内閣総理大臣及び自民党、公明党党首宛てに、エネルギー基本計画政府案への意見を改めて届けました
政府は2014年3月中に「エネルギー基本計画」を決定すると表明しています。基本計画の内容は、パブリックコメントや世論調査、与党内部にもある原子力発電所の再稼働を疑問視する声を無視し、原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付け、「再処理やプルサーマル等の推進」など技術的に破たんしている核燃料サイクルについても基本的に姿勢を変えていません。また、エネルギー構造では、地球温暖化問題を大きく取り上げ、再生可能エネルギーの推進をうたいながらも、「分散電源」の組み合わせにとどまっており、構造の変革をすすめるようには思えません。
東京電力福島第一原子力発電所事故への言及はありますが、未だはっきりした原因究明がされない中で、原子力を「重要なベースロード発電」と位置付けることは、人命より経済活動を優先することになります。このような、原子力発電を基本にする、エネルギー基本計画案に反対の意見を表明します。
(以下 意見全文)
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
自民党総裁 安倍晋三 殿
公明党代表 山口那津男 殿
2014年3月18日
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
会長 加藤好一
2月25日の「エネルギー基本計画」政府案についての意見
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会は、北海道から兵庫県までの32の消費生活協同組合が連合する団体です。2月25日に原子力閣僚会議で決定された新たな「エネルギー基本計画」の政府案について意見をお届けします。
今回の政府案では、「エネルギーの供給不安定性に対して、地域の特徴も加味して、さまざまなエネルギー源を組み合せて最適に活用する」とされ、原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置づけられています。「原子力依存を可能な限り低減させていく」と書かれていますが、「原子力発電所の再稼働を進め」「再処理やプルサーマル等の推進」も明記され、技術的に破たんしている核燃料サイクルについても基本的な姿勢を変えていません。地震が多発する日本において、原子力発電には技術や運営、核廃棄物の処理、避難体制に大きな不安があります。また、東京電力福島第一原子力発電所事故への言及はありますが、未だはっきりした原因究明がされない中で、「エネルギー基本計画」に原子力を「重要なベースロード発電」と位置付ければ、人命より経済活動を優先することになります。また、原子力発電の原料は海外からの輸送コストがかかり、核燃料サイクルは技術的に破たんしています。
このような東京電力福島第一原子力発電所の事故をなかったことにするような、エネルギー基本計画に対し意見を表明します。
(1)原子力発電をゼロにしたエネルギー基本計画を策定してください。
原子力発電はコストが高く不安定なエネルギー源です。原発推進のために投入されている様々な国費は、原発の運営コストの一部として計上するべきです。また、使用済み核燃料の最終処分のための費用は従来見積もられている金額では到底足りず、不十分な手当しかできません。このように原発のコストを低くみせていることにより、子孫の健康と財産を奪っています。「7世代先の子供達の為に生きよ」というアメリカ先住民の教えに習い、7世代後の子孫も安心できる核廃棄物処分のためには、原発の使用済み燃料処分にかかるコストとして十分な資産を、後世への贖罪も含めて積み上げておく必要があります。
地震国日本においては、いつ停止してしまうか分からない原発は、最も不安定で信頼できない電源です。そのバックアップのために同じ容量以上の火力発電設備を常備しておかなくてはならなかったので、全原発が停止しても日本国内のどこにも停電が起きることはありませんでした。経済的にもエネルギー安全保障のためにも、原発推進の理論は破綻しています。膨大な国家予算が投入されてきた原子力行政が止まれば、これまで潤ってきた原子力産業が大きなダメージを受けることでしょう。しかし、原子力の放棄を宣言して、全原発を廃炉することにこそ、これまでの原子力技術を活かせますし、また、業界の新陳代謝は促進され、新たな再生可能エネルギー産業が発展する素地ができることになります。廃炉に伴う発電会社の経済破綻の懸念もありますが、国が送電網を買取り国有化する意見もあるように、国がリーダーシップを持ってすすめることで原子力発電のない社会にすることが可能です。
(2)核燃料サイクルと高速増殖炉を廃止してください。
日本は第二次世界大戦の深い反省から、「戦争の放棄」を戦後の新しい国是と定め、国民の圧倒的な支持をもって日本国憲法を制定しました。プルトニウムを多量に保管することになるこの政策は、核不拡散条約や核の傘の問題にもつながり、国内はもちろん国際社会に対してもきちんとした情報開示を行なうべき危険なものです。
また、核燃サイクルについては、六ヶ所再処理工場やもんじゅのトラブルが続き、技術的にも確立していないことは明らかです。今まで支出した国費も含めてコスト計算をきちんと算出して、核燃料サイクルが採算の合わない技術であることを表明すべきです。六ヶ所再処理工場の稼働やMOX燃料加工工場の建設、複数の原子力発電所でのMOX使用を計画していますが、燃料の加工や燃焼時には多量の放射性物質を拡散することになります。これ以上、大気や水、海を汚す核関連施設を増やしてはなりません。
(3)長期的には再生可能エネルギーを電力供給の柱にしてください。
原子力発電にしろ化石燃料による火力発電にしろ原料を海外に依存しており、国際関係の中での原料購入の不安定性から抜け出せるものではありません。政府案では再生可能エネルギーは「分散電源」としていますが、国内電源の独自開発の可能性は広く、スペインなど海外では再生可能エネルギーをエネルギー供給のベースにした政策もあります。広域送電網の確立や電力の自由化などが進められていますが、これまでの独占的・閉鎖的な電力流通の仕組みから、競争的・開放的な仕組みへの転換には長期的な計画が欠かせません。そして長期的な視野に立って再生可能エネルギーをエネルギー政策の基本とするための国費を確保し、エネファームなどの先進的な省エネ製品の普及や、環境負荷の少ない高効率な発電(EX.ガスコンバインドサイクル発電)などの導入支援技術開発を長期的な視野にたってすすめてください。そのために、まずは再生可能エネルギー、省エネルギーの達成目標をたてることが必要だと考えます。
また、エネルギーは経済活動にも市民の生活にも欠かせないものです。電源構成に対する国民の意思表示が可能となる家庭用も含めた電力の自由化を進めてください。
以上