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生きる気力や展望を取り戻すための支援 東京・神奈川・埼玉で募集中の「若者おうえん基金」


 
虐待や放置(ネグレクト)など家庭に問題を抱え、児童養護施設など「社会的養護」と呼ばれる公的な支援のもとで育った子どもたちは、多くの場合、18歳になると自立を求められる。しかし困難を抱えてしまう若者もいるため、生活クラブ連合会などは首都圏の他の協同組合や社会福祉団体と「首都圏若者サポートネットワーク(以下、首都圏若サポ)」を設立して若者を支援している。主たる活動の一つは「若者おうえん基金」だが、どう活用されるのか。社会的養護などで育った若者の現状や必要とされる支援について首都圏若サポに聞いた。

困り果てて性産業に

左から首都圏若者サポートネットワークの池本修悟さん、早川悟司さん、小田川華子さん

首都圏若サポは社会的養護のもとなどで育った若者が、社会の中で自らの力を発揮して生きていくことを応援する民間のネットワークだ。生活クラブでは連合会をはじめ生活クラブ共済連、生活クラブ東京、神奈川、埼玉が参加している。主な活動の「若者おうえん基金」は2018年から寄付を募り、東京や神奈川、埼玉で困難を抱える若者を支援する団体に助成をしている。

首都圏若サポ事務局長の池本修悟さんは「18歳で施設を出た若者のアフターケアは、活動する人が金も時間も持ち出しでやっていました。そんな活動を助成して若者を応援しようと考えたのが『若者おうえん基金』です」と語る。

法律では18歳から成人とされるが、一人で生計を立て社会で生きていくのはハードルが高い。施設を出た若者は住む場所を確保しなければならないので、寮のある会社などに就職することがある。だが、その場合何らかの理由で退職すると住まいも収入もいっぺんに失うことになる。ネットカフェで過ごすうちに金が不足してホームレスになったり、女性は性産業に行きついたり、中には犯罪に巻き込まれたりすることもあるという。

そんな若者に伴走者のように寄り添って相談にのったり、住まいや就労の手助けをするアフターケアは重要な支援である。国の社会的養護の充実を図る制度としても掲げられているが、都道府県が予算化して初めて実施される。予算のない自治体もあり、若者支援は住む地域によって格差がある。

「若者おうえん基金」は児童養護施設などを巣立った人だけではなく、同様の困難を抱えている若者を支援する活動であれば助成対象にしている。首都圏若サポ運営委員の小田川華子さんはこうした若者について次のように語る。

「過去に一時保護になったものの、児童養護施設などで保護されなかった若者にも困難を抱えている人がいます。虐待やネグレクトがある生育環境に長くいたため、施設育ちの子よりも自立準備が難しい若者もいると聞きます」

厚生労働省の資料によると20年度に一時保護されたのは2万7390件で、そのうち入所に至ったのは4348件と15.9%にとどまっている。

年齢制限はなくなるが

子どもの虐待では痛ましい事件が起こっており、子どもの生命を最優先に保護する必要が訴えられている。しかし、東京都清瀬市の児童養護施設「子供の家」の施設長で、首都圏若サポの運営委員の早川悟司さんは「保護は重要だが、子どもの心に傷を残す『両刃(もろは)の剣』だ」と言い、こう続ける。

「子どもからするとある日突然、家庭や学校、地域に別れも言えずに一時保護所に行くことになります。そして、さらに知らない土地の児童養護施設などに行き、そこで暮らすように告げられます。子どもが懸命に築いてきた友達や近所との関係を強引に引き離されるわけで、自暴自棄になるのもやむを得ないと私は思います」

「子供の家」に連れて来られた当初は「死ぬのは怖いから仕方なく生きている」や「自分の人生はもう終わった」とあきらめている子どもに対し、早川さんは「お金を含めてあなたのことを全力で応援します」と、繰り返し告げる。
「生きる気力だったり、展望を取り戻してもらうことが大事です。単なるかけ声ではなく、お金の面まで応援されていると実感できることが大切なのです」(早川さん)

「子供の家」には大学や専門学校に通うため、20歳を超えて暮らす若者が12人いる。そんな姿が子どものロールモデルになり、「やがて自分も」と将来を前向きに考える連鎖が生まれている。

「子供の家」のように現行法でも22歳まで施設での支援を延長することができる。しかし22年度の東京都での20歳を超える入所者は、22人と少ない。その理由として、施設の定員オーバーや職員の不足がいわれている。児童福祉法の改正で24年4月から施設の年齢制限が撤廃されるが、前述の理由から18歳で出なければならない子どもが多いと見込まれる。

「施設に入った時に家庭や学校、地域から引きはがされたように、若者は施設からも切り離されてしまうのです」と早川さんは指摘する。アフターケアなど若者支援が必要なゆえんだ。

社会的養護の社会化

支援を行う団体は困難を抱えがちな若者に対し、若者同士で交流できる拠点づくりや彼らへの相談・アドバイス、行政機関などとの調整、居住支援などを行う。困り果てる前に相談できる関係づくりが大切だが、自分ではどうすることもできなくなって拠点に駆け込んで来る人もおり、一人一人の問題に寄り添って解決することで生活の再スタートが切れるように支援する。

「若者おうえん基金」の伴走支援の助成は1団体の上限150万円、若者一人当たりの上限75万円とまとまった額になっている。そのため「アパート入居時の初期費用や伴走支援に必要な交通費、人件費などにも使われている」と小田川さんは話す。若者を支える助成として、支援団体にも使い勝手のよい制度といえる。

早川さんは「若者おうえん基金」への寄付とともに、「社会的養護に関心を持ってほしい」と呼びかける。社会的養護の現場は施設も人員も不足しており、「社会的養護の社会化」が課題と言う。すでに先駆的な児童養護施設は地域に開かれた活動を始めたり、一部のNPOなどによって子どもを地域が見守る活動が始まっている。

子どもが地域から引き離されることなく、市民団体や住民の応援で成長していく――。夢のような話かもしれないが、生活クラブは地域に必要なものを一つずつつくり出してきた。まずは「若者おうえん基金」を充実させるとともに、地域の社会的養護の現状を知ることから始めるのはどうだろう。
若者おうえん基金
生活クラブの仕組みから寄付ができるのは生活クラブ東京・生活クラブ神奈川・生活クラブ埼玉の組合員です。個別配送や班配送の組合員はeくらぶか注文書で2023年11月5回の注文締切まで寄付できます。デポーの組合員は各店舗にお問い合わせください。他の地域の組合員は「首都圏若者サポートネットワーク」のHPでクラウドファンディングの他、クレジットカード等でも寄付が可能です。
撮影/丸橋ユキ
文/本紙・橋本 学
★『生活と自治』2023年10月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2023年10月30日掲載】
 

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