いをわかりやすく説明する寸劇も大好評だった。

2回目は「あたらしい憲法の話」など、憲法について書かれた気になる本を紹介し合った。「憲法の条文は何を意味しているのか、変えようとしている人たちは何を目的にどこをどう変えようとしているのかなど、本当のことはなかなか知ることはできません。どの本を読めばわかるのかと情報交換をしました」と畔上さん。2回の憲法カフェを終えた後、「このまま解散してしまうのは残念」と思い、コミュニティを作り今後も定期的に集まることを提案した。

こうしてママ憲法の会が誕生し、その後30代から60代の多世代にわたる約10人のメンバーにより、11回の憲法カフェが開催された。

子どもを育てるために

コミュニティメンバーの、ママ憲法の会に参加するようになったきっかけや目的はそれぞれだ。「学校で学んでいる子どもと一緒に憲法の話をしたい」「いろいろな人の意見が聞きたい」「以前と比べて一人の人間として意見を言ったり主張をすることが難しくなっているようだ」「自分の権利は守って行使していかなければいつの間にか権力に侵食されてしまうことを実感している」など。日々の暮らしのなかで、憲法と憲法をめぐる世の中の動きにきちんと向き合うことが大切であると考えている。

17年11月13日に開かれた憲法カフェでは、総務省のホームページの「国民投票制度」を参考に、憲法改正が発議され国民投票実施に至ったら具体的にどんなことが行われ何が起きるのかを話し合った。

さらに憲法第9条の読み合わせをし、13年の参議院議員選挙で自民・公明両党が衆参両院で多数派を占めて以来、15年に「安全保障関連法」が成立するまで、安倍政権が行ってきた政治のあり方などについて意見交換を行った。

ママ憲法の会の代表となった柴田さんは「以前は憲法について、ほとんど興味がありませんでした。けれど11年に東日本大震災が発生し原発事故が起きた時、放射能についてメディアから知らされる情報が十分でなくとても不安になりました。また16年夏に行われた参議院選挙で候補者が言う『ストップ改憲』などの言葉が何を意味するのかもわかりませんでした。これから子どもを守り育てていくためには憲法を知らなければと思ったのです」

あまり近所づきあいがなかった柴田さんにとって、同じ地域に住む人たちと政治や憲法のことを思い切り話せる憲法カフェの存在は、とてもありがたかったという。「これからは、新しい人も参加しやすいように、憲法の話だけでなく、編み物などの手仕事をしながら楽しく続けられるような方法を考えたいです」

17年11月13日に「ママ憲法の会」により開催された「憲法カフェ」に参加したみなさん。右から2番目が「ママ憲法の会」代表の柴田幸子さん

不断の努力を普段から

生活クラブ千葉は第40回総代会(16年6月17日開催)で、基本方針のひとつに「子どもたちに戦争のない持続可能な平和な社会をつなぎます」と掲げ、平和な未来を守るため「憲法学習の場や選挙に行くことを促す行動への取り組みを進めていく」ことを決定した。

さらに40周年記念企画では、地域で活躍する2人の弁護士を招き「憲法についてあらためて考えてみよう」「憲法と私たちの暮らし、子どもたちの未来」と題した勉強会を開催し、憲法を学ぶ機会を持ちながら平和を守る運動に取り組んでいきましょうと組合員に呼びかけた。「憲法が変わり、それまでの暮らしがなくなってしまった時に初めてその存在に気付いたのでは手遅れです。憲法改正が発議され、国民投票にすすんだ時、メディアに流されるままに投票するのではなく、自分の考えを持って判断できる力をつけたいですね」と畔上さん。普通のママ友同士は「政治や憲法を話題にしようとしても、敬遠されがちです。私たちの憲法カフェでは憲法を当たり前のように話題にして、変えたくない人も変える必要があると思っている人も、自由に意見交換ができます」

17年5月、ママ憲法の会がほかの二つのコミュニティに呼びかけ、千葉ブロックとの共催で映画「不思議なクニの憲法」の上映会を行った。護憲派、改憲派にかかわらず、仕事や活動に関連のある憲法について出演者が話すドキュメンタリー映画だ。畔上さんはこれを見て憲法をきちんと知りたいと思うようになった。

「金沢市郊外で『紅茶の時間』を主宰し社会問題を学び合う場を提供している水野スウさんが、『不断の努力を普段から』というすてきな言葉を言いました。憲法第12条によると、憲法は基本的に権力を縛り、国民の自由と権利を保障するものです。私たちは憲法と暮らしがどのように結びついているかを知る努力を惜しまないようにしていきたいです」
生活クラブ千葉では、このような思いをつないでいくコミュニティが、他の地域でも作られようとしている。

 

撮影・文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2018年1月号の記事を転載しました。

【2018年1月22日掲載】