北の豊かな自然で育まれる畜産・水産品を視察
北海道の北東部、オホーツク海沿岸に位置する雄武(おうむ)町は豊かな水産物と牛の飼養で知られる町で、ホタテやサケ、牛肉の提携先があります。6月には生活クラブ連合消費委員の組合員ら10人が現地を訪れて、産地交流を実施しました。(2014年8月29日掲載)
命をいただく食の大切さを実感
雄武町は約4,800人の町ですが、牛は9,400頭いるといわれています。ここには生活クラブの牛肉の生産者である北海道チクレン農業協同組合連合会が提携する(有)おうむアグリファームという牧場があります。その草地は1,639へクタールと東京ドーム約350個分もあり、牧草などの粗飼料はほぼ自給できる環境です。産地交流会に参加した山﨑栄子さんは「自然交配で放牧されているアンガス牛を見て北海道の雄大さを感じました。安心な飼料と衛生的でリラックスできる環境づくりをしていることがよくわかりました」と話します。
組合員らは北見市にも足を伸ばし、北見食肉センターでと畜を視察。一般ではと畜の様子を見る機会はほとんどありません。しかし、北海道チクレン業務部次長の竹田 伸さんは「と畜は牛という生き物が肉という食物に変わる瞬間で、ぜひ見てほしかった」と、今回の交流企画に組み込んだ動機を話します。参加者は一同に緊張した面持ちで視察にのぞみました。
「一頭ずつ列になり命が断たれていく姿には手を合せました。解体は職人技とチームワークで、一頭が枝肉になるまで25分~30分という早さ。このスピードが衛生面で重要だと知りました。BSE関連では、脊髄の吸引と検査について説明を聞き、廃棄部位処理の焼却施設を見学しました」と、竹田京子さんは語ります。
また北海道チクレンミート北見工場では、枝肉が40の部分肉に分けられる行程や放射能検査の状況を確認しました。高塩徳美さんは「牛の生産からと畜、加工、流通を一貫して行なう北海道チクレンだからこそ、安全な肉ができることを確認しました。私たちの牛肉の質のよさ、命をいただく大切さをしっかり伝えなければならないと改めて痛感しました」と感想を述べています。
活気あふれるほたての水揚げを視察
雄武漁業協同組合の主な生産物は鮭、いくら、ほたて、毛がにで、生活クラブは北海道漁業協同組合連合会を通じて共同購入しています。参加者は朝6時前に漁港を出発し、沖合5~6キロメートルにあるほたての漁場で水揚げ作業を見学しました。当日の海は波がなく穏やかでしたが、船はほたてを引き上げる側に傾きます。「その船のヘリにぴょんと飛び乗って作業をしています。波の強い時はどんなだろうと心配になりました。やはり海は危険と隣り合わせで、おいしいほたても、この作業なしでは味わうことはできないと思いました」と、吉永寿子さんは話します。
雄武漁協では、ほたての放流場所を4区に分けて育てています。そして4年間、オホーツクの豊かな海で育んで、区画ごとに水揚げして安定した漁獲量を維持しています。漁は1日10隻、一隻あたり16トンまでと漁獲量も制限しています。
(1)採りすぎない―漁獲量を制限し時期や大きさも制限する
(2)みんなで分ける―漁獲する権利を組合員で分ける
(3)守り育てる―稚貝や稚魚の放流し魚場を管理・整備する
この、資源管理型の漁業を設立時の1963年から実践しているのが雄武漁協の最大の特徴です。成果は若い後継者がたくさん育っていることに現れています。安定した漁獲・収入があることで漁を営む人の顔は明るく、活気にあふれていました。
また、栄養豊富な海をつくるために1996年から植樹活動も行なっています。参加者は、昨年の産地交流会で植樹した場所を訪れました。見学した守田智恵さんは「想像と違って、まだヒョロヒョロの腰の高さにも満たない頼りない木々でしたが、近くの林は以前植樹したものだと説明を受け、いずれはそうなっていくのだと安心しました」と語ります。
ほたての貝むき作業にも挑戦・視察しました。従業員の方40人が両側に並び、貝柱とヒモの部分をわずか5秒くらいで処理する速さに圧倒されました。しかし、雄武でも人手不足が課題となっていることを知りました。
牛肉も海の幸も、たくさんの人の手で大切に守り育てられ、私たちの食卓にのぼります。参加者は命をいただくことや人々へあらためて感謝するとともに、しっかりと食べ続けていくこと、多くの人に今回の体験を伝えて食べる人を増やしていこうと決意を新たにしました。