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受け取り自治体ゼロ、ゲノム編集トマトの苗、小学校配布への反対運動は大きな広がりに

遺伝子操作により、本来の性質を変える「ゲノム編集食品」。2021年秋にはゲノム編集トマトを開発・販売する企業が、その苗を小学校や福祉施設に無料配布すると発表した。この動きに疑問を抱いた生活クラブ北海道では、他団体と連携して「苗を受け取らない」ことを自治体に要望。各地域の生活クラブでもこれに続く活動が始まり、市民団体を含め全国的な広がりをみせている。22年10月末時点で、「受け取る」と回答した自治体はいまだにない状況だ。

SNSで活動が全国に

長野市の教育長に要望書を手渡す、長野北支部の青木昌子さん(写真提供:信州・生活者ネットワークながの)
 
「ゲノム」とは「生物を形成、維持するのに必要な最小限の遺伝情報」のことを指す。そのゲノムの特定の遺伝子をハサミのような役割を持つ酵素で破壊し、本来の性質を変えるのが「ゲノム編集」だ。遺伝子を操作し自然界にないものを人工的に作り出すのだが、国は「遺伝子の破壊は自然界でも突然変異として頻繁に起こっている」として、ゲノム編集食品の開発や流通を規制することなく、届け出のみを求めている。

日本で最初に国へ届け出がされたのは、血圧の上昇を抑える栄養成分の「GABA」を多く含むゲノム編集トマトだ。すでにオンライン販売などを通じ市場に流通し始めており、これを開発・販売する企業では、消費者に理解を広げようと、21年9月、その苗を小学校や福祉施設に無料配布することを発表した。
ゲノム編集食品の商業流通に懸念を表明していた生活クラブ連合会(東京都新宿区)は、19年の第30回通常総会で「ゲノム編集食品を取り扱わないことを基本姿勢とする」特別決議を採択。また同連合会の「生活クラブの消費材10原則」の第2原則は、「遺伝子操作された原材料は受け入れません」とし、「生命の倫理に反し、企業による種の支配を招く“食べ物の遺伝子操作”に反対します」と定めている。

ゲノム編集トマトの苗を小学校などに配布する動きに対し、いち早く行動を起こしたのが生活クラブ北海道だ。遺伝子操作された生物を退け、地域の種苗と作物、食事を大切にするために、道内の団体、個人と「北海道食といのちの会(以下、いのちの会)」を21年5月に結成し、その事務局を担っていた。同会の事務局長で、生活クラブ北海道・理事長の山﨑(やまさき)栄子さんは「まさにこのような問題に対応するために会をつくった」と話す。

ゲノム編集トマトで特に問題と考えたのは、生態系や環境への影響だ。トマトは同じ花の中にあるめしべとおしべが受粉する自家受粉の植物だが、交雑の可能性はある。栽培されてしまえば花粉が飛散し、従来品種に影響を与える恐れがある。いのちの会は道内179の自治体の首長と教育長宛てに、「ゲノム編集トマトの苗を小学校などが受け取らない」ことを求める要望を21年12月に送付した。その結果、134自治体から回答があり、39自治体が「受け取らない」と答えた。「『受け取る』と回答した自治体が一つもなかったことは大きな成果」と山﨑さん。「その他」を選択したところの理由は「企業からの要請がない」「判断は検討中」「情報や知見が不足」などだったという。

生活クラブ北海道やいのちの会は、ゲノム編集トマトの苗の配布に対する自治体要請活動をSNSで発信した。すると「『私の住んでいるまちでもやりたい』との声が多く寄せられました。北海道だけではなく、全国に広がったのはうれしい驚きでした」と山﨑さん。生活クラブ北海道ではゲノム編集の学習会や遺伝子組み換えナタネの自生調査を行い、遺伝子操作した作物の問題について、いのちの会と分担して活動している。

デメリットの周知を

生活クラブ長野では22年9月22日に、長野市の3支部(北・中央・南)が合同で教育委員会に要望書を提出した。「ゲノム編集トマトの苗を受け取るかは各学校の判断」との回答だったため、11月には私立をふくめ市内60の小学校に「受け取るか否か」の公開質問状を送付した。

8月下旬から長野県内の各自治体への働きかけを進めているが、要望書を出す場合は事前に自治体へ意向を伝えたり、資料を渡してから正式な要望を行うなど丁寧な組み立てをした。そして岡谷市などで教育長から「受け取らない」との回答を得ている。

長野南支部・支部委員の山岸綾子さんは「ゲノム編集食品や苗に表示義務がないことが問題です。知らずに苗を受け取り、子どもが栽培することがないようにしたい」と話す。同支部では動画共有サイトを活用し、活動の概要を学習できる動画を作成して問題への理解を広げている。

生活クラブ千葉は県内54自治体に「ゲノム編集トマトの苗を受け取らない」要望と、「受け取るか否か」のアンケートを実施した。そして25自治体から回答があり、5自治体が「受け取らない」との意向を示した。
また千葉県への要望は、県内のなのはな生協と連携して取り組んだ。それぞれが要望書を作成して署名活動を行い、共同で県に申し入れた。

2851筆の署名とともに要望書を提出した理事の畔上久美(あぜがみ ひさみ)さんは「二つの生協が共に活動すれば大きな力になると思いました。ゲノム編集トマトについて県は、安全性に懸念があることなどデメリットも自治体に伝えてほしい」と話す。
 
ゲノム編集トマトの苗の配布への懸念を、千葉県の担当者に伝える生活クラブ千葉の理事の畔上久美さん(右)

小学校配布に歯止め

パネルシアターでゲノム編集食品の問題を伝える生活クラブ都市生活の理事の中里千晴さん(左)
 
生活クラブ都市生活は、組合員が小学校に要望を届ける活動に力を入れた。8月に開催したイベントで、布に絵を貼ったりはずして伝えるパネルシアターを用いてゲノム編集の説明を上演。終了後に「小学校へゲノム編集トマトの苗を受け取らない要望書を送って」と呼びかけたところ、10校へ届けられることになった。その後3支部でパネルシアターを行い、合計81校に要望書が届けられ、2校が「受け取らない」と回答した。

理事の中里千晴さんは「ゲノムチームを結成して、わかりやすく伝えることを目標に話し合ったところ、パネルシアターを制作することになった」と話す。生活クラブ都市生活では活動エリア内の20の教育委員会に要望書を送る活動も行い、2自治体から「受け取らない」と回答を得ている。
生活クラブ東京の理事長で生活クラブ連合会理事の増田和美さんは「自治体にこれから要望する地域もあるので成果を述べるには早い」としたうえで、「ゲノム編集トマトの苗の配布を知らない自治体もあり、周知することができました。『受け取る』と回答した自治体はゼロで、最初に受け取る自治体になるのはちゅうちょがあると思います。このような状況を作り出せた意義は大きく、小学校への配布の動きにしっかり歯止めをかけていきたい」と語っている。
★『生活と自治』2023年1月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年1月30日掲載】
 

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