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誰もが安心して暮らせる「住まい」を

安心・安定した生活に欠かせない「住まい」。少子高齢化が進行し続ける日本では今後、単身世帯の高齢者や生活困窮者の住まい探しがさらに難しくなる可能性が高い。誰もが安心して住まいを確保できる社会を作るには、どのような課題があるのだろうか。

高齢化を考慮、新たな住宅支援政策

 国土交通省住宅局安心居住推進課の課長、石坂聡さん

家賃滞納や孤独死を恐れ、低所得者や高齢者などの入居を大家が敬遠する傾向は、これまでも問題視されてきた。2007年に制定された「住宅セーフティネット法」では、こうした住まい探しに苦労する人たちを「住宅確保要配慮者」として支援してきた。国土交通省の推計によると、65歳以上の単身世帯は25年までに約700万世帯に達する見込みだ。こうした高齢単身世帯の大幅増も考慮し、国は17年、同法の一部を改正し新たな制度を作った。

新制度の特徴は、大きく分けて3点ある。

1点目は、高齢者、低所得者、障害者などの入居を拒まない賃貸住宅を、あらかじめ登録することによって確保するという点だ。国の基本方針に基づき、まず都道府県が、目標値を含めた計画を策定する。その後、大家、貸主など賃貸人がそれぞれの地域で住宅確保要配慮者向けの住宅を登録する。都道府県は、登録された住宅情報の開示や賃貸人の指導監督も行う。

2点目は登録住宅と入居数の増加を目的とした経済的支援だ。賃貸住宅のオーナーに対しては、バリアフリーや耐震改修など、高齢者や障害者が使いやすい住宅にするための工事に必要な費用を補助する。住宅確保要配慮者に対しては、安価で入居できるように、家賃債務や保証料を補助するものだ。

3点目は、都道府県が指定する「居住支援法人」などを通じた入居支援。地方公共団体だけでなく、不動産関係団体やNPO法人などと連携して、住宅の賃貸人と要配慮者の円滑なマッチングを促進するのが狙いだ。居住支援法人に指定された法人の業務には、住宅に関する一般的な相談だけでなく、登録住宅の入居者への家賃債務保証や見守りなど生活支援も含まれている。

セーフティネット住宅を活用したまちづくり事例

普及の鍵を握る「まちづくり」

国は20年度末までに、登録住宅数17万5,000戸の達成を目指している。国交省は新制度開始以降、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県などで説明会を実施してきた。しかし普及が進んでいるとは言い難いのが現状だ。同省によると、専門住宅の登録数は、18年6月20日時点で23都道府県に882戸と伸び悩んでいる。 制度が普及しない背景には、煩雑な手続きや、実施する各自治体で予算を確保できていないなどの問題が指摘されている。

国も現状に満足しているわけではない。提出書類の簡素化などを近く実施する方針だ。同省住宅局安心居住推進課の課長、石坂聡さんは「制度の仕組みが十分に伝わっていない。大勢の関係者を一斉に集めた説明会だけでなく、国交省の担当者自らが出張して、直接自治体に働きかける必要があります」と話す。

同省の住宅政策はこれまで、公営住宅の建設などハード面の施策が中心だった。これに対して、住宅セーフティネット制度は、社会の仕組みを作るソフト面での支援。これまでの業務と質が異なるため、理解が広がりづらいという背景もあるようだ。

「公営住宅の建設などの土木工事だけでなく、暮らしやすい『まちづくり』も『建設』です。国交省と、方針を受け現場でそれを進める自治体の担当課だけでなく、福祉課や、それぞれの地域でまちづくりを担ってきたNPOなどにも積極的に働きかけ、制度の普及に努めていきます」(石坂さん)

高齢者世帯の状況

*図、グラフはいずれも石坂聡さんの提供

地域のネットワークを生かして

かつて厚生労働省に出向し介護保険制度の整備にも関わった経験を持つ石坂さんは「地域のネットワークをすでに構築している生協、特に各地域の生活クラブには期待しています。新たに作られた居住支援法人の役割を担ってほしい」と話す。

組合員の高齢化が進む生活クラブにとっても、「住まい」は重要な課題だ。生活クラブ共済連・常務理事の伊藤由理子さんは「生活クラブグループには、低所得者向けの相談・支援など実績とノウハウもあります。高齢者にとっても、若者にとっても、自立した暮らしを確立するには住まいが欠かせません」と話す。

生活クラブ東京(本部世田谷区)ではすでに居住支援法人の指定を目指す方針を決めた。今後、ほかの地域の生活クラブにも広がれば、持ち家を所有する組合員と協力した空き家や空き部屋の利用促進にもつながるだろう。

住宅不足が深刻な課題だった戦後の体験もあり、これまでの日本では、現役時代に購入した持ち家に老後も住み続けることを理想とする傾向があった。一方、欧州諸国などにはデンマークなど、子育て期や老後など人生のそれぞれのステージで住まいを何度も変える文化が根付く国もある。

日本における「これからの住まい」を考える上で、伊藤さんは「家」に対するイメージの転換が必要なのでは、と問題提起する。

「子どもが独立した後も大きな家に住み続け、管理しきれなくなったり転倒を招きやすくなるケースもあります。人生の段階に合わせて住みやすい住宅に移転できる政策や仕組みも必要です。資産を清算するのは大きな決断ですが、たとえば、将来、住宅支援を目的とした基金などを生活クラブで作れれば、組合員の暮らしを支える枠組みになるかもしれません」(伊藤さん)

撮影/高木あつ子 文/鈴木貫太郎

『生活と自治』2018年8月号の記事を転載しました。

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